僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「ええっとリュウガ君、そっちの人って何て呼んだらええの……?」
「そう言えば本名って何なんだ?」
「ヴェノムで良い、それが一番気に入ってる」
リューキュウ事務所の一室、そこでは救援要請を受けたギャングオルカやエンデヴァーの姿などもありながらどこか戸惑っているウラビティやフロッピー、ねじれちゃんの姿もあった。だが彼らの視線は一つへと向き続けていた。それは―――龍牙の隣で拘束されている黒い巨体、ヴェノムの姿だった。
「血相を変えての要請だから大急ぎで来てみれば……どういう状況だこれは、龍牙説明しろ」
「何て説明したら良いんでしょう……」
「最初から一つずつしていくしかない、それが確実よ」
リューキュウに促されて龍牙は説明に入った。此処にいるこのヴェノムはビーストマンとミラー・レイディが追いかけていたヴィランで、リューキュウ事務所はその確保の為にチープアップを組んだ。そして現場でヴェノムの異常な殺気に救援が必要だと悟り、女性らをそれに出し、自分達はヴェノムと戦闘を行った。そして色々あって今に至るという事を説明する。
「んであの馬鹿夫婦はどこ行った」
「別室で休んでます、ヴェノムの攻撃を諸に受けちゃってますので」
「ケロ……あの、一緒で大丈夫なのかしら……拘束されてるとはいえあの二人を簡単に倒しちゃったんでしょ……?」
「もうヴェノムに戦闘の意思はない、というかこいつは下手に拘束するのは逆にまずい」
「そういう事だ」
そう言いながら両腕を拘束している特殊合金製の拘束具を見せながらヴェノムは言う。逃げようともせずに今の状況を受けている姿に皆は動揺しながらも、それを見張るようにしながらその場に待機している。逆に興味を惹かれるように視線を動かし続けているのはむしろヴェノムの方、初めて見る物に興味を示すように視線を絶えず動かし続けている。
「お前ら、余り俺を怖がらないんだな」
「お前なんざ恐怖の対象ですらない、プロを舐めるな」
「同じくだ。お前のような奴など山のように見てきた」
「……そうか、俺は珍しくないのか……だがあの二人はあっさり俺を見てビビってたぞ。あれはプロじゃないのか」
と素直に言うヴェノムに思わずオルカとエンデヴァーは吹き出しそうになった。確かに二人は内心であの二人をプロとしては認めていない、だが改めて第三者から口にされると無様且つ愉快な発言になって笑いがこみあげてくる。
「お前らもそうなのか」
「えっ私達?う~ん……怖くはない、かな。リュウガ君で随分慣れてるし」
「私も驚きはしたけど怖くはないわね、寧ろ興味がわくわ」
「ねえねえなんでそんなに黒いの、粘液みたいになってるの?不思議だねぇ~!」
と平気そうな二人と好奇心MAXなねじれちゃんを見てヴェノムは呆気に取られながらも何処か嬉しそうに、そうなのか……と小声で繰り返していた。龍牙と長い事を付き合ってきたからか、プロとしての経験ゆえか、純粋に興味が上回っているからか、ヴェノムは恐怖を持たれない事に妙な感動を覚えながら大人しくしている。
「ヴェノム……とか言ったな、暴れる気はないとリューキュウから聞いているが、もしも暴れたら俺が焼き尽くしてやるから覚悟しておけ」
「……分かった。俺も焼かれたくはない」
「なら聞くがお前は今まで目立った犯罪行為がないらしいが、如何してあの夫婦に追われた」
「簡単だ、俺の仕事を見られた」
ヴェノムの仕事というのは簡単に言えば荒事で汚れ仕事に属する物。非合法なカジノやヴィラン予備軍として監視されている団体の島、縄張りにされている店舗の用心棒や借金の取り立てなどを行っていたとの事。が、表には一切出ずに今までバレた事は無いように行動はしていたとの事。
「生きていくには金が要る、だからそういう仕事をしてた。リュウキューにリュウガの目の前で食ってた肉も、その団体を通して買うようにしてた」
「……お金の出所は兎も角、ちゃんと買い物してたのね……」
「盗んだら目立つ、それは俺の自由をなくす行為だ」
ヴィランなのに律儀なようにも感じるが、ヴェノムは基本的にこの姿を変える事が出来ないらしく人前に出れば簡単に騒ぎに発展する。なので仕事をする団体を通して買い物をするというのが基本。分かり易く言えば、外に出ないで全部ネットショッピングで済ませる物に近いかもしれない。
そしてヴェノムはその時も組織から頼まれていた仕事、用心棒としての仕事をしてその終わり掛けだった。その時に相手側の組織が取引に不満を持ったのか、何やら武器を向けてきたという。用心棒として雇われたヴェノムは当然その相手を黒糸で動きを封じ、取引を再開させたのだが……如何やらその時にビーストとレイディに見られてしまったらしい。
「話を聞く限り、そこまで悪い事じゃない、のかな……いやでも結局悪い事……ではあるよね」
「そういう組織で関わっていたから悪い事だとは思うわ、でもそこまで悪い事……とも言い切れないと思えるわ」
「だよな、そこまででもないような……」
ヴィランの襲撃やらを受けているからか、思わずそれと比較してしまう3人にプロらは子供にそんな経験をさせてしまったという責任からか少しだけ頭が痛くなった。
「やり方に問題あったんじゃないのか。如何やっていた」
「ビルの壁に待機して、上から黒糸を伸ばして相手を俺の前まで連れて来て、大人しく応じろって脅しただけだぞ。穏便……って言われてたからな、俺がそう言えば応じるって言ってた」
『ああっ……』
それは確かにヴィラン認定されても致し方ないかもしれない、ヴェノムの外見の事も考えると妥当と言えてしまう。それは確かに言われた方も従わざるを得ないだろう。
「それでヴェノムは如何するつもりなんだリューキュウ」
「拘束するのは得策ではないですね、個性の事もありますから監視下に置く事が一番だと思います。加えて彼は本当に強いです、加えてどんどん成長しますのでヒーロー側に引き込むべきだと思ってます」
見た目は置いて置くとして、ヴェノムはヒーロー側に引き入れるべき存在だとリューキュウは思っている。圧倒的な力や成長速度もあるが彼には確りとルールなどを教え込めば、十分立派に生きていけると感じられる。少々骨こそ折れるだろうが、引き入れられればあらゆる意味で際立った存在のヒーローとなるだろう。それに表立って悪さもしていないので今の段階ならば、ヒーロー側に引き入れる事も比較的容易い。この問題はエンデヴァーやギャンクオルカ、リューキュウが協議を重ねながら決めていく事に決定。本人はヒーローをやるのには意義はないらしい。裏で仕事をするか、表で仕事をするかの差としてしか見ていないらしい。
「自由は貰うぞ、俺は自由が好きだ」
「それは与えてやる。だが必要以上の自由は無理だ、その時は―――俺が焼く」
「……分かった、焼かれたくない」
どうやらヴェノムにとっての炎はとんでもない物らしく、エンデヴァーが軽く青い炎で脅しをかけると震えながらリュウガの後ろに隠れながら頷いた。
「因みにヴェノム、お前が仕事を受けてたって言うのはどんな組織なんだ」
「あ~……なんだっけな、何とか道って連中で名前は……」
「ヴィラン予備軍で何とか道……おいヴェノム、それは極道って奴じゃないのか」
「それだ、極道。それで名前は確か―――死穢八斎會、そんな名前だった気がする」
この一件が、リュウガを新しい事件へと誘う事になるとはだれも分からなかった。
「美味い、なんだこの茶色のは!?」
「チョコだけど」
「チョコ……甘くて美味い……仕事の報酬はこれだ、いやこれが良い」
「どんだけ気に入ったんだよお前……」
ヴェノムの仲間入り……というよりも雇用?