僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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2人の英雄編―――龍と黒龍

「それで龍牙君のアイテムって結局のところ、どんな風になるんですか?」

 

龍牙の成分を抽出し、それを詳しく解析している所でその日は終了し、その後は飛行機での移動時間などの関係もあったのでそのままホテルへと送って貰った二人。彼女は翌日再び訪れた戦兎に気になった事を聞いてみる事にした。そもそも龍牙がこの島にやって来た目的であるそれが一番重要なのだから、聞くのは当然とも言えるのだが……そう言われて戦兎はよくぞ聞いてくれました!!と言わんばかりに表情を煌びやかにした。

 

「フッフッフッ……実は昨日聞いてくれるかと思ってて待ってたのさ……昨日、俺の個性については詳しく話したよな」

「ええ、抽出した個性は一時的に疲弊した状態になって出力が極端に落ちるってことまでは」

 

戦兎の個性である抽出、それはあらゆる物から成分を抽出して採取する事が出来る。生物である有機物から無機物まで、それは人間の個性なども含まれている。が、個性を対象にして抽出行い場合は対象となった個性は酷使した状態と同じになってしまう。現役時代にはこの特性を利用してヴィランの個性を抽出する事で確保を容易くしたこともしばしば……。

 

「まあ確り休めば一日ぐらいで元に戻れるんだけどな。だから龍牙君も倦怠感とかは無いだろ?」

「それはないですね、まあ確かに抽出された後はだるい感じがしましたけど全然動けましたけどね」

「流石あのオルカの弟子……」

 

確かに身体に強い倦怠感こそあったが、そこはタフネスお化けの龍牙。活動するには全く問題はなかった、それでも普段よりも黒炎の温度が下がっていたり、炎の勢いが凄まじく低下しているなどの事は把握していた。しかし戦兎の言う通り、ホテルで確り休んだからかもう全快状態となっている。そんな戦兎は懐から一本のボトルを取り出しながらそれを二人に見せ付ける。それは真っ黒な龍がボトルに刻まれている。

 

「こいつが昨日抽出した龍牙君の個性成分、黒いし龍だし……ブラックドラゴンボトル、長いからBRボトルって呼ぼうか。このボトルに合わせる形でアイテムを調整して龍牙君のサポートに当てるつもりだ」

「そのボトルに龍牙君の成分が……」

「そういう事、んでその為に調整するのがこいつって訳」

 

こいつと呼びながら取り出したのは四角い箱の用のように見える物、それに首を傾げているとそれから折りたたまれていた首と尾が伸びて身体を伸ばすかのように声を上げる。独特な音をまき散らしながら起動したそれは龍牙の周囲を飛び回りながらもこちらを観察しているのか、見つめてくる。

 

「わぁっなんか可愛い!!」

 

四角い胴体にそこから伸びた首にぴょこぴょこと動く短い脚、そして音を出し続けている姿に葉隠は可愛いと思ったのか興味津々と言いたげにしつつも目を輝かせてそれを見つめる。ドラゴンも透明な葉隠に興味を示しているのか首を傾げるようにしながら見つめている。

 

「この龍を調整するってどういう事なんですか……?」

「こいつはボトルを入れるように設計してあってな、入れるボトルによって様々な能力を発動出来る。そして特定のボトルを入れるとエネルギーフィールドを展開してそのボトルの能力をフルに生かす、この場合は龍牙君のボトルを使うと個性と同調して身体を保護してくれるんだ」

 

そう語る戦兎の言葉と裏腹にドラゴンは龍牙の頭の上に収まると暢気に欠伸をすると、そのまま寝息を立てて寝始めてしまった。本当にそんな事が出来るのかと疑問が出てきそうになるのだが、あの戦兎が言うのだからきっとそうなのだろう……多分、きっと、恐らく、メイビー……。

 

「あの桐生博士……何か、ドラゴン君寝始めちゃいましたけど……」

「ああそれ、龍牙君を独自にスキャンしてるだけだから気にしなくていいよ。まあ寝る必要はないんだろうけどさ……自立稼働型のAI積んだけど、なんか変な思考パターン構築してんのかな……」

「これからこいつが俺の相棒になるかもしれないのか……なんだろう、ちゃんとした関係築けるか不安になってきましたよ俺」

 

それを聞いて戦兎は呆気にとられた表情をしてしまった。今彼はドラゴンを明確に独立した一つの存在、一人の人間として扱おうとしている。今まで様々な物を作ってきた戦兎としては珍しいケースだった、AIを搭載したアイテムやコスチュームを作った事もあったが、あくまでアイテムと扱う者ばかりだったのに彼はドラゴンを明確に対等に扱おうとしている。矢張り面白い、そう感じさせる少年だと笑顔を作る。

 

「今はスキャン中なだけだからその内まともなコミュニケーションも取れるさ。今はそっとしてやってくれ、さてと……それじゃあ二人とも、折角I・アイランドに来たんだから色々と回ってみたいんじゃないかな。俺が案内してあげようじゃないか」

「ええええっ良いんですか!?でも桐生博士にそんな事をして貰うなんて悪いですよ!?」

「戦兎で良いって。俺からしたら二人は俺の恩師の紹介で来た相手だから逆に無碍にしたら怒られるってもんさ、それに子供は大人に甘えるもんだぜ」

 

何処か強引ながらも戦兎の好意に甘える事にした二人は研究所から出てこのI・アイランドを満喫する事にするのであった。折角来る事が出来たのだから思いっきり満喫してみたいという思いが少なからずあったためか、葉隠も龍牙も何処かハイテンションにそれらの申し出を受ける事にした。

 

「ほい龍牙、この帽子でも被っときな。それならドラゴンも目立てないだろ」

「有難う御座います」

 

そんな風に帽子を受け取った後に早速このI・アイランドを満喫する為の散策が開始されるのであった。I・アイランドでは日本では見られない有名なヒーローも多く集まっており凄まじい熱気に包まれている。

 

「見て見て龍牙君!!怪獣ヒーローのゴジロだぁ!!凄い凄いよ!!!」

「すっげぇっ迫力ぅ……」

「あれで日本人なんだから個性って本当にすげぇよな」

 

と本来はアメリカで活躍している筈のプロヒーローなども多くいるI・アイランド、加えて多くのパビリオンなども点在しているのでテンションが振り切れそうな勢いの葉隠と龍牙、そんな二人を見て微笑ましく笑っている戦兎。

 

「ねえねえ博士あれって何ですかぁ!!?」

「ああ、あれは個性をフル活用したアトラクションだな。遊園地のジェットコースターの百倍はスリリングだぞ」

「乗りたい乗りたい!!ねえ龍牙君行こうよぉ!!」

「行こう行こうって待って待って引っ張らないで!?」

 

と、珍しく葉隠が龍牙を振りますような光景がみられる中、戦兎は心の中で葉隠の恋が実るようにと秘かな応援を送るのであった。二人が満喫する姿を見ながら次の見どころへと案内している時の事だった、機を見て紹介しようと思っていた人物と遭遇する事になった。

 

「あれっメリッサじゃん、何やってんのよこんなところで」

「戦兎さんこそ、如何したんですか?」

「わぁぁぁぁっっサイエンスヒーロー・ビルドの物理学者、桐生 戦兎博士だぁぁぁ!!?」

「おいおいそこは、天っ才物理学者って呼んでくれよ」

「って緑谷、お前なんで此処に……?」

「りゅっ龍牙君に葉隠さん!!?」




次回から映画の本筋と絡んでいきます。にしても本当にもっと早く映画を見ていれば……メリッサを絡ませられたのに……くそ、なんで早く見なかったんだ……こんな魅力的なキャラを……。

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