僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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龍騎と龍牙、IFとIF

「だああぁぁぁぁっっ!!」

 

ヴェノムと融合した姿の上から個性を発動させている龍牙、普段ではありえない巨体からのパワーは龍騎を押すに値する程だが、龍騎も先程とは全く違っている。嘗て保須市で脳無とは戦った事があるがあれとは全く違ったようで酷く静かで不気味な唸り声を上げ続ける。そして次第に振るわれる力が次第に増していく、正しく本気を出し始めたと言わんばかりの力を発揮し始めている。ぶつかり合いを征したが、再度向かってくるそれを迎え撃つ、が―――今度の龍頭での攻撃はぶつかり合った瞬間に凄まじい衝撃波が巻き起こった。衝撃や振動などに耐性にある龍牙はそれに耐える事に成功して思いっきり殴り飛ばすのだが、今度は龍騎は宙に浮きながら自分を見下ろしている。

 

「おいおいなんだあれ、すげぇパンチかと思ったら今度は浮きやがったぞ」

「妙な衝撃波が巻き起こってやがったな……あの空中浮遊もその応用だろうな」

 

空中に浮き続けている龍騎、それは一気に反転すると加速し真上を取ると襲い掛かってくる。そして再度、腕を振り被ってくる。回避しようとするが自分にロックオンしているミサイルかと言いたくレベルでホーミングを行ってくる。避けるのは無意味と悟ると、ヴェノムもその意思を把握したのか右腕を肥大化させる。

 

「腕部集中……ドラゴン・ストライクゥ!!!」

 

巨大化した龍頭での渾身の一撃が放たれ、それと龍騎の一撃がぶつかり合う。先程と同じように凄まじい衝撃を纏いながらの攻撃だが先程とは全く違う点があった。重さだ、龍騎の一撃が凄まじく重くなっている。これは単純に攻撃の重さだという話ではない、龍騎その物の重さが激増している。

 

「こいつなんださっきから可笑しいだろ!?個性が幾つかあるってのか!?」

「正しくそうだろうなぁ……!」

 

なんとか重々しい一撃を反らしてそれを地面に突き刺させる、一気に増加した重量の影響か地面に腕が突き刺さっているのでそこへ蹴りを入れるのだが酷く重くて蹴り飛ばせない。蹴った後は素早く後ろに飛んで警戒する、これがオール・フォー・ワンが最高傑作と誇る存在、ハイエンドモデル脳無・龍騎。自分の個性に加えて他の個性も加えられている。とんでもなく厄介な存在だ。

 

『グオオオォォォォッッ!!!』

「お、おいなんか出たぞおい……」

「赤いドラグブラッカー……!?」

 

龍騎の足元から赤い影が現れる、それは赤い龍だった。ドラグブラッカーを赤くしたような姿の龍が静かに龍騎を守るかのようにとぐろを巻いている。赤いので言うなればドラグレッダーという所だろうか。すると龍騎は出現させたドラグレッダーを掴むとそのまま自らの身体に押し当て始めたのだ。赤い龍はそのまま吸収されるかのように消えていってしまった。

 

「あいつ、今度は何をする気だ……!?」

 

そんな不安そうな声に対して答えを見せてやると言わんばかりに龍騎は爆炎の火柱を纏った。そしてその爆炎の中ではすさまじい力の波動を放ちながら新たな姿へと自らを昇華させてしまった。炎が収まったそこにあったのは、龍騎であって龍騎ではない何かだった。肥大化した巨大な両腕に巨大な爪、腰部から突き出すかのように伸びた長い尾。背中から突き破るように出現した巨大な翼、そして胸にはドラグレッダーの頭部がそのまま収まっていた。

 

「何だあれ……ゲテモノにも程があるだろ……」

 

その力の凄さは感じるが、あんまりな姿に思わず引いてしまうヴェノム。だが龍牙は違った、あれは一度だけ考えた自分の到達点でもあるのだと理解した。

 

「ドラグブラッカーとどうやったら完璧なシンクロをするか、という前に俺は完全にドラグブラッカーの力を掌握すればいいんじゃないかって考えはしてた、でもそれはそれで酷いって感じがしたから俺はしなかった……あいつはそれをした結果って訳か……!!」

 

あらゆる意味で自分のIFなのかと思わず舌打ちをしてしまう。だがそんな思考よりも早く、龍騎は目の前まで迫っていた。認識できなかった、それほどまでの加速力をもってそれはニヤリと笑ってから巨大で鋭利な爪で―――リュウガの身体を貫いた。

 

「がぁっ……!!?ぁぁぁっ……!!」

 

龍騎の巨大な腕が確かに龍牙の腹部を貫いていた。鋭利な爪と尋常ではない力が鎧を突き破り、ヴェノムごと龍牙を貫いてしまった。味わった事の無い激痛の中に一瞬意識がブレてしまう龍牙、だがその傷をヴェノムは身体を上手く操作することで修復し、なんとか致命傷を避ける。

 

「―――っの野郎、舐めやがってぇっ!!!」

 

龍牙の肩の後ろから新たな腕が飛び出し、突き刺さっている腕を掴みかかる。だが龍騎はそれを見て龍牙をあっさりと捨て去るように振り払ってしまう。数度地面を転がり止まった龍牙は腹部を貫かれたという事実をマジマジと認識させられながらも、冷静さを保とうとするが全く落ち着けてない。

 

「落ち着けリュウガ、俺が融合している間なら俺が怪我は治せる。腹の傷も塞がってんだろ!!」

「ぐっ……!」

 

それを聞いて腹部を触りながら立ち上がる、確かに既に怪我は癒えて塞がっている。これも融合の利点だ、それを活かして何とか戦おうと思った直後であった。鋭利な刃のような尾が再度、腹部を貫いた。

 

「がぁぁっ……舐める、ぁぁぁぁっっ!!!」

 

再び訪れる激痛を気合で封じ込めながら龍牙はその尾をヴェノムの腕でガッチリと掴み、剣で尾を斬り付ける。流石に斬り付けられれば痛がるのか尾は引いていくが、今度は本体その物が回転しながら突撃してきた。回転しながらの突撃は易々と龍牙の身体を突き飛ばし空中へと舞わせる。そして―――

 

「グオオオオォォォォッ……」

 

静かな赤い龍が今まで閉じていた咢を開け、そこから収束されたレーザーのような熱線を龍牙へと浴びせ掛けた。咄嗟に盾を出現させて身を守るが、それは盾を一瞬で融かし尽くし龍牙の身体を焼いていく。龍牙の身体だけを焼いていく。

 

「がぁぁぁああああああ!!!!!!??」

『馬鹿お前、なんで俺を抑え込んだ!!?』

 

そう、龍牙は咄嗟にヴェノムを抑え付け身体の内部へとヴェノムを飲み込んだ。通常の龍牙となっている彼は自分だけ獄炎の炎に身を焼かれている。盾が融けようとしていた僅かな間に察したのである、これは幾ら自分であろうとも大きなダメージを受ける。それならば下手をすればヴェノムはとんでもない事になると彼を飲み込んで自らだけで炎を受けた。結果としてヴェノムは無傷で済んでいる、だが龍牙は地獄の炎で身を焼かれ続けていた。

 

『~……!!くそがぁっ!!』

 

ヴェノムは一瞬だけ、龍牙の身体を乗っ取って近場に合った水道を剣を投げて破壊して水を辺り一面に噴出させる。それによって龍牙の身体の炎は消え始めていく、炎がなくなった事でヴェノムも融合を開始する。幸いな事に鎧が防御壁となって火傷の傷こそないが龍牙には凄まじいダメージが蓄積している。そしてまだ龍騎は此方に狙いを定めているかのように視線を向け続けている。

 

『おいリュウガ、お前……まだ動けるのか……!?』

「―――……ぁぁ、まだ、行ける、さ……ヴェノム、悪いけど……熱いかもしれないけど、俺に任せてくれないか……?」

 

弱弱しい言葉だが、そこには強固な意志があった。龍牙はまだ戦える、まだ立ち上がれるのだと。ヴェノムは静かに言う。

 

『俺は自由が好きだ、だからお前も好きにしろ。俺も好きにしてお前に従う』

「……有難う……」

 

龍騎が龍と一体化した、いやその力を完全に我がものとして全てを得たならば―――自分は共に歩み先に進むとしよう。




龍騎の個性。龍騎、杭打ち、重量倍加。


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