僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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龍騎と龍牙

龍騎……!!

 

「ダァァァァッッ!!」

 

「だぁぁぁぁっっ!!」

 

リュウガ……!!

 

 

紅い龍と黒い龍、それらがぶつかり合っている。龍頭のぶつかり合いは互いの咆哮を伴って激突を成しながら大気を震わせる。赤い炎が黒い龍を、黒い炎が赤い龍を焼く。互いの龍頭から炎を吐き出し相手を燃やさんとするが、それも炎が互いを打ち消しあって無効化にされる。ならばと互いの剣がぶつかり合っていく。

 

「やるなぁ流石はリュウガ……!!」

「お前っ……!!」

 

此方を褒めるような口調だが何処か馬鹿にしているような言葉遣いをする紅い龍、龍牙は戦いに集中しながらも目の前の存在に混乱し続けていた。微妙な差異こそあるが目の前の龍は自らの鏡写しのような存在、そんな龍に戸惑いを感じるが攻撃の手を緩める気は微塵もない。

 

「あっちぃっなおい!!今は致命的じゃねぇけど苦手なもんは苦手なんだぞ!!」

「悪いけど今は我慢してくれ……こいつマジで何なんだ……!?」

「ハハハッアハハハハハッ!!!」

 

高らかに笑う赤い龍、狂ったように、心底愉快なように笑う。それらは突如として走り出して襲い掛かってくる、それを受け止めつつ背後に投げ飛ばすが空中で見事なアクロバットな動きを見せつつ着地すると炎を浴びせ掛けてくる、だがこの程度の炎ならば無意味だと言わんばかりに弾き飛ばしてやると、そのまま走り込んできて飛び膝蹴りを放ってくる。しかし龍牙はそれを敢えてよけず、真正面から頭突きで受け止めた挙句、そのまま前方向に跳躍し体重を乗せたドロップキックを放って相手を吹き飛ばした。

 

「まだまだぁっ……!!」

 

赤い龍は全く応えていないのか退く気が一切ない。寧ろさらに気迫が上がって迫ってくる。走り込んでくるそれはドラグセイバーに酷似した剣を振るってくる、それらを龍頭で受け止めつつ自らの剣を突き立てんとする。素早く龍頭で防ぐが防ぎ方が甘い、それを見た龍牙は一歩深く踏み込むと敢えて弾かれるような甘い斬撃を放った。安城それは簡単に防御されるがそれで上体のガードが甘くなる。振り上げた腕の勢いのまま肩でタックルを繰り出す。そしてその勢いで弾かれた自分の剣を身体を回転させて再度握り直すと、そのまま切り上げて赤い龍の胸を深々と切り裂いた。

 

「ギグギャアアア……!!」

「おいリュウガ見ろ、あいつの胸の所」

 

ヴェノムが指さす先には流れ出す血の中にあった文字、赤い龍の胸部に何か文字のような物が刻まれている。数字の羅列と何かの文字、何かを意味指しているのかと僅かながらに疑問に思うのだが……それらは直ぐに氷解した。龍牙ならばすぐにわかるような事だったからである。

 

「あれって……俺、の誕生日……!?」

「あっ?お前のってなんであんなところに……」

『「そうさ、漸く気付いたかな龍牙君」』

 

その時だった。目の前の龍が突然だらんと脱力した。そして静かに立ち上がると動かないまま言葉を語り始める、だが声色は先程の物とはまるで違う。全身がぞわつき恐怖が身体を突き抜けていくような感覚、この声を知っている。忘れたくても忘れられない忌まわしい声、その主は―――自らの個性を捻じ曲げた張本人にして巨悪、オールマイトの宿敵。オール・フォー・ワン、正しくそれだった。

 

「オール・フォー・ワンって言えば……確かオルカが言ってたやべぇヴィランの親玉だろ、今は刑務所じゃねえのか」

「その筈だ、そもそもなんでこいつからオール・フォー・ワンの声がするんだ……」

『「フフフッ……分かる、分かるよ。君はきっと僕の声が聞こえている事に対して疑問と不安を抱いている。だが安心してくれ、これは僕じゃない。この声も事前に吹き込んでおいた声だよ、録声と言ってね。声を刻み込んで好きな時に再生出来る個性だよ」』

 

如何やらこの声自体はオール・フォー・ワンの物ではあるが、事前に用意されていたテープが再生されているような状態らしい。それはそれで奴が脱獄していたり、直接操っている訳ではないとある意味で安心できるが別の意味では安心できない。つまり、目の前のこれはあの巨悪の配下の物という事になる。

 

『「そして君はこうも思っている、何故此処まで自分にそっくりな奴がいるのか……とね。動揺している君が目の浮かぶようだよ、まあ僕にもう目なんてないんだけどねぇ」』

「こいつ……!!」

 

構えを取ろうとするのだが直後に赤い龍も同じように構えを取った。それを見て身体を硬くするが一向に攻撃するそぶりを見せない。それを見て構えを解いてみると同じように構えを解いてしまった。どうやら声が再生されている間はそのように動く気らしい、ならばとそれに乗って声を聞くことにする。

 

『「君は思った事が無いのかな。君の個性の源泉である黒龍はずっと僕の手の中にあった。僕がそれを利用しないとでも思ったのかい?」』

「まさか……お前ぇっ!!!」

 

理解してしまった、理解出来てしまったのだ。龍牙は目の前の存在が何なのか。オール・フォー・ワンがどんな存在なのか、そしてそれが生み出した存在を踏まえて考えれば直ぐに答え何て出てくるではないか。そしてなぜ今まで考えた事が無かったのかとさえ思える。

 

『「黒龍は元々赤い龍だったのさ、だが僕が無理矢理個性の一部から切り取ったせいで変異してしまったのだろうねぇ……まあ大した違いこそないだろうが。それを僕が直々に元の姿の君として対面させてあげたんだ、感謝してくれよ」』

「つまりこいつは……リュウガの本来の姿って事か!?」

『「ンフフフフッ……さしずめ龍騎とでも呼ぶべきかな、僕の最高傑作の脳無ともいうけどね。そう、これこそがハイエンドモデル脳無・龍騎だよ。君に倒せるかな……さあ僕に見せておくれよ、君の可能性という奴を……」』

 

その言葉を皮切りに音声は途切れた、が直後から龍騎と呼ばれた脳無は一気に雰囲気を一変させた。先程までの騒がしさと狂った様子は消え失せてしまった。だがその代わりと言わんばかりに溢れんばかりの殺気を纏いながら、炎を全身から溢れ出させながら、ゆっくりとこちらに迫ってきた。

 

「ヴェノム、全開で行くぞ!!もう炎が苦手だのなんだって言ってる場合じゃない!!」

「だろうな……ったく今度チョコ奢れよ!!」

「マスク!!」

 

ヴェノムが龍牙の全身を包み込む、巨体の姿となった龍牙はヴェノムの身体の上から個性を発動させる。黒い炎が身体を包み込むとリュウガとしての彼がいた。ヴェノムの巨体と龍牙の力が一つになった姿、恐らくこうでもないと目の前の脳無には対抗できないと彼らの本能が叫んだのだろう。更なる力を発揮する黒龍に迫る龍騎、互いに上げた咆哮は新たな戦いの幕開けの鐘の音となった。




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