僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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衝撃を与えて受ける黒龍

「―――貴様、今……何をした。おい応えろ……彼女に……何をしたぁ!!!」

「煩いっ……もう一発、食らえ!」

 

薄暗い裏路地を、黒い炎が照らすようにしながらも威圧的で恐ろし気な雰囲気を纏った龍は自らに向けて引き金を引いた男へと向き直った。身体の内部から爆発しそうなものを感じながらライフルを構えた男を見下ろす、己が纏うそれがただの怒りではない事に気付かぬまま、その矛先をそれに任せて振るいそうになりながらも抑えつけるようにしながら。男は冷静に素早く再び引き金を引いた。

 

ライフルの弾丸が放たれる、男の個性は弾丸と見なした物を自在に発射できるという物。龍牙の身体が鎧のような物であると判断すると己の全てを使って発射可能な弾丸を全て放った。4発の弾丸が一列に並び、龍牙の胸元へと向かい正確に一点のみを傷付けるんとする。そして最後の一発の背後にあった弾丸が鎧をすり抜けて直撃する、その算段は間違いなく、幾ら龍牙でも大型のライフルの弾丸を全く同一の個所に受ければ鎧は脆くなる。だが―――

 

『グオオオオッッ!!!』

 

それを黒龍は許さない。龍牙に当たる寸前で刃のような尾がそれらを全て叩き落としてしまう、男の誤算は怒り狂っているのがたった一人ではなかったという点だ。そして男は失敗したと悟ると服の袖に仕込んでいたと思わるワイヤーガンを射出して建物の合間を縫って逃げようとするのだが

 

「逃がすと思ってるのか……あ"あ"っ!!?」

 

男の動きなど龍牙にとっては遅すぎる、寧ろ初撃で仕留められなかった時点で逃げるべきだった。それならまだ逃げ切れる目も合った。しかしもう遅すぎる、男に黒龍が獲物をしとめようとする蛇のように絡みついて締め上げていく。所持していたライフルは盾にもならずあっさりと拉げる力が万力のようにギリギリと男を締め付ける、肉が押し潰され骨が軋ませる力が加えられて行く。

 

「あああああああっっ!!!締まるぅぅっ!!?やめて、くれっ……死ぬぅ……!!?」

「質問に答えろ……彼女に何をしたぁっ……!!」

 

目の前で拳を握るとそれに連動するかのように黒龍は更に締め付けを激しくさせる、そもそもドラグブラッカーは龍牙と一心同体。龍牙が激昂すれば黒龍もそれに同調する。黒龍もその怒りに駆られるように拘束を更に強くしていく。

 

「ヒーロー、が……俺を殺す気か……!?」

「お前は殺そうとしてきただろう……される覚悟がないってのか……!?」

 

その言葉を聞いて黒龍はジリジリと自らの身体を黒炎で纏い始めた。まだ各部を少しだけ炎で覆っているだけだがその影響は直ぐに現れる。身体の温度はどんどん上昇していき、男を痛みと熱で締め上げていく。徐々に激しく燃え盛る鎖で身体を縛り上げられるような物。寒さには人は耐えられるが熱さは簡単には耐えられない。それを龍牙は知っている。

 

「がぁぁぁああああ!!!??」

「まだ肌が軽い火傷する程度、だが何も言う気がないなら……」

「分かった、分かった話す!!だからやめてくれぇっ!!?」

 

悲鳴を上げて許しを請う、だが男の意思は全く折れていないように見えた。怒りが爆発しそうになっているが龍牙は冷静なままだった、冷静なまま怒っている為か男の意思を正確に読み取った。確実に仲間がいると。

 

「それは御仲間が助けに来てくれるまで、話してくれるという事か」

「ッ―――!?」

 

その時だった。頭上から黒い塊が降ってきた。それは筋骨隆々の大男二人だが、身体中を黒い粘質の意図で縛り上げられており完全に動きを封じられている。そしてそれをやったのはヴェノムであった。共に降ってきたそれは縛り上げた男二人を抑えつけながらリュウガを見る。

 

「襲う気満々で様子を見てたぞこいつら、でもまあ雑魚だったが」

「ざ、雑魚……!?」

「よくやってくれたヴェノム……」

「後リューキュウが呼んでんぞ、そいつらは俺が見といてやるからいけ。吐かせればいいんだろ」

「でもこいつはっ……!!」

 

龍牙は思わずそれに反論して何としてでも自分で吐かせようとしようする、自分に引き金を引く分ならば容認出来る。だがこの男は自分の大切な人である葉隠に向かって引き金を引いたのだ、驚くほどにそれが許せない。この男に憎悪すら感じる程に。それを見てヴェノムはふぅんと言いながらも壁に寄り掛かった。

 

「まあお前がそうしたいならそうすればいい、お前の自由だからな。でも一言だけ言うと……そりゃもうヒーローじゃねえことだけは分かっとけ」

「……っ!!」

 

復讐はヒーローがしてはいけない行為の一つ、嘗てステインに兄を傷付けられた飯田が言っていた。ヒーローは私情で先走ってはいけない、自らの感情だけで行動してヴィランに復讐などしてはいけない。それだけはしてはいけない。怒りで忘れかけていたそれをギリギリの所で思い出す事が出来た。深く、深く深呼吸をしながら普段の自分を取り戻す。荒々しい怒りを静めて、瞳を開く。

 

「悪いヴェノム……お前にそう言われるなんてな」

「終わりだぞ全く……そいつは俺に任せろ、脅すのは得意分野だ」

 

そう言いながら邪悪な笑みを浮かべながらその剛腕を相手の首へと伸ばして握りこんでいく。それに合わせて黒龍も炎を消して離れていき、完全にヴェノムにそれを譲渡する。首を掴んだ手からは黒い物がじわじわと侵食していくかのように男の身体へと伝わっていく。何かの寄生生物が身体を乗っ取ろうとしているような様一種のホラー的なインパクトを男に与えていく。自分の身体が何かに置き変わっていくような恐怖が迫ってくる。

 

「久しぶりだ―――直ぐに潰れてくれるなよ……?」

 

この時、男は死ぬほど後悔した。そして―――死ぬほどの恐怖を味わった。

 

 

「リュウガ!!良かった、深追いはしなかったみたいね」

「すいません……怒りで我を忘れそうになってました……」

 

リューキュウの元へと急いだ龍牙、その姿を見て彼女はほっと息を付いた。街中でいきなりの発砲、その犯人を追いかけてしまった彼に彼女は葉隠を庇いながらまだ近場に居たヴェノムに応援に行くように指示をした。幸いな事にヴェノムは先に行くと言いつつも自分達と足並みを合わせていてくれた事もあったからか、直ぐに合流して貰えた。

 

「気持ちは分かるわ、でもヒーローとして生きて行くなら冷静になる事は重要よ。あのままあなたが追いかけて、貴方までやられたら元も子もないわ」

「申し訳ありませんでした……あの、それで葉隠さんは……?」

 

何よりも龍牙はそれが気になっていた。恐らく男は自分を狙っていた、だが透明な葉隠が周囲を動き回っていたのでそれが代わりに彼女に当たってしまった。自分の代わりにそれを受けてしまった、これで彼女に何かあったとするならば……どうなる事だろうか。いや、そんな事は彼の頭にはない。純粋に彼女の身を案じている。そんな龍牙を見てリューキュウは軽く頭を撫でてやりながら告げる。

 

「大丈夫よ、彼女は無事よ」

「本当ですか!?」

「ええ、撃たれたと言っても急所は外れてたし大した事は無かったみたい」

 

それを聞いて龍牙は思わず身体から力が抜けてしまったのかその場に崩れ落ちてしまった、本当に安心しきった表情で天を仰いでしまった。それほどまでに気にかけていたのかと、少しだけ微笑むリューキュウは悪戯気に言った。

 

「そんなに心配してたのなら、ちゃんと声を掛けてあげなさいな。葉隠ちゃん、おいで」

「は、はぁ~い……」

 

建物の間に声を掛けて葉隠を呼ぶ、それに返事が帰ってきて龍牙は改めて安心感を露わにするのだが……建物の影から現れたそれを見て龍牙は思わず声を上げて驚いてしまった。そこにいたのは見た事もないような可憐な美少女、その可憐さと愛らしさが融合した美少女に誰もが恋に堕ちそうになるだろう。何処か戸惑い恥ずかしがっているような姿が魅力を際立てせる、纏っているロングスカートとブラウスはまるでドレスのように輝いている。何処かの物語からそのまま抜け出してきた姫君だと言われても何の疑問も持つ事は無いだろう。

 

「え、えっとその……りゅっ龍牙君……私、分かる、かな……?と言っても私も初めてなんだけどえっとその……葉隠 透、だよ……?」

 

不安げな上目遣い、仄かに熱を持ち赤くなる頬、恥ずかしそうにする仕草。それらを目の当たりにして龍牙は驚愕に目を見開くしか出来なかった。そしてなんとか龍牙が絞り出した言葉は―――

 

「―――可憐ってこういう事を言うんだろうなぁ……輝いてる……」

「っ~!!!!」

 

それを聞いた葉隠は思わず、購入したばかりの帽子を大急ぎで被って顔を隠した。普段ならば見えない筈の顔を隠す為だ、何故ならば―――自分で分かる程に嬉しそうに笑ってしまっているのだから。




……やっちまったなぁ……出しちゃった、出しちまったよ!!原作でも出るかもしれない葉隠さんの姿……。絶世の美人さん、そして堀越先生をして作画のハードルが高すぎて書くのが無理だと言われる葉隠さん……だからもう、イメージに合うというか、もう完全にフィーリングに従いました。

―――んで結局どんな姿かって?……シャ、シャルロット・コルデー……。

悪いか好きなんだよシャルロット!!リューキュウにたわわが負けてる?甘いわまだ彼女は成長するから無問題なんだよ!!

……何か、すいません。

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