僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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滾る黒龍

「それじゃ頑張ってね、応援してるからね龍牙君♡」

「有難う御座います」

 

ウィンクにハートを乗せて気持ちを送った後にマンダレイたちと共に去っていくピクシーボブに素直にお礼を言いながらそれを見送る。そんな様子を隣で見えないが頬を膨らませながら気に入らなそうにしている葉隠は見えない事を良い事にアッカンベーをピクシーボブに向けてするのであった。

 

「おい龍牙、お前ピクシーボブと何があったんだよ、ハッキリ言えよオイラとお前の仲じゃねぇか」

「何があったって言われてもなぁ……林間合宿でお世話になったのとお見舞いに来てくださった位で…ねぇっ葉隠さん」

「うっうんそうだよ!!ピクシーさんはその前で龍牙君を助けられなかった、そのお詫びとかで凄い龍牙君のお見舞いとか行ってたんだよ!!」

 

と葉隠は言うので一部は納得するが、事情を知っている緑谷は何となく察していた。恐らく龍牙が思い描いているピクシーボブが自身に向けている感情と実際に彼女が龍牙に向けている感情には余りにも大きな差異がある。龍牙が想定しているのは厚意であって好意ではない。言うなれば家族愛や兄妹愛に近しい物であって恋人が向けあう者には程遠い物になっている。それも龍牙の歩んできた道から考えれば致し方ないともいえる。

 

そして各自はコスチュームを纏い説明の会場へと乗り込んでいくが、其処に広がっているのはとんでもない人数でごった返されている会場であった。100人や200人では説明し切れないほどの人数が会場の中に詰めている。1000人すら超えているかもしれない、まるで雄英の入試を思い出すかのような光景に圧倒される皆、そんな中で壇上に一人が立つと皆の視線が其処へ集中していく。

 

「えっ~……仮免のアレをね、それでは説明始めて行きたいと、思います……僕は、ヒーロー公安委員会の目良です、好きな睡眠はノンレム睡眠、どうぞ宜しく……仕事が忙しくて碌に眠れてない……人手が……足りてない……!!」

 

どうやら仮免を審査する側の人もいろいろと抱えてしまっているらしい。取り合えずこの人には適切な食事と睡眠時間を与えてあげるべきなのでは、とリカバリーガールから治療などの手ほどきを受けている龍牙は思いながらどんな食事が適切なのか思わず考えてしまうのであった。

 

「え~最初に言わせていただきますとずばり、この場にいる1540名一斉に勝ち抜けの演習を行って貰います。現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステインの逮捕以降ヒーローのあり方に疑問を呈する向きも少なくありません」

 

ヒーローとは見返りを求めてはならない、自己犠牲の果てに得うる称号でなくてはならない。直接ステインと対峙した龍牙にはその言葉が鮮明に浮かび上がってくる。確かにある意味では正解かもしれないが、それを人に求めるのは酷く酷でもあるのも事実だ。行動を起こす限りギブアンドテイク、等価交換という物は必ずしも付き纏うのだから。

 

「まあ個人的には見解としましては、否定こそしませんが現代社会的に動機がどうであれ命懸けで人助けしている人に何も求めるな、というのはアレだと思います。レスキュー隊なんかだってお給料を貰っている訳ですからね、何かを成した人達には何かしらの対価を与えるべきだ、とも思います。まあ何にせよ、ヴィランの退治や救出、それらを行うヒーロー達の活動は常に切磋琢磨されている現状では発生から解決までのタイムは引くぐらいに短縮されています。故にヒーロー社会はスピード社会、それに着いてこれないのは厳しい。よって試されるはスピードという事をご理解した上で、条件達成者は先着100名を一次試験合格者としますので宜しく」

 

100名という言葉に一斉にどよめきの声が上がった。相澤の話では例年合格者半数を切ると言っていたが、今ここにいるのは1540人。その10%が154人であるのにも関わらずに合格者という括りに入れるのは僅か100名。いきなり狭き門が自分達の前に立ちはだかったのを自覚せずにはいられなかった。そしての決め方はある種の的当て。

 

受験者には三つのターゲットと六つのボールが配布される。各自はターゲットを隠れない、常に晒される場所に着けて、ボールを当てて合格者を競う合う。ボールが当たるとターゲットは点灯する仕組みとなり、これが合格の目安となる。そして三つ目のターゲットを二回、つまり二人の受験者を落とした者が先着で合格になるという仕組みである。いきなりの争奪戦に皆が様々な表情を浮かべていく中で龍牙は力強く拳を作りながら好戦的な笑みを作った。

 

「この程度の門を潜れないとヒーローにはなれないか……やってやろうじゃねぇか!!」

 

 

 

「そうだ、その意気だ龍牙。お前はそのまま全速で駆け抜ければいいんだ」

 

そんな様子を見つめる影はそんな様子を見て素直に嬉しそうな笑みを浮かべながらも殺気と闘気に満ちた空気を纏いながら唸り声を上げた。そこに居たのは正しく海の生態系の頂点に相応しい者がいた。

 

「俺はお前の前に立ちはだかる壁となる、さあ来てみろ龍牙……お前が本当にヒーローになりたいんならばな!!!」




ちょっと短めですいません。この後に気合入れ過ぎてやばい事になっちゃいまして。

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