僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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「はい、そうなんです。お支払いは言値で問題ないと言伝を承っております」

―――……確認しておくがその依頼に間違いはないんだな。やるのは問題はない、だが後になって文句を言われたらかなわない。

「―――間違いはないそうです。」

―――……承知した。金は予定日に手渡し限定、後払いはなし。

「畏まりました。では」

―――……世も末だな。


破壊の気配を感じる黒龍

その日、龍牙の姿はヴェノムと共にリューキュウに連れられてとあるビルにあった。そこに居た理由は先日話が合ったナイトアイからのチームアップの要請に応える為。ヴェノムの訓練の為もあってかリューキュウ事務所で待機していた龍牙だが、ヴェノム共々視線を集めていた。今は個性を発動させていないので唯のスーツ姿なのだが……。

 

「おおっ君が話題の超大型ルーキーのリュウガ君やな!!」

 

何故視線を集めているのかと思っていると後ろから声を掛けられる、振り向いてみるとそこには黄色のパーカーのようなコスチュームを纏っている縦にも横にも大きい巨漢の男が笑顔を作りながら此方を見下ろしていた。そのヒーローはリュウガは覚えがあった。クラスメイトの切島のインターン先になっているBMIヒーロー・ファットガム。

 

「おっとまずは自己紹介が先やったな、すまんすまん。ファットガムや、宜しく頼むで」

「此方こそお会い出来て光栄です。御話しは友達から聞いてます」

「って事は烈怒頼雄斗、切島君からやな。こっちも聞いてるで、何でも豪い強くて頼りになる熱い男、そう言うとった」

「いえ俺は俺の出来る事を全力でこなしているだけですよ」

「謙虚やなぁ、もっと自信持ってええんやで?自分はそれだけのことをしとるんやから」

「持っても師匠に粉砕されますから」

 

そう言われてファットガムは切島から師匠がギャングオルカだという事を思い出した。ギャングオルカから凄まじく厳しく鍛え上げられており、身体はその時に出来た傷が生々しく残っている。そして謙虚というよりも常に第三者的な視線で自分を見つめるように教育されている、故に基本的に自信を持たず、慢心する事なく常に自分の最大値を把握しているタイプ。というよりも師匠に自信を打ち砕かれているので持つ意味がないと聞いている。

 

「ほんせやけど自信は持っておく事、自信は慢心やのうて自分への信頼、確証やからな。自分を信じられへん奴に明日はない。よく覚えておき」

「自分への信頼……」

「そう、それになギャングオルカはこう言いたいと思う」

 

ファットガムは咳払いをしながら龍牙の肩に手を置きながら言う。

 

「お前の全ては俺が知っている、だから信じろ。俺が知っているお前を、俺が信頼しているお前を信じろって事やろなきっと」

「俺が信じるお前を信じろ……」

「何だそれ、意味分かんねぇぞ。結局自分を疑わないってだけじゃねえのか」

 

隣で話を聞いていたヴェノムは兎に角眉を顰めて理解出来なさそうな表情をする。

 

「テメェがテメェを信じるのは至極当然の事じゃねぇか、テメェ以外にテメェ一番が分かる奴なんざいないだろ。意味分かんねぇよ」

「そうかもしれない、だけど人によっては自分の事を信じられないことだってある。だから自分じゃなくてお前を信じるオレなら信じられるだろって感じや」

「そんなもんかねぇ……」

 

と素直に同意とも取れない言葉を口にする。常に孤独で一人で生きてきたヴェノムにとっては信じられるのは自分のみ、自分は決して裏切らない。それが当たり前、だからこそヴェノムはたった一人の孤独の中でも生きていく事が出来た。そんな彼としてはファットガムの主張はいまいち理解出来ない。

 

「……いや俺はなんとなく理解出来た。所謂免許皆伝とかそういう認識でもいいんですかね」

「ほんせやけどええと思うで、自分なら大丈夫、せやから前に進もう!っていうのが大事なんやからな」

「成程、貴重なご意見ありがとうございます」

「ええってええって、飴ちゃん喰うか?」

「あっ頂きます」

「チョコ味なら食う」

「おおあるで!」

 

リューキュウは早速龍牙に新しい味方が生まれた事に安心感を覚えている。なんだかんだで龍牙に最も欠如しているのが自らに対する自信や自己顕示欲、慢心まで行かずともそれは必要になってくる。オルカの慢心を生まない為の教育方針も理解出来なくもないが龍牙には欲も必要だと考えている。自分では上手く説明出来ない事をファットが説明してくれた事に感謝を浮かべ、頭を下げると力強いサムズアップで応えてくれる。

 

「アンタも中々に苦労しとるな」

「すいませんファットガム、態々」

「いやいやこう言う事は男同士の方が言いやすいし伝わりやすいってもんです」

 

そんなやり取りをしているうちに麗日や蛙吹も到着、加えて同じくファットガムでインターンをしている切島やナイトアイ事務所でインターンを行っている緑谷も到着。雄英ビッグ3も到着しいよいよ本格的な話し合いに移行する事になってきた。ナイトアイ事務所は今現在、極道組織・死穢八斎會を追跡中、その過程で敵連合の一人、トゥワイスと接触している事も明らかになってきている。既にかなりの大人数がいるこの場にはグラントリノまでいる。かなり大掛かりなチームアップになっている。話をしている過程でヒーローの一人、ロックロックが話を切り出す。

 

「んで雄英生とはいえガキがいる理由は何だ、それになんだそいつ。どう見てもヴィランじゃねぇか」

「……ああっ俺の事か、ヴェノムだ」

 

ロックロックの視線の先にはお茶請けとして出されているチョコを食べているヴェノムがいる。彼としてはこの場に子供が居るのにも何処か納得がいかないような表情をしているが、それ以上にヴェノムの事が気がかりとなっている様子。

 

「彼はこの件については重要参考人です、彼は以前その死穢八斎會と関係がありました。今現在はリューキュウ事務所、ギャングオルカ事務所、エンデヴァー事務所で研修を積みながら近々ヒーローとして活動予定です」

「……本気かよ、元ヴィランをヒーローとして採用する気か」

 

一部のヒーローもそれに同意と言わんばかりの表情をしながらヴェノムを見る、が当の本人は何処吹く風。まあエンデヴァーやオルカに比べたら可愛い物だろう。

 

「んでナイトアイさんよ、俺がした話は役に立ったのか?つっても人相や名前、知ってる限りの個性やら仕事中の話しかしてねぇけど」

「かなり役に立っている、君のお陰でこの一件は飛躍的に進展したと言っても過言ではない。感謝している、約束通りにチョコレートを用意しておく。私のユーモアにかけて、君が満足する物を送る」

「そりゃ楽しみだ」

 

ヴェノムについて首を傾げる者もいるが、この一件においては非常に重要な立ち回りをしているヴェノム。八斎會は認可されていない薬物の流通をシノギの一つにしていた、ヴェノムが行っていた用心棒やらの仕事もその薬物の受け渡しの場面も含まれていたりもしていた。そして薬物について詳しいヒーローとしてファットガムも呼ばれていた。彼は以前は武闘派として積極的に警察と協力して無認可の薬物を中心に取り締まっていた時期があった。

 

「そして先日の烈怒頼雄斗デビュー戦……うちの環が今まで見た事もないような薬物が入った弾丸を食らってしもうた、それの出所が八斎會っちゅう訳や。そして―――その打ち込まれた弾丸は個性を壊す薬……しかも、その中には人間の血やら細胞が入っとった……!!」

 

周囲の空気が死んだ。現環境、世界を壊しかねない薬。その薬は個性因子を傷付ける薬、それを聞いた龍牙は真っ先にオール・フォー・ワンによって抜き取られたドラグブラッカーの事を連想した。この場合はその個性因子をそのまま奪われたというのが正しいだろうが……自分の場合は打たれた薬が黒龍の力を保存していた、その薬が黒龍の代わりを成す事で今まで個性が使用出来ていた。

 

だが今回は異なっている、人間の細胞や血が入っていた。という事は人間の個性によって個性が破壊される薬が製造される事になる。そして死穢八斎會の若頭の治崎の個性、壊して治すというオーバーホールという個性があるという。そして彼には壊理という娘がおり、緑谷とミリオが遭遇した時、彼女の腕や足には夥しい量の包帯が巻かれていたという……。

 

「―――そうか、だから俺に用心棒を……そう言えば偶になんかちっせぇ気配もあったな……」

「恐らくそれが件の女の子って訳ね……」

 

皆が察していた、理解したくもないような悍ましい事実がそこには隠されていた。その壊理ちゃんの個性は不明だが、個性を壊す薬+壊して治すという治崎の個性+包帯を巻いた女の子が導き出す答えは―――壊理ちゃんは生きたまま、身体をバラされている。加えてそのバラされた身体の一部を個性を壊す薬に転用している。

 

「そしてヴェノム、彼の協力のおかげで八斎會の主な活動地域や販売を行った相手組織などの多くが特定出来ました。おかげで大分絞り込むが進んでいます、よって我々は更なるダメ押しを行うつもりです、その為に皆さんのご協力を願いたくチームアップの要請を致しました」

 

ナイトアイの要請に誰一人として拒否は出なかった。




似非になってないか一番不安……。

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