僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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竜の高みを見る黒龍

「こうしてみると私の個性とは違う部分もそれなりにあるわね」

「うん、龍って部分は似てるけど違うね」

 

リューキュウ事務所、地下3階に位置する特殊訓練場。個性の使用を前提としている為か耐久性に優れた素材で建てられた広々とした空間にてリューキュウとねじれちゃん、そしてリュウガの姿があった。インターンで行うのはパトロールやヴィラン退治などの仕事だけではなく、力を伸ばす為の訓練や個性の応用の経験も積む事も含まれる。その為に此処へとやってきていた時にリューキュウはリュウガの個性を改めて見つめた。

 

黒い炎で身体を包みこむ、そしてその炎が変化するかのように鎧を構成してリュウガとしての姿を取る龍牙の個性。ドラグブラッカーの事を含めるとその力を身に宿す、個性として見ても酷く興味深い個性。力の源である黒龍は自律的に行動する上で龍牙の力となる。姿を変えるという意味では近いが、厳密には酷く異なっている。

 

「凄いよね、かっこいいよね、素敵だよね!!」

「そうねねじれ。とても魅力的でカッコよくて素敵な個性ね」

「有難う御座います」

 

部分出現を応用して頭部のみの個性を解除し、素顔を見せながら照れるように頬を欠いている龍牙。年相応の姿を見せながらもドラグブラッカーを撫でる。それに対しては特にアクションこそ起こしていないが、悪くはないような反応を示している黒龍にねじれは接近していき迷う事なく撫で始める。黒光りする鱗が幾重にも重なっている身体は硬いが何処か暖かくもある不思議な感触を返す。

 

「わぁっこの子も撫で心地いいなぁ不思議だね、硬いのに撫で心地いいなんてね!!」

『……?』

 

流石のドラグブラッカーも意味が分からないのか首を傾げるかのようにねじれを見つめている。構わずに撫で続けてくる彼女に悪い気こそ起きないが、何かムズムズするのか身体をねじるようにしながら龍牙の影へと飛び込んで姿を消してしまう。照れている……のかもしれない。

 

「あれ消えちゃったね」

「機嫌が悪いって訳じゃないみたいですね……ねじれ先輩に慣れてないからですかね」

「わぁっ人見知りだね!」

「誰でもいきなり撫でられたら驚くと思うわねじれ」

 

さて好い加減に本題に移っていく事にしようとリューキュウは咳払いを一つする。

 

「それじゃあ今回此処に連れてきた理由を話すわ。リュウガ、貴方には仮免試験で行った技の向上を目指して貰うわ」

「―――っ!」

 

それを聞いて龍牙は少しだけ表情を硬くした。仮免試験のラスト、皆に時間を稼いでもらいながら至り放った最後の技。あれこそ林間合宿と雄英での合宿訓練で得た自分の新しい必殺技とも言える物、オールマイトからヒントを貰って生み出したドラグブラッカーと更なるシンクロを試みた結果として出来た技があれだった。

 

「ギャンクオルカから話は聞いているわ、とんでもない破壊力だったって。黒い太陽になって相手に突撃する技だって」

「凄~い!!ねえねえ私もみたいよそれ~!!」

「いやあれは正確にはそう技では無くて……」

 

自分の最高火力である黒炎脚(常闇命名)の強化版のような認識をされているが違う。正確にはドラグブラッカーと完全に一体化する事でドラグブラッカーと自らの潜在能力を限界まで引き出したうえで強化を行うという物……なのだが、現状は制御しきれていないのか身体から力が炎となって溢れ出してしまっている。その解決策としてその炎を攻撃に使用したのが仮免試験で放った最後の一撃という事になる。

 

「それじゃあすべきなのは完璧な力の制御かしら」

「それだったら私と戦って経験を稼ぐ?両方同時に攻めて来ても大丈夫だよ!!」

 

と自信満々に胸を張りながらそういうねじれちゃんだが、彼女もそれだけ胸を張れるだけの経験と実力がある。伊達にビック3の一人に数えられてはいない。彼女とドラグブラッカーと戦うのもいい経験になると龍牙も思うが、リューキュウは許可を出さなかった。

 

「えっ~如何して?」

「何故なら―――リュウガとは私が戦うからよ」

「リュ、リューキュウさんとですか!!?」

「ええっいい機会だから揉んであげるわよ」

 

涼やかな笑いを浮かべているがその瞳は既に闘志で溢れかえっていた。既に戦う事は決定済み、拒否権なんて存在していない。いや拒否する理由なんてないのだ、あのリューキュウが自分と戦ってくれるなんてこれほどまでに光栄な機会なんてない。無意識に口角が上がっていた、武者震いが起きる程に高揚している。そんな龍牙の様子を見て男の子ねぇ……と思いながらリューキュウは―――個性を発動した。

 

「―――今の内に見えておくのがきっとフェア、そうでしょ」

 

瞬時に姿が変わっていた。人としての特性を一部分だけ残しつつもその他は龍が支配する姿、大きく広げられた翼と圧倒的な巨躯とそれらに相応しい鋭利且つ強靭な牙と爪。鋭くこちらを見据える瞳、龍牙は東洋の龍、しかし目の前にあるのは西洋の龍と言うべきだろう。猛々しくも美しい姿に龍が一瞬見惚れてしまった、龍としてなのかそれは分からないがそれに初めて、根津とオルカ以外に憧れを抱いた。これがドラグーンヒーロー・リューキュウ。

 

「リュウガ君驚いてるね~、凄いよね、最高だよね、素敵だよね!!」

「―――凄い……綺麗で輝いてる……」

「ウフッ嬉しい事言ってくれて有難うね」

 

ウィンクをしながら元の姿へと戻っていくリューキュウ、龍牙の瞳は一瞬で憧れへと染まっていた。あんなに輝けるものなのかと驚嘆し、賛美する。龍牙にとって初めて見た他のドラゴンは彼にとってあまりに鮮烈な体験だった。胸が高鳴り気分が激しく高揚していく、自分もあのように成れるだろうかという思いとあの姿をもう一度見たいという強い欲求に駆られてしまう。

 

「今、さっきの姿を見せたのは私にそれを使わせろって事よリュウガ。私は最初から全力では行かないわ」

「つまり―――」

「そうよ。もう一度さっきの姿を見たいなら私に本気を出させなさいって事よ」

「わぁっ強気だねリューキュウ」

 

龍牙を軽んじる訳ではない、寧ろ龍牙には自分も本気を出して臨むべき相手だと思う。だがこれはあくまで龍牙の力の向上を目的とした訓練の戦い。目的を与える必要がある、その為の目的は自分に本気を出させるという事。その為なら彼は全力の更なる向こう側へと挑戦する事が出来るだろう。それに―――想像以上に自分が個性を発動させた姿は彼にとって刺激的だったようだ。瞳が語っている、あの姿を必ず見たいと言っている。

 

「(なんだかちょっと嬉しくなっちゃうじゃないの……んもう女の心の掴み方が分かってるのに恋愛が分からないなんて……魔性ね、彼。)さてリュウガ、何時でもいいわよ」

「分かりました……ふぅぅぅっ……ドラグブラッカー、行くぞぉ!!」

『グオオオォォォォッッッ!!!』




筆の乗りというか指の滑りが止まらずに執筆してしまった……。
なんかリューキュウさん書いてて楽しいんだよなぁ……なんでだろう、余裕があってクールな姐さん系お姉さんだからか!?

大好物です。

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