僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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前へ進む黒龍

その日、龍牙はインターン先のリューキュウ事務所にいた。麗日と蛙吹、波動もそこにいる。だがその日、リュウガは普段とは一線を画していた。いや、実際は何も変わらない、普段通りの彼だ。しかし何かを必死に隠しそうとしている、平常を装うとしているが何かが違うとその場にいる彼女は感じていた。

 

「(……断る訳にもいかなかったけど本当に大丈夫なの、リュウガ)」

 

主であるリューキュウは何処か不安そうな瞳を彷徨わせながら彼を見る。酷く落ち着いている、冷静沈着そのものだが何処か心をざわつかせるものがある。事情を知っているだけに、今の状況に責任を持ってしまうのは致し方ない、だが立場や状況を考えると拒否するわけにもいかない。目の前にて此方に頭を下げるヒーローを見ると今回の責任を感じてならない、断るべきだったのだろう。事情を把握し理解して受け入れたのだから責任を果たすべきなのだと、そう胸の内が痛くなるのを感じるのは目の前の存在のせいだろうか、それとも自分の不甲斐なさ故だろうか。

 

「今回の案件、協力を感謝しますリューキュウ」

「いえ、私としては貴方方とチームアップ出来る事を光栄に思います―――ビーストマン、ミラー・レイディ」

 

チームアップの要請。ヒーローとして、ヴィラン確保の為に要請された。それを受けないわけには行かない……それがリュウガの変化を齎してしまっていたのかもしれない。彼にとっては余りに苦く悲しい過去、個性に直結する問題の当事者、実の親であるビーストマンとミラー・レイディが目の前にいるのだから。当人には今回の一件を確りと伝え、出ない方が良いと促したのだが本人は気にしないと強く言ったのでこの場にいる。それでも気になってしまう、矢張り思う所があるのかもしれない。

 

「ケロケロッあのミラー・レイディさんとビーストマンさんに会えるなんて思ってもみなかったわ……!」

「サインまで貰っちゃった……!!デク君に自慢出来ちゃう!!」

「良かったね~二人とも」

 

と無邪気に喜んでいる麗日と蛙吹に少しだけ安堵を覚える、事情を知らない故に彼女らの無邪気が羨ましい上に有難い。少しだけ心が軽くなる、と同時に龍牙の方を向くとそちらでは二人を無視するように話をする姿があった。

 

「リューキュウさんの所でインターンをしてるなんて思いませんでしたよ、てっきりギャングオルカさんの方でしてるとばかり……」

「いろいろあってな。にしてもネットニュースにも出てたらしいんだけど見てないのか?」

「ニュース見ないので……これからは見るようにします……流石にHNばっかりなお父さんとお母さんと一緒だと不味いみたいだし……」

「あの2人も見てないのか」

 

とリュウガは実の妹である鏡 白鳥、ヒーローネーム・ファムと共に談笑を行っていた。どうやら向こう側は余りニュースを見ないタイプなのか、龍牙がリューキュウ事務所にいるという事は気付いていなかったらしい。ニュースよりもHERO NETWORKを重視しているらしい。それ故に龍牙がこの事務所にいる事に気付かなかったらしい、恐らく知っていたら避ける事だろう。

 

「今回お声を掛けて頂いたのは戦力として、私達リューキュウ事務所の力を借りたいという事でしたが」

「ええっ私たちが追っているヴィラン、そいつが兎に角曲者でね。単純に強い上に機動力に長ける上に、どんどん成長していく厄介な性質を持っているのよ」

「俺達も追いつめる事自体は出来ていたんだが……今は単純な火力不足で無理になってしまった」

 

ビーストマンとミラー・レイディが追っているのはヴェノムR、通称ヴェノムと呼ばれているヴィラン。全身が黒い粘液か繊維のような物で構成されており、それらを活用した攻撃や移動法で此方を翻弄し続けていたのだが、一度逃してしまった後に遭遇した時には持ち合わせていなかった力強さを持っていた。

 

「最初は何処かヒョロヒョロのガリガリだったのに、二度目の遭遇だと腹筋がシックスパックのスポーツマンみたいな体形になってたのよ」

「あれはマジでビビった、俺のタイガーボアの力を受け止めやがった」

 

ヴェノムRのRはRevenge(リベンジ)revolution(レボリューション)といった意味を含んでいるらしく、その名が持つ通りに恨みを持って進化して雪辱を晴らしてくる。それを裏付けるかのように一度は圧倒したビーストマンの猪の突進力に虎のパワーを合わせた戦闘スタイルであるタイガーボアの力に対抗出来るようになっている。その際にも見事に逃げ切っており、次に遭遇した時にはどんな進化を遂げているのか想像が付かない。

 

「だからこそ次で倒しておく必要があるの、だけど取り逃した場合には更にとんでもない進化をする恐れがあり出来るだけ少数精鋭で倒したい。だからリューキュウ事務所にチームアップの要請を出した」

「成程……虎と猪を抑え込むから今度は龍で潰すという訳ですね」

「そうだ」

 

ビーストマンの懸念も理解出来た。この夫婦から逃げ切るヴィラン、だが余りにも多くのヒーローを引き連れて攻撃し確保に失敗した場合にはそれらによって生まれた恨みを持ってえげつない進化をするかもしれない。だから出来るだけ少数で討ち取りたい、それも出来るだけ早急にというのも理解出来る。ならば更なる力で成長する前に押し潰して取り押さえるしかないのだ。

 

「承知しました、正式にチームアップの要請を受諾いたします。これよりリューキュウ事務所はヴィラン・ヴェノムRの確保に全面協力致します」

 

こうしてリューキュウ事務所の面々はビーストマンとミラー・レイディのチームアップの要請に応える形になった。未知の進化を遂げる恐れがあるヴェノム、それを確実に確保するための作戦会議が行われていくのだがその際にビーストマンとミラー・レイディは時折、リュウガの方を見るような視線をやるのだが当人は一切それを気にしないで会議に集中し続ける。そんな姿を見てファムは小声で隣のリュウガに声を掛ける。

 

「(あのお兄ちゃん……お父さんとお母さんなんか見てますけど……)」

「(今は気にしないで置いた方が良い、関係のない事だ)」

「(分かりました)」

 

自分達の事情はヴィランの確保の為には一切関係がない、口を挟む事ではない。黙ってそれに集中するだけ。そう、自分は乗り越えていく。過去を、そして今に今を生きる。




ヴェノムのRの元ネタが分かった人は作者と握手できる。成長するR。分かった人は素直に凄いと私は思います。
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