僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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作戦会議中の黒龍

ヴィラン・ヴェノムRの確保の為にチームアップを行ったリューキュウ事務所とビースト・ミラー事務所。早急に追い詰め確保する事を目的とした作戦を展開する事となり、今はその最終調整を行う会議が行われる。ヴェノムの居場所は既に特定できている。二度目の戦闘時にビーストマンがヴェノムに小型の発信機を付着させることに成功している。それによるヴェノムは郊外にある廃ビルに身を潜めている様子。

 

「恐らくだが、今大人しくしているのは次の成長の為の準備を行っているのだろう。一度目の遭遇と二度目の戦闘との間は1週間だった、そして今は既に三日が経っている……」

「あまり時間はない……出来る事ならば今からか、遅くとも明日には乗り込んで攻撃を掛けないと更に成長して倒す事が難しくなる……」

「でも無策で飛び出したとしても勝てるかどうもか怪しいのも事実」

 

ヴェノムの成長速度が完全に把握出来ない以上、出来るだけ早急に手を打つしかない。速効性が求められる。

 

「だけどリューキュウ、既に成長が終わっていると想定したうえで動いた方が良いと俺は思う。師匠に口を酸っぱくして言われる事がある。脅威が明らかになってる相手には最大の警戒と最悪の想定を頭において動けって」

「正論ね。最悪であることを想定して最善を尽くして叩く……ウラビティとフロッピーはねじれと一緒にサポートに徹して頂戴」

 

ビーストマンとミラー・レイディが実際に戦って手に入れたヴェノムの戦闘スタイルは野性的且つ狂暴、そして狡猾。そこにタイガーボアの力と拮抗できるパワーが合わさる事にある、そうなると防御力に不安が残る三人は後方からの支援に徹させるのが一番。

 

「それじゃあ基本はリューキュウがオフェンス?」

「ええっでも私だけだと多分対応しきれないわね……リュウガ、貴方に私の背中を任せるわ」

「了解しました、俺なら小回りも利きますからね」

 

リューキュウは個性を発動させれば大きな力を発揮する事は出来るが、逆に大型化してしまい小回りが利き辛くなってくる。そこのカバーにリュウガを当てる事にしておく。加えてリュウガは中距離からの攻撃手段を持っている上ので身体を伸ばして、縦横無尽に移動する事が出来るヴェノムにも対応出来る。が、それに相手二人は何処か渋い顔を浮かべる。

 

「彼を出すんですか、そのインターンでまだ学生ですのに大丈夫なんですの?」

「下手にヴィランの前に出して餌食になれては困るのだが……」

「大丈夫ですよ、だってリュウガ君は凄いですから!」

「ケロケロッそうね、リュウガちゃんは仮免でも凄かったものね」

 

不安そうな表情を浮かべる二人に対してウラビティとフロッピーが問題ないという。だがそれはあくまでの学生の、クラスメイトの意見だろうと一蹴しようとする二人の先を打つようにリューキュウも続いた。

 

「それについては私が保証します、特に彼のタフネスさは目を見張るものがありますし攻撃能力もピカイチ。彼のタフさは引退前のオールマイトの必殺技を複数受けたのにも関わらず、立ち上がり戦闘を継続出来た程」

「「―――っ!?」」

 

それを聞いて驚愕に慄く。オールマイトのスマッシュは並のヴィランであれば一撃KOどころか、掠っただけで戦闘不能に導くほどの威力がある。しかも龍牙はそれを真正面から受けているのにも関わらず立ち上がって戦う意志を見せ続けた、それほどのタフネスがならばヴェノムに対しても十分に役割を持ったうえで立ち回る事も可能。何処かリュウガを遠ざけようとしているかのような夫婦も、これを言われては何も言えないのか口を閉ざす。

 

「本当にオールマイトの攻撃を受けたの、凄い凄い!!どんな感じだったの?」

「最初は右腕が丸々消し飛んだって錯覚するレベル、その後は馬鹿でかいハリケーンと戦ってる気分になりましたよ……いやぁマジでやべぇよオールマイト」

「オールマイトの攻撃を受けた龍牙君も十分凄いと思うよウチ」

「同じく同意よ、龍牙ちゃん」

 

その時の傷は未だに生々しく身体に刻み込まれたままになっている。クラスメイト曰く歴戦の証という傷の中でも一二を争うレベルで深い傷跡だ。

 

「……ファム、お前はウラビティ達と共に後方支援を」

「でも私、遠距離だと基本何も出来ない。精々空を飛んで上空からの警戒程度だよ」

「それでも見張りにはなるのよ、いざという時にヴェノムを追跡する準備もいる」

「分かった」

 

何処か不満げな表情を浮かべつつもその役目には適任だという事を理解して、それを収めて役割を了解する。麗日も個性を使用して空に舞う事は出来る、だがそれは無重力化による浮遊であって飛行ではないので速度は出せない。追跡という役目を負うべきなのは麗日ではなく白鳥の方が適任。

 

「それでは行動を起こすのは翌日、それでは各自準備の時間に充てるという事で如何ですか」

「異論ありません。ねぇ貴方」

「此方も問題はない」

 

ヴェノム確保作戦の決行は翌日、前に出る事になったリュウガは意識を高めながらヴェノムが一体どんなヴィランでどんな相手なのかを巡らせていく。現段階でも相当厄介な存在なのは間違いない、最大級の警戒をもって臨む事を決意する。それは即ち―――

 

「師匠に挑む気概で行こう……」

「やっぱり貴方にとっての最上級でオルカなのね」

「そりゃ当然ですよ。殺意と敵意に溢れた師匠だと思っていきます」

「……私、そんなオルカ想像したくないけどリュウガ、相手にした事あるの?」

「ありますよ。マジで殺されるかと思いましたよ」

「……辛い事があったらいつでも言いなさい、いや絶対に言いなさい。いいわね?」

 

 

 

廃ビルの暗闇の中、闇の底の底、深海の深淵と言っても過言ではない影が周囲を包み込んでいる。その闇の中央部から静かに木霊する心臓が脈動するそれは規則正しく鐘を打ち続けていく。それに混じって周囲から温度を奪うような唸り声、黄泉の冷気が漏れだしているかのようなそれは地獄の餓鬼のそれに聞き間違うほど。

 

「AAA……GUUUU……」

 

唸りは恨みと怒り、憎悪をもって増幅されていく。増幅されたそれらは肉体に影響を及ぼしながら徐々に身体を膨れ上がらせる。次なる復讐の為に、次の進化の為に、次の次の復讐の為に、次の次の進化の為に。それは怒りなどが自らに必要など理解している。だからこそ余計に憎悪を燃やすのだ。自らを討ち取らんとしてきたあの男と女に、そして同時に思うのだ。

 

―――あれらを生きたまま解体(バラ)したらどんなに楽しいのだろうか、生きたまま四肢の先から喰らってやったらどんなに悶えるのだろうか……。

 

そんな光景を脳裏に浮かべると、歪んだ口角を更に吊り上げながら長い舌を動かす。そこにあった肉を取り、内部にあった骨ごと噛み砕きながら咀嚼しながら思う。

 

―――今喰っているのがあいつらだ、次は本当のあいつらを喰ってやる……。


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