僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
神野区のヴィラン連合掃討作戦においてエンデヴァーやベストジーニストと並び指名を受けたヒーロー、ヒーローランキングは堂々の10位。そして彼の隣に立つ紫色の装甲が目立つコスチュームを纏っているのはギャングオルカの最強のサイドキックであり、個の実力であればトップクラスと称される上に外道且つ残虐な行いを平然と行う最悪のヒーローという異名さえ持つ王蛇。この二人とギャングオルカ事務所のメンバー達がヴィラン役としてこの場に現れた。魔神と魔王がタッグを組んで人間を皆殺しにする為に街に降りてきたような感想を抱いてしまった龍牙は恐らく悪くはない。
「……不味い、爆豪!!兎に角ヴィランを牽制してくれ!!あの二人のタッグはマジでやばいぞ!!」
『黙れヴィラン野郎!!ンなもん言われなくても分かるわくそが!!』
前以て八百万によって創造された通信機を装着していた龍牙は爆豪に向けて注意を促した。爆豪の戦闘センスと実力は身を持って体験しているが相手が余りにも悪すぎる。ギャングオルカだけならば自分だけでも食い止める事は出来た、加えて轟や爆豪、他の受験生の協力があれば避難をする時間稼ぎは完ぺきだっただろうがそこに王蛇が加わるとなると事態が大きく変わってきてしまう。それを聞いた爆豪は聞くまでもなく如何するべきかと考えながらも新技の
「焦凍聞こえるか、加勢を頼む!!だが絶対に接近するな、師匠と王蛇、接近された時点で終わりだと思って対処してくれ!!」
『分かった、中遠距離で行く。お前は師匠を担当しろよ、お前が一番適任だ』
「分かってる……問題は王蛇さんだ……!!」
龍牙はドラグブラッカーに飛び乗って現場へと急行していく。そう、ギャングオルカだけならば問題はそこまで大きくはならなかっただろう。負けの経験とはギャングオルカとの戦闘経験は豊富で戦い方や必殺技に戦闘スタイルなども知り尽くしているのでサポートの面でも貢献できる。だがあの二人のタッグは全く予想がつかない、兎に角中遠距離を徹底して時間を稼ぐことに徹するしかない。
「さあヒーロー……如何する、守るか戦うか。守るか戦うか、逃げるかどれを選択する……!?」
「―――決まってるでしょ師匠、全てを同時に並列して行えばいいだけの話っだぁぁぁぁああああ!!!!」
ジリジリと避難所へと向かっていくギャングオルカ、そこへ空から猛追するかのように向かう龍牙。ドラグブラッカーの尻尾で打ち付けられるようにして勢いを得た上で黒炎で押し出される事で圧倒的な速度を得ながら右手には龍頭を構える、それを見たギャングオルカは笑いながら自らの腕を構えながら龍牙の攻撃を真正面から受けた。
「矢張りお前ならばそう来ると思ったぞ、リュウガァァアアアア!!!!」
同時に頭部から超音波が放出され龍牙の勢いを殺していく、黒炎を削るかのような凄まじい威力。まだ距離がある筈なのに途轍もない力で黒炎が剥がれていく、だがそれも想定済み。あくまでも炎は身を守る為の盾としてしか考えていない、だがそこへ赤い炎が飛び込み龍牙を更に大きく燃え上がらせていく。
「焦凍!!」
「ギャングオルカはお前じゃねえと抑えきれねえ!!行けっ!!」
「ああっ行くぜぇ!!!」
到着した焦凍の援護、それを受けながら遂に攻撃範囲へと到達した龍牙の一撃がギャングオルカの拳と激突する。
「
赤と黒、二つの炎が混ざり合った一撃。龍牙と焦凍の力が一つになっている一撃を真正面から受けるギャングオルカ。剛腕同士のぶつかり合い故か、周囲の瓦礫を吹き飛ばすかのような暴風が巻き起こるが肝心の男は全く微動だにせずにそれを受け止めると炎をかき消すかのように龍牙の拳を強く握りこんだ。
「ぐっ!!!」
「悪くはない……即席のコンビネーション必殺技として及第点だ。だが―――青いぞぉぉ!!!」
炎を完全にかき消したオルカは剛腕に物を言わせて龍牙を何度も何度も地面に叩きつけながら、そのまま地面を抉る様に振り回していく。そしてそれを空へとぶん投げるとそこへ一つの影が迫っていた。
「うおらぁぁぁああああ!!!!」
「があああああっっ!!!」
その影は高々と跳躍した王蛇であった。王蛇は全身を回転させたままドロップキックを放ち浮き上がった龍牙の身体を強引に下へと叩き落とした、そこではオルカが待機しており全力の超音波を龍牙目掛けて叩きつけたのだ。全身を揺るがす音波が軽々と龍牙を吹き飛ばしながら瓦礫の中へと突っ込ませていく。瓦礫の中へと突っ込んだ龍牙は即座に身体を引き起こす。超音波など何度も食らってきた龍牙からすれば十分過ぎる耐性が付いている、だがそれでもダメージはかなり蓄積している。
「龍牙大丈夫か!?」
「大丈夫だ、焦凍……この位で倒れたり、しねぇよ……!!」
そこへ氷塊を生み出し相手へとぶつける焦凍がフォローに入る。まだまだ動ける龍牙のタフネスに驚きつつも、ギャングオルカと王蛇の力に驚きしか沸いてこなかった。龍牙の一撃をあんなにも簡単に捻じ伏せた上であのコンビネーション、とんでもない相手だ。しかもオルカは超音波で迫りくる氷壁を砕き続けている、どういう超音波だと言いたくなる。
「悪くねぇなあの餓鬼……おいオルカ、さっきの一撃が及第点っていうのは嘘だろ」
「……分かるか」
「てめぇの腕、震えてるじゃねぇか。芯まで来てるみてぇだな」
氷を砕きながらもまるで居酒屋で酒でも飲みながら話す友のようにいるオルカと王蛇、二人にとってこの状況など戦闘の内にも入らないのかもしれない。だが王蛇は龍牙の一撃を評価していた。あれは普通のヴィランならば確実に戦闘不能になる一撃、それを受け止められるのはオルカだからこそだと言える。
「良いぜ、楽しくなってきたじゃねぇか……さあ祭りを楽しもうじゃねぇか……!!!」
王蛇の腕から粘度のある黄色の液体が滴り始めた、それを振るうと液体は氷を生み出し続けている轟へと向かっていく。それを見た龍牙は彼を抱えた飛び上がる。
「龍牙何をすんだ!?あの位氷でカバー出来る!!」
「駄目だ回避しろ!!王蛇のあれは普通じゃない、とんでもない超猛毒だ!!!」
飛び退いた位置に的確に毒が飛来し付着した。その途端にそこは音を立てながら溶解し始めた、30秒もしないうちに瓦礫がドロドロに溶けてしまった。それを見て焦凍は龍牙の判断がいかに正しかったかを理解した。あんな物氷では防ぎきれない、確実に溶かして自分も食らっていただろう。
「俺の毒は特別性だ……利くぜ、浴びないように注意しな……!!」
『コブラヒーロー・王蛇。個性:キングコブラ!!キングコブラの能力を使う事が出来るぞ、だが本人が滅茶苦茶に鍛えたせいか毒がとんでもない事になってるぞ!!神経出血溶解などなど色んな毒を出せるようになってるぞ!!というか、それを生身の相手に使うなよ!!?』
皮肉にも龍牙が一次試験において他の受験生に行った行為をそのまま返されるような形で王蛇の恐ろしさをまじまじと見せつけられる。こんなタッグ相手にどのように時間稼ぎを行うのか、それが焦点になる。幸いなことに周囲の取り巻きは即座に狙いを切り替えた爆豪がそちらを狙い的確に気絶させる事で問題は無いだろうが……大物二人を如何するのかというのがまだまだ残っている。
「「さあ俺達を攻略して見せろヒーロー……!!」」
えっキングコブラはこんな毒出せないって?
いや、コブラはコブラでも、王蛇の場合はベノスネーカーっていうコブラだから。