僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
ヒーロー資格仮免試験の第一次試験、ターゲットを奪い合うような試験となっていた。開始の前に説明会場の壁と天井が展開して直接試験会場へと出られるようになった。会場はまるで雄英のUSJと似ていて、各所に環境の違うフィールドが準備されていて各々戦い易い場でやってくれという物らしい。そして全員がターゲットとボールを受け取ると受験生全員がそれぞれ動きやすい場へと移動していく。そして龍牙は皆と共に行動しつつも守りやすい場所にターゲットを設置した。所謂急所、心臓を挟むようにしている胸と背中と最後は取り合えず適当に付けた。
そしていよいよ試験が始まるのだが……近場に居た受験生ほぼ全員が雄英に狙いを定めていた。それは当然、雄英の生徒は体育祭などで個性などをさらしているので情報的な不利な上に、人によって弱点も把握されているので真っ先に潰しに行くのが妥当。周囲から一斉に迫ってくるボールの嵐だが、それは龍牙を中心に巻き起こった黒炎の竜巻が生み出した気流によって見当違いの場所へと飛んでいく。
「な、なんだ炎の竜巻!?」
「黒い炎って事はあれか、龍牙って奴の仕業か!?」
「炎で竜巻作るとかどんな出力だ!?でたらめに程がある!!!」
当然龍牙の情報も筒抜けなのも必然だろう。だが龍牙はそんな事知った事ではない、そもそもプロのヒーローになったのならば個性が晒されているなんて前提的な条件でしかない。それも含めて相澤は試験開始直後の雄英狙いも言わなかったのだろう。ならば自分達がすべきことはシンプルな答えでしかない―――林間合宿と必殺技制作合宿で培った新しい力で敵を全て捻じ伏せればいい、そんな単純な答え。
黒炎の中から姿を現した黒い龍の化身、竜巻を突き破るかのようにしながら登場した龍牙は瞳を爛々と輝かせながら獲物に狙いを定めるかのように視線を動かす。初見ともいえる他の受験生は龍牙の見た目と放たれている圧倒的な威圧感に後退ってしまった。だがそれだけではない、未だに消えない黒炎の竜巻の中から唸り声のようなが響き続けている。不気味に響き渡るそれは炎の中から瞳だけ光らせると竜巻が四散する程の爆音の咆哮を天へと向けて放ちながら姿を現した。
「な、なんだあれ!!?」
「りゅ、龍ぅぅぅ!!!!?」
「あんなの体育祭に一切出て来てなかったじゃねえか!!?というか一人の個性で出来る範囲を超えてるだろ!!?」
ドラグブラッカー、龍牙の力の源であり龍牙に従い共に歩む黒龍。それがまるで守護神のように雄英生らの頭上にて鎮座しながら攻撃を行ってきた他の受験生達に対して怒りを露わにしながらもう一度吼えると、黒炎の火球を吐き出して攻撃を開始した。
「やべぇ来たぞ!!?」
「逃げろぉ!!?」
蜘蛛の子を散らすかの如く逃げていく、だが彼らとて此処で新しい力を発揮する事も想定していた。だからこそドラグブラッカーの黒炎火球の威力がどれほどの物なのか見定めようとした―――しなければ幸せだっただろうに。黒炎は岩肌を抉りながらも一部を熔解させた上で岩を燃やし尽くしているのだ。仮にあれが掠りでもしたらどうなる事だろうか、そんな最悪な想像が聡明なヒーロー希望者の脳裏を駆け巡り怖気が身体を支配する。
「さあどうする、俺と同じなヒーロー候補生共。挑むなら覚悟をもって掛かってこい、龍の逆鱗に触れたいならご自由に、後は責任持たないから注意しろ」
常闇にお勧めされた漫画のキャラの台詞を一部引用しながら、脅しと警告を込めた言葉を送る。此処にいる相手は全員がライバルだ、そんな相手に多少なりの覚悟をして貰わないと困る。ドラグブラッカーは想像以上に龍牙の事を想っている、長年離れていた事もあるのか、先程の攻撃にも腹を立てているのが感じ取れる―――恐らく、ドラグブラッカーが本気でブチギレたら惨劇になる事は間違いなしだ。
「勢いを削ごうとしたらしいが残念だったな、こっちの方が上手だ」
「流石龍牙君……ごめんね、なんかヴィランムーブっぽい事お願いしちゃって」
そう、このような事をお願いしたのは緑谷だった。周囲は間違いなくこちらを一斉攻撃してくる、その勢いを一気に削ぎ落としてやる必要があった。その役目として白羽の矢がだったのが龍牙だった。林間合宿の肝試しの一件で分かった事だが慣れている自分達以外からすれば龍牙の個性は凄まじく恐ろしい、だがそれは短所ではなく長所にしようと話を受けて、龍牙はこのような事を行った。その結果として周囲は龍牙の恐ろしさを受けて完全に委縮してしまっている。
「良いさ、俺の見た目の事はもうしょうがないし部分出現でカバー出来るしな」
「有難う!!それじゃあみんな……龍牙君を怖がる皆を狩ろう!!」
『おう!!』
この脅しが大当たりした結果、1-Aは楽々全員が試験を突破する事が可能だった。恐るべし、龍牙のインパクト。
「うわぁっ……あれってそれなりに経験積んでるプロでないと精神的に弱くなるわね……」
「うむ。最初に強力な攻撃を見せ付け実力差をハッキリとさせる、効果的だな」
「いやはや、彼って結構おっかないねぇ」
これを見ていたプッシーキャッツの面々も龍牙を上手く使った作戦を褒めつつもその恐ろしさを改めて実感した。味方ならばこれ以上に頼もしい存在もいないが一度敵に回ればこれほどまでに恐ろしい相手もいない。慣れていない相手にはもう効果は抜群だ。
「キャアアっっ龍牙君素敵~!!!結婚して~!!」
「うぉいアンタちょっと何言ってんのよ!?龍牙君まだ高校生でしょうが!?」
「いいのいいのギャングオルカさんには許可貰ってるから!!後でボイレコ聞く!?」
「婚期が遅れた結果年下に手を出す事になるとはな……」
「こうはなりたくないねあちきは……」