僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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実力を思い知る黒龍

結局頭を撫でられ続ける龍牙、如何やら気に入られたようである。相澤からも目線で、下手に騒がれると面倒だからもうそのままでいろ、というお達しが来たので龍牙はそのまま波動に撫でられるままになる事になった。そして先程前途多難という良く分からない掴みをやろうとした先輩の通形 ミリオが改めて話をする。

 

「まあなんだよね、君達からしてもいきなりやってきた3年生の先輩に困るよね。インターンは必修なわけでもないから猶更分からないよね。一年から仮免取得だよね……今年の後輩君たちは中々やるよね……」

 

ミリオはA組の皆を見渡した、1年でありながら仮免を取得するのは簡単な事ではない。此処にいる全員の実力は色んな意味で保障されているに等しい。そしてA組の一員に同化するかの如く龍牙の頭を未だに撫で続けている同輩に笑みがこぼれる。

 

「う~ん……それじゃあイレイザーヘッドから合理的にしてくれって言われたりもしてるし、全員俺と戦って見ようか!!」

『えっ……えっ~!!?』

 

「なんか戦う事になっちゃったね~」

「そうみたいですね、後波動先輩は何時まで俺の頭を撫でるんですか?」

「あれ駄目?」

「いやだめって訳じゃないですけど……」

「(龍牙君もしかして……惹かれてるの!?)」

 

そんな訳で通形 ミリオ VS 1-Aという超変則マッチが行われる事となった。未だ謹慎中である爆豪を除いたとしても1対20という超人数差による戦いを強いられる事になるのだが肝心のミリオは全く問題ないと言いたげに戦いに乗り気になっている。体育館γへといざ足を踏み入れて、戦いの前になっても本気でこの人数差で戦うのかと皆が思うがミリオは平然としながらストレッチを行う。

 

「ミリオ、やめた方がいいと思う。俺達は形式的にこういう具合でとても有意義です、と語るだけでも一年生としては充分で有意義なんだ。全員が皆上昇志向に満ち満ちている訳じゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」

「あっ知ってるよ龍牙君聞いて、昔挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた!?」

「成程、まあいるでしょうねぇ雄英の指導って結構厳しいですし」

「うんうんそうなったら通形大変だよ~?」

「というか波動さん、何時まで彼を撫でる気なんだ……」

 

此処で漸く解放された龍牙、本人的には全く辛くもなかったが波動的にはなんだか不服そうだったがそこは勘弁して貰って合流を果たす。が合流してみると自分の前へと葉隠が立つと何処か波動を威嚇するように、龍牙の盾になるような形で立ち塞がった。

 

「むぅぅぅぅぅっっ!!」

「葉隠さん?」

「プイッ!!」

「えっ?」

 

何故か気分を害しているのかそっぽを向かれてしまった、良く分からないが龍牙は心が痛くなった。

 

「あの、葉隠さん……すいませんでした」

「龍牙君は悪くない、悪くはないけどプイッ!!」

「……如何したら良いんだろ」

 

もう本当に如何したら良いのか分からず龍牙は気落ちしながら取り合えず構えを取る事にした。このあともう一度謝ろうとは思うのだが本当に如何して怒らせてしまったのか理解出来ず、困惑する。そんな龍牙を見て葉隠は葉隠で何をやっているんだと彼女は落ち込んでしまうのであった。それではと切島が音頭を取りながら全員が構えを取った。

 

「それじゃあ通形先輩!!胸を借りるつもりで行かせて貰いますんで、ご指導お願いしまぁす!!!」

「おいでよ、一年坊達!!」

 

と真っ先に先制するように緑谷が飛び出していく。一気に加速して蹴りの構えを取る、が直後に目を疑う光景が広がった。なんと……ミリオの服がずり落ちていったのである。思わず女子の一部から叫び声が木霊する、葉隠も例外ではないのか叫びながら龍牙の後ろに隠れた。

 

「ああごめん調整が難しくてね……!!」

「隙、ありっ!!!」

 

大慌てでジャージのズボンを履き直しているミリオ、そこを突くように緑谷の蹴りがミリオの顔面へ炸裂―――しなかった。足がミリオの顔をすり抜けるかのようにしながらヒットする事が無かった。

 

「すり抜けた!?」

「そういう個性って事か……!!」

 

即座にそこへ遠距離攻撃を得意とする個性持ちが攻撃を行う、背後からの攻撃にもかかわらずミリオはその悉くをすり抜けながら攻撃を無力化した。だがそこにミリオの姿はない、皆が探そうとする中で再び女性陣の声が響いた。振り向けばまた服がずり落ちている、全裸の姿のミリオがおり、即座に遠距離攻撃可能な皆へと攻撃を開始。

 

「ちぃっ!!」

 

迫ってきたミリオに対して氷を放って食い止めようとするのだが、ミリオは真正面から氷へと飛び込んでいった。そして氷全てをすり抜けていき、焦凍の目の前へと躍り出ると鍛え上げられた剛腕の一撃を焦凍の腹部へと叩き込んだ。その一撃は他の皆と同じく焦凍に膝を付かせ動きを完全に封じてしまった。僅かな一瞬で後衛組が壊滅的な状態へと追い込んだミリオは高々と叫びながらズボンを履き直した。

 

「POWERRR!!!」

 

ズボンを履いた辺り余裕と冷静さが平然と同居している、正しく三強の一人に相応しい人材なのだろう。そしてそんな人物が使用する個性、全てをすり抜けた上にまるでワープを行っているかのような神出鬼没を可能にする個性の真実に辿り着く事が出来ない。

 

「攻撃はすり抜けて無力化する上にワープまで出来るってどういう個性だよ!?」

「万能すぎるぜ……!!」

「よせやい!!」

 

そんな風に言われても少しだけ笑いながらもミリオは型を作り続けている、そんな中で黒炎が火柱を作りながら黒い龍がその姿を現す。剣を携えながら構えを取る龍は唸り声を上げながらミリオを見据える。そんな龍に対してもミリオは飄々としながらも構え続けると―――再び姿が消える。

 

「また消えた、今度はどっから来る!?」

「分からないなら、自分の分かる範囲で考えればいいんだ……今度は―――そこだぁっ!!」

 

今までミリオの神出鬼没の攻撃は全て奇襲じみている、それを行うには相手の背後を取るのが一番効率的だと緑谷は背後へと回し蹴りを放つ。すると見事に的中し背後からミリオが出現したのである。緑谷は直ぐにすり抜けられる前に攻撃を当てる!と行きこんでいたのだが、ミリオは即座に攻撃を通り抜けながら腕をすり抜けさせながら緑谷の目に目掛けて腕を伸ばした。

 

「必殺ブラインドタッチ目潰し!!」

 

本能として目を閉じてしまった緑谷へ無慈悲な腹パンが炸裂し、緑谷は倒れこむ。ミリオも多くの相手がカウンター狙いで来ることは最初から想定済みだった、故にそれを逆に狩る訓練などを重ねて来ていた。その後も次々と攻撃をすり抜けながら的確に攻撃を行ってくるミリオ。そして―――

 

「そして龍牙君、君は特に警戒しているから―――念入りにやらせてもらうよ!!」

 

龍牙の足元からぬるっと出現しながら足を払うとそのまま顎へとアッパーを決めて打ち上げ、腹部へと回し蹴りを食わらせると直後に顎を挟み込むかのような両手でパンチを決めた。

 

「っ……がぁっ……!?」

 

脳を激しく揺さぶられた龍牙は激しい痛みと共に意識が揺れてしまい、自慢のスタミナがあったのにも拘らずあっさりと意識を手放す事となってしまった。

 

「POWER!!」

 

「ミリオ、本当に手加減を覚えた方が良い」

「龍牙君に対して本当に念入りだったねぇ~!!あっ頭撫でてあげよっと!!」

「いやぁ彼の場合はあれぐらいやらないと意識を刈り取れないって前々からサーに言われてさ!」


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