僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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清純と黒龍の一時

「ごめん、待たせたね葉隠さん」

「ううん全然待ってないから大丈夫だよ」

 

会合の後、約束していた待ち合わせの場所、龍牙の自室には自分を待ってくれていた葉隠の姿があった。待ち合わせていた自分の姿を見ると彼女は花のような笑顔を見せながら自分の到着を祝う。それに釣られるように自然と龍牙の表情も笑顔になった。

 

「悪いね、今日はこのまま帰りながらになっちゃうけど」

「ううんいいの、それだけで十分だし龍牙君これから忙しくなるんでしょ?だったら寧ろ良いのかなぁって言うぐらいだから」

 

龍牙には明日の死穢八斎會への乗り込みが控えている、だからこそ早く寮へと戻って身体を休める必要がある。なので今日はこのまま龍牙の部屋でのデートのような感じになっている。龍牙的にはデートとしての自覚はないかもしれないが、葉隠的にはこれは純然たるデートであると思っているので問題は無いだろう。

 

「まあ今ヴェノムもいるから何とも言えないかもしれないけど、その辺りは勘弁してもらえると嬉しいかな」

「うん事情は分かってるから大丈夫だよ、龍牙君の為だからしょうがないって」

 

ヴェノムの融合についても葉隠は把握しており、その点については致し方ないと思っている。そもそもが龍牙を狙っての事なのだからこの処置はむしろ当然と言える。寧ろ彼女的には部屋の中で二人っきりに近い状態で居られるのは最高の状況に近い、何故ならばここならば勘のいいピクシーボブが唐突に登場して邪魔される事もないからである。ヴェノムに至っても愛しの彼を守って貰っているのだから、感謝はするが邪魔扱いするなんて絶対にない。

 

「まあ俺は邪魔なんてしない、適当に寝てるから用があれば起こせ。それ以外なら邪魔する気はないから安心しろ」

 

彼なりに気を遣っているのかは分からないが、そう言うとヴェノムは引っ込んでしまう。ヴェノム的には龍牙の内部はそれなりに居心地がいいらしく寝るのにもいい環境らしい。本人曰く、ドラグブラッカーともそれなりに仲良くしているらしいのだが……一体体内でどんな風になっているのか激しく気になる所である。兎も角葉隠は思わず全力ガッツポーズを内心で浮かべるのであった。唯一の懸念はヴェノムの存在、だが彼が空気の読める存在で本当に良かった!!と安堵する。

 

「まあ、まずはお茶でも淹れようか。葉隠さんは紅茶、それとも珈琲?」

「えっと紅茶かな」

「分かった」

 

電気ケトルに張ってあったお湯を使用して紅茶を淹れる、これらの茶葉も周りの人達から譲って貰ったものでこれはMt.レディが提携しているメーカーが出しているMt.レディブレンドという茶葉。中身は普通の紅茶である。それを準備している彼を葉隠は見つめつつも改めて、何処か女性っぽい所が多いなぁと思う。それも内装の殆どが龍牙が選んだわけではなく貰い物だからという事に起因するのだが……。

 

「はい。入ったよ」

「有難う」

 

紅茶を受け取りつつも、そのいい香りに癒されつつも今この瞬間に至福の喜びを感じつつも逃す手はないとも思っている。これを機に一気に進展するチャンスだとも思っており、虎視眈々とそのチャンスを窺っている葉隠は何処かピクシーボブめいた積極性が見受けられる。自分も攻めようと覚悟を決めていたりするのだろうか。そんな事を思いつつも彼女は龍牙が淹れてくれた紅茶を楽しんでいると、龍牙はじっと葉隠を見つめていた。誰かに見られたりするという事はそれなりになれている葉隠だが、流石に彼にそこまで見つめられると照れるのか、困ったような笑みを浮かべる。

 

「そんなに見て如何したの龍牙君」

「いや、どのタイミングで言おうかと思ったんだけど……葉隠さん―――透明じゃなくなってるよね」

「うん」

 

そう、彼女の姿はハッキリとみている。紅茶の入ったカップを大事そうに扱っている手も、紅茶を冷ますように息を吹きかける為に少しだけ突き出した唇も、困ったような笑みも全てがハッキリと視認出来ている。個性破壊薬の弾丸を打ち込まれてから既に数日が経過している。天喰も撃ち込まれた翌日には自然治癒で完治していたと言っていた。だが彼女は違うのかと龍牙は心配するが彼女は心配しないで、と言うと目の前で右腕を消して見せた。個性が使えなくなった、という訳ではないようだ。

 

「林間合宿で相澤先生が個性を鍛える為には筋肉を育てるみたいにするって言ってたの覚えてる?」

「そりゃ覚えてるよ。負荷を掛けて筋肉を壊して、その後の超再生で新しい筋肉を作るのと同じように個性も同じようにして鍛える事が出来るって奴でしょ」

「そう。それと同じで私の個性も一度傷ついた、それを修復しようとしてなんか強くなったみたいなの」

 

個性破壊弾は個性因子を傷付けて、一時的に個性を使用不能にする。それを修復する過程で因子がより強固な物になったと病院で言われ、それから葉隠は自らの姿を自由に出せるようになったとの事。部分的に消したり全体を完全に消したりすることも自由自在なのだという。

 

「へぇっ……天喰先輩はそんな事言ってなかったけど、個人差があったりするのかな」

「個性の種類とかで違いがあるのかもしれないね。でも私は凄い良いと思ってるよ、だって結果的にだけど龍牙君は怪我一つしなかったもん。それに……」

 

葉隠は少しだけ、頬を赤く染めながらベットに腰かけていた龍牙の隣に移動して肩をくっつけて彼に頭を預けた。

 

「こうして龍牙君に私を見て貰えるんだから、寧ろ嬉しい位だよ」

「何言ってるの、俺は何時も葉隠さんを見てるつもりだよ」

「えへへっそうだったね、それじゃあこれからはもっと私を見てね♪暫くは龍牙君の前だけにするから」

「いいのかな。なんだか俺だけ独り占めしちゃうみたいじゃないか」

「そう、私を……独り占めにしてね」

 

そう言いながら葉隠は軽く龍牙に抱き付きながら目を真っ直ぐに見つめながらそう言った。赤みを帯びながら何処か恥ずかしさを持ち、満面でありながら悪戯気もあるその表情に思わず龍牙は言葉を失うが、直ぐに笑顔を持ちながら彼女を軽く抱きしめ返してやる。

 

「それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな。それにしても葉隠さんって結構ずるい子だね」

「そうなの、私ってば龍牙君の前だとずるくなっちゃうんだよ。ほらほらもっと私を見てよ~」

「わぁっ~ちょっとくっつくすぎだってば……」

 

そんな風に戯れながら二人はその時間を楽しんでいた。葉隠としては少しだけ攻めきれなかったかな、と思いつつもこの時間に満足していた。何せ―――彼と自分しか知らない大切な秘密が出来たのだから……。

 

『(こういうのをきっと御馳走さんって言うんだろうな……全然うまくないがなんでそういうんだ……今度コングに聞いてみるか)』




葉隠ファン増えろ、後シャルロット・コルデーファンも増えろ。

活動報告にてお知らせがございます、お時間があれば覗いてみてください。

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