僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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猛る黒龍

「やっぱり龍牙いねぇか……」

「うん、今も捜査中だって返って来たよ」

「でも凄い余裕だ」

「顔文字を入れてるのはこっちに心配を掛けないためかしら」

 

サー・ナイトアイのチームアップ要請、それらを受けてプロヒーロー達が死穢八斎會へのガザ入れのための行動を行っている間、インターンを行っている緑谷、切島、麗日、蛙吹は待機となっていた。例外的に龍牙はその能力とヴェノムとの関係故かそれに参加し情報収集に当たっている。事情を知っている者として緑谷達は龍牙の事を心配しつつも一刻も早い進展を望みながら、友の安全を祈る。そんな思いを抱いている事が見透かされているのか、グループチャットには

 

『こちらは順調だから安心してくれ、リューキュウさんもヴェノム一緒で無茶はしてないから大丈夫だ('◇')ゞ』

 

という物が打たれている。緑谷がチャットを打ったのが朝でお昼ごろ返って来たので如何やらそれなりに忙しい立場にある身でありながら返してくれたようだ。まあ実際は顔文字を使おうとしたのだが、やり方と選び方が分からずに時間が掛かっている分もあるので何とも言えない所もある。

 

「あっデク君、また返って来たよ!」

「ホントだ……あっ本当に大丈夫そうだよ」

 

そう言って画面を見せると3人は笑ってそれに同意した。そこには次のポイントへの移動を兼ねて昼食を取っている龍牙がリューキュウと共に映っている写メがあった。追伸でヴェノムは目立つから別所でこっそりと食事をとっていることが明記されている。写真に慣れていないのか、ぎこちない笑いとピースサインを浮かべている龍牙と余裕のある大人の微笑みを浮かべるリューキュウの姿に思わずホッと息が漏れる。

 

「アハハッ見てよ龍牙君、如何にも慣れてませんって感じだね」

「だね、凄いぎこちない感じ」

「そう言えばあいつ今まで友達いなかったって言ってたもんな、終わったら皆で遊びに出掛けてゲーセンで写真でも撮るか!?」

「ケロッいいわねそれ。いい記念になるわ♪」

 

この後行おうと決めるイベントについて何処かあった陰鬱な雰囲気が少しだけ軽くなる、今も頑張っている龍牙に色んな意味で感謝を浮かべている中で蛙吹はその写真を見て思わず口にしてしまう。

 

「なんだか……龍牙ちゃんとリューキュウがお付き合いしてるみたいな感じの写真になってるわね」

『あっ~言われてみたら……』

 

何処か不得手で経験不足な龍牙をリードするような形になっているリューキュウの図はそういう風に見えても致し方ない。何処か漫画でもこのような描写もあるの為、全員に何処か既視感があった。そして幸いだったのがこの事を葉隠が居ない場所でしていた事だっただろう。聞かれていたら……どうなっていた事やらこの日、偶然にも休みだったからこそ葉隠は聞かなかった。本当に幸いだった―――いや、逆なのかもしれない。

 

 

「う~ん写真って難しいですね」

「リュウガはそっちはまだまだ不得手なのね」

 

共に昼食を取るリューキュウは普段のコスチュームとは違い、何処かラフだがきっちりしている休みの女性という印象を与えるような服装をしながら此方を見つめている。龍牙もコスチュームのスーツではなく、以前出掛けた時の格好をして情報を集めていた。

 

「取れた写真も凄いぎこちなかった、慣れてないのね」

「写真はそんなに……自然に笑うならまだしも、意図して笑うっていうのが如何にも……」

「これから少しずつ、慣らしていく。数をこなしていけば出来るようになっていくから大丈夫」

 

彼女も彼の過去を理解している。友が居なかった故に弊害という事も理解しているが、如何にも微笑ましく映って見守りたくなるのも不思議な物である。きっと彼の友人関係は見ているだけで面白可笑しくて楽しいのだろう、そしてこればかりは女の勘だが、彼を好いている者は確実にいる。きっと龍牙相手に苦戦しながらも頑張っている事だろう、是非ともそれは観戦したい物だ。

 

「さてと……次の拠点は5キロ先だったわね……そっちに移動しましょう。ヴェノムはもう移動を開始してるみたいだし」

「分かりました」

 

一つの拠点の調査も終了したので次の場所へと移る事になる。龍牙のミラーワールドでの情報収集を行っている為か想像以上に順調に調査が進んでいるのと外れを多く引き過ぎているのもあるのか今日のうちに終わらせておく筈の拠点は全て終わらせている。だが、壊理ちゃんの事を考えると追加しておいた方が良いだろうと、龍牙とヴェノムの了承を取った上で拠点調査の追加を決定する。

 

「今の所は外ればかり……いえ変な勘繰りはしないで数をこなす事だけを考えておきましょうか。出来る事を全力でやり続けましょう」

「俺もまだまだ行けます。今の所最後の確認で潜ってるだけですから」

「頼りにさせてもらうわよ、リュウガ」

 

茶目っ気たっぷりにウィンクを飛ばすリューキュウ、そんな姿に龍牙は素直に頼りにされて嬉しさを覚えながらもやる気を出す。自分は重要な部分を背負っているのだという自覚が集中力を高めていく。足早に次の拠点へと向かう、出来るだけ気負わず目立たないように一般人に溶け込むように歩いていく。そして一直線には向かわずに遠回りや一度遠ざかるような道を選択して、狙いをお前たちに定めているという事を悟られないようにしながら……あくまで、自然と一日を楽しんでいるように振舞いながら……。

 

「あれっもしかして龍牙君?」

「葉隠さん……?」

 

そんな時だった、彼女と出くわしたのは。そこには可愛らしい私服姿で両手に買い物袋を提げている透明な友人の姿がそこにあったのだ。

 

「奇遇だね、如何したの?」

「私は買い物だよ~前々から欲しいなぁと思ってた服の発売日だったの!だから思い切って買っちゃった」

「へぇっ~」

「と、所で龍牙君隣の人は……?」

 

恐る恐る葉隠は言葉を掛けた。彼女からすれば買い物をしている時に偶然に見かけた意中の人、なのだがその人の隣には見慣れない綺麗な女性がいるのだ。しかも彼女からすれば一度もあった事の無い相手なのだから戸惑いを隠せない、もしかしたらピクシーボブのようにライバル、いや下手をしたら龍牙が思いを寄せているのかもしれない……という妄想すら持ってしまう。そんな心配を持っていると隣の女性事、リューキュウは何かを察したように悪い笑みを浮かべながらワザと、龍牙の腕に自分の腕を絡めながら少しばかり身体を寄せた。

 

「あらっ龍牙お知合いかしら」

「えっと俺のクラスメイトなんです」

「そうなの、友達を持ったわね。素敵ね」

「俺にはもったいない位の友達ですよ」

 

何の嫌味もない龍牙の本音だが、葉隠からしたら今はそれに反応する暇はなかった。何せ見せ付けるかのように腕を絡ませている、透明で見えないだろうが指先はワナワナと忙しなく動き回って焦っている。しかもちゃっかり胸まで押し付けている、自分のそれと比べて豊満なそれが形が変えているのを見て何処か敗北感を感じる。そんな様子は見えないが、リューキュウは察する。彼女は龍牙に恋をしているのだと。

 

「(やっぱり思った通りね、やっぱり無自覚な色男って感じね。後少しぐらい反応してくれてもいいじゃない……これはきっと恋の道は険しいわね)」

 

と内心で龍牙に恋する彼女の道は果てしなく険しい物だと思いつつも、自分の行動に全く反応しない龍牙に複雑なそれを抱きつつも訂正を行う。

 

「ふふふっ安心しなさい、私はそんなんじゃないから」

「ふぇっ!?」

 

まるで見透かされているかのような言葉を掛けられて葉隠は一瞬だけ変な声を上げてしまう、そしてそっと彼女の持っている荷物から頭をの位置を計算して、そっと耳打ちのように小さな声で告げる。

 

「私はリューキュウ、この辺りには仕事で来てるの。意地悪してごめんなさい。後、恋は応援させてもらうわね」

「っ~!!!??」

 

何で完璧にバレているの!?と声にもならないものを上げながらも慌てる葉隠と微笑ましいものを見るリューキュウ、完全に意味が分からない龍牙と妙な構図が出来上がっていた。そう、そこにあるのは死穢八斎會とは何も関係もない場所で男女の3人組という物……。

 

「えっあのどういう事……?」

「い、いいのいいの龍牙君は気にしなくて!!?」

「えっ~?なんかずるくない?」

「ずるくないずるくない!!?」

 

っと彼女が龍牙の周りを飛び跳ねるように慌てているその時だった。不意に破裂音のような物がした、その直後に龍牙の前に出てしまった彼女、葉隠にそれが命中した。

 

「ぁっ……」

 

不意の事だった、突然の事に何も分からずに痛みを感じつつも彼女は倒れこんだ。リューキュウはそれに驚いて抱き起そうと駆け寄る。龍牙は自然と二人を庇う様にしながら、何かを感じ取ったようにそちらを見た。そこには路地裏の影から此方を狙うようにしている男がいる。その手は個性で変化しているのかライフルのようになっており此方を狙い続けてた。それは龍牙に気付かれたと悟ると再度引き金を引いた、放たれた弾丸は龍牙へと向かうがそれを部分出現させた盾で防ぐ。

 

―――同時に、龍牙の内部で今まで感じた事もないような凄まじい物が爆発せんと暴れ狂っていた。龍牙は黒い炎を纏いながら一気に飛び出して路地裏へと突撃するとそこで個性を完全に発動させながらライフルになっている腕を抱えている男を見下ろした。

 

「―――貴様、今……何をした。おい応えろ……彼女に……何をしたぁ!!!」


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