僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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お願いを聞いたりする黒龍

「よぉっドラゴン・ファング!!」

「なんだそれ、俺の名前を英語読みしただけじゃん」

 

インターン活動を一度終えて戻ってきた龍牙、時間の関係で戻ってこれたのは3時間目が終わった所だった。教室へと入ると早速歓迎の声と共に何やら不思議な響きの呼ばれ方をするのであった。取り合えず荷物を置きながら席について何でそんな呼び方をするのか上鳴に尋ねてみる。友人は知らないのかよと眉を顰めながら、スマホを弄ってとあるニュースページの一面を見せてくれた。

 

「何々……えっと『全国指名の凶悪ヴィラン・ショッカー確保。龍牙(ドラゴン・ファング)は定めた狙いを外さない!!』。はぁっ……」

「何だよ反応薄いなお前!?」

 

ニュースになる程に報道され、正当な評価を貰えている事は嬉しいのだが如何にも微妙な声しか出ない。自分のリュウガというのは確かに龍の牙と書くがそう読むのではない、これだったら素直にリュウガと書かれた方が遥かに嬉しい。例えるならば、名前が心という人が勝手にハートという渾名を付けられて呼ばれるのを嫌っているような物。何処か揶揄われているように感じるのは自分だけだろうかと何処か、喜べない。そしてもう一点。

 

「やっぱり写真映り悪いなぁ俺……頭だけでも解除した方が良いのかな……」

「まあお前のこの写真、傍から見たら他のヴィランがショッカーを捻じ伏せてるようにも見えるもんな……」

「これも個性の差って奴だぜ、気にすんな龍牙」

 

峰田にそう言われるが愛されるヒーローになる事を目標にしている龍牙としてはこういった面から変えていくべきなのではと思っている。が、頭部の部分個性解除を行うと全力を出せなくなって支障をきたす。黒炎脚などが使用出来なくなり火力面と防御面に問題を抱えてしまう事になるので、解除するという案は即座に没になる。

 

「でもよ、龍牙かなり人気あるんだぜ。見た目に頼らずに実力で結果を出すいぶし銀ヒーローって言われたりしてるぜ」

「そうそう。確かにヒーローって見た目も重視するところあるけどよ、逆に見た目だけなヒーローも多いからそういうのが嫌いな人もいるから実力が確かなヒーローも人気あるんだぜ!!」

「それは師匠やエンデヴァーを見てれば分かるさ」

 

龍牙も何度もそういう系のヒーローを目指すべきなのではと思う事がある、だが出来る事ならばこの見た目を超えて愛されるヒーローになってこそ、自分が成りたいと思えるヒーローになるのではという思いがあるのも事実なのである。

 

「でもさ、折角助けたのに悲鳴上げて泣き出すのは無いだろ。地味に傷つくんだよ」

『そりゃ慣れてない奴からしたらキツいからな』

「異口同音やめろ」

 

上鳴と峰田(二人)から言われる言葉は理解しているが、目の前で攻撃から庇って守っているのに加えて一緒にねじれちゃんまでいたのに泣き出された。子供ならまだ分かる、が仕事帰りのOLにそうされたのである。本当に自分の見た目の問題は深刻だと改めて思い知った。余談だが、その後にリューキュウに抱きしめられて慰められたりしている。

 

「でもまあ麗日と梅雨ちゃんと一緒で相当人気が出てるのも確かだぜ。元気出せって!!」

「そう思っておく」

「あっ龍牙、リューキュウのサイン貰えたか!?」

「要望通りに貰ってある」

「―――オイラとお前はマジでズッ友だぜ」

 

清々しい笑みを浮かべながらもサイン色紙を抱きしめつつ、リューキュウの残り香が無いか鼻を鳴らす峰田に梅雨ちゃんの危ないわよというツッコミが飛んでくるのであった。矢張り峰田はリューキュウのファン……というよりもリューキュウは肩だしな上にスリットの入ったコスチュームを纏っているので美女×エロコスというのが峰田のセンサーに引っかかったのだろう。

 

「あっ龍牙君!!」

「葉隠さん、やっほ」

 

教室に戻ってきた葉隠は龍牙を目にした途端に鈴のような声を喜びで震わせながら彼の名前を呼んだ。それに対して龍牙は手を上げながら答えてくれる、それだけで堪らなく嬉しくなってしまった。彼が居ない間、彼女は目に見えて沈んでいた。純粋に会えないというのもあるが、恋のライバルであるピクシーボブも時間を見つけては的確にアピールをしているというのが危機感を強める要因にもなっていた。

 

自分は龍牙のクラスメイトであり、仲もかなり良いと彼女は思っている。試験ではタッグだったしお勉強会デートという物もしているし他の女子に比べてダントツで仲良しだと確信しているが……それだけではないかという不安もあった。

 

「龍牙君、頼まれてたノート取っといたよ」

「有難う助かったよ葉隠さん。上鳴とか峰田にもお願いはしたんだけど、即答で断れてさ」

「自分の事で精一杯なのにお前のノート取りなんて出来る訳ねぇだろ!?」

「龍牙が女子なら喜んで引き受けてた」

「もう二度と頼み事しないって決めたよ」

 

ジト目で男友達二人見つめつつも笑っている龍牙。彼にとって自分はどんな存在なのだろうか、唯の女友達なのだろうか、それとも単なる一クラスメイト……なのだろうか、いやだ、それだけで居たくなんてない……自分にとって龍牙は特別な存在。だから自分も龍牙にとって特別な存在でありたいという欲求があふれ出てくる。

 

「葉隠さん、ノートのお礼に昼ご飯奢ろうか?」

「えっでも悪いよ、この位お安い御用だもん」

「でも世話になりっぱなしってのもなぁ……」

 

そんな風に考え込む龍牙、大人と接する事が圧倒的に時間として長かった龍牙は何か音を受けたら確実に返すという行いを多く見てきたからか自分もそうしなければと思っている。それは間違っていないがまだ大人になっていない子供としては少々重く感じられる。しかしその時、葉隠は少しだけ悪い考えが浮かんでしまった。そして同時に予鈴がなってしまった。周囲が慌てて席に着く中で葉隠は龍牙に言った。

 

「だ、だったら龍牙君、後でお願い聞いて貰ってもいい!?」

「勿論、お安い御用だよ。俺で良ければ何でも力になるよ」

「約束だからね!」

 

そう言いながら葉隠は大急ぎで席に着いた。その胸には歓喜が沸き立ちながら見えない表情は笑みで染まっていた。それに龍牙は力になると言っていくれていた、それが堪らなく嬉しい。何も考えていないのにも拘らず口走ってしまった言葉、それでも何の疑いも持たずに受け入れてくれた龍牙に感謝を浮かべつつも、そんな自分に少しだけ嫌悪感を持つがそれよりも遥かに歓喜が上回って直ぐにそんな気持ちは忘れてしまっていた。

 

そして放課後、葉隠と龍牙の姿はノートを直ぐに写したいという龍牙の希望が通って彼の自室で話を聞くという事になった。

 

「ごめんね葉隠さん俺の我儘聞いて貰っちゃって……」

「いいのいいの気にしないで(これはこれで役得って奴だもんね……)」

 

愛しの彼の部屋に入って二人っきりというシチュエーションは少女漫画でも最難関と書かれていた。そんな事が出来たのだから嬉しさ満点という物である。これはこれでピクシーボブではそう簡単では出来ない所業なのだから……と心を躍らせながら正面に座りながらノートを写している龍牙を見つめる。

 

「それで葉隠さん、俺にお願いしたい事ってどんな事なのかな。俺で力になれたらいいんだけど」

「それはその、龍牙君だからこそ出来るお願いって言うか、というか龍牙君じゃないと意味がないって言うか……」

「良く分からないけど俺なら力になれるなら喜んでならせてもらうよ」

 

そんな風に言って貰えるだけでもう嬉しくて堪らない、もうこうしていられるだけで堪らなくなる。葉隠は我慢出来なくなったのか龍牙の隣に座り直すとそのまま抱き付いた。突然の行動に驚くが、ミッドナイトやMt.レディによくやられていたな考え直して落ち着いた龍牙はそっと彼女の背中に左腕を回してあげる。

 

「如何したの葉隠さん、何か辛い事でもあった?」

「―――少しだけ。でももういいの、もう龍牙君にこうして貰えただけでもう、満足なの……だからまた、こうして貰っても良いかな……時々、こうしても良い……?」

「葉隠さんが望むならね」

 

そんな言葉を受けられて、葉隠は思わず歓喜と満足に胸を染め上げながらもあわよくば行おうとしていた告白の事なんて頭からすっぽ抜けてしまい、そのまま龍牙に抱かれるという快感の時間をそのまま満喫してしまっていた。




「うわぁぁぁぁっっ……バカバカバカ私のバカぁ……何がこうしてもいい……よぉ……あんな恥ずかしい事言っちゃうなんてぇ……で、でも龍牙君に抱きしめて貰って……ぁぁぁぁっっ……」

と自室のベットの上で悶々とし続ける葉隠さんであった。

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