僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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更に向こうへいく黒龍

「ァァァッッッ……」

 

静かな唸り声を上げながら一歩一歩と迫ってくる龍騎。目指しているのは倒れこんで動かない龍牙、自らの炎を受けて酷いダメージを受けている。最早炎の放射攻撃ではなく熱線の域にまで高められている一撃は幾ら火炎耐性がある龍牙とは言え大ダメージは避けられなかった。今こそとどめを刺してやると言わんばかりに接近してくる、剣を差し向けて突き刺さんとする時だった。

 

ドクンッ……ドクンッ……。

 

周囲に木霊するほどの大きな鼓動音がし始めた。龍騎も一瞬だけ何事かと視線を彷徨わせたが直ぐにその中心地を割り出した。龍牙だ、目の前で倒れこんでいる男からその鼓動が聞こえているのだと理解する。まだ死んではいない、まだこいつは戦う気でいるんだと龍騎は再認識する。そして直ぐにとどめを刺すべきだと爪を突き立てる―――がそれをギリギリの所で止めた牙があった。

 

『グォォォォォォッ!!!』

「―――っ!!!」

 

ドラグブラッカー、龍牙の力の源流でありもう一人の自分と言い換えても構わない存在が迫っていた爪を受け止めたのだ。その強靭な顎と鋭い牙で噛み砕くと直後に龍騎目掛けて黒炎の火球をぶつける。超至近距離からの火球は幾ら全力を出した龍騎でも数メートルほど吹き飛ばされてしまう。大したダメージにはならない、だがそれでいい。黒龍はその結果に満足したように龍牙を守るように蜷局を巻いていく、そして―――龍騎が龍を食らったのと同じような巨大な火柱が空に向けて伸びた。

 

天高く聳える黒い炎の中で倒れこんでいた龍牙はゆっくりと立ち上がりながら、自らを取り囲むように蜷局を巻く龍を見て少しだけ微笑んだ。何も言わずとも分かっている、全力を出すぞと語りかけてくる強い意志がある。それを受け取りながら龍牙は黒龍と意志を一つにする、元々は一つだった意志を一つに統合する。それと同時に二つの肉体を一つにまとめる。

 

「―――さあ、行くぞドラグブラッカー。更に向こうへ―――ビヨンド・ザ・リュウガ……!!」

『グォォオオオオオオオオオオ!!!』

 

高らかと天へと向けられた咆哮と共に火柱が四散する。散った炎は自らの意思を持っているかのように空中で舞い踊ると無数の流れ星のようになりながら龍牙へと降り注ぐかのように融合していく。それが成すのは龍牙の到達点、見据えたいた景色、本当の自分、それらを超えた龍牙の誕生。

 

真の意味で一つになった事を象徴するかのように胸部には黒龍の頭部を模した装甲を身に纏い、背中へと伸びる黒と金の翼は向こう側へと辿り着く為に広げた彼の翼。右腕に合った龍頭は形を変え手甲のようになったが、鋭い眼差しは更に磨きを上げた。全身に走る黄金の光は彼が得ただろう光を現す、闇の炎の龍は到達した。様々な地獄を経験しながらも生き抜いた力を持って、向こう側へと到達した。

 

「リュウガお前……これがお前の本当の姿か?」

 

龍牙の変化は融合しているヴェノムにも感じ取れた。先程とはまるで別人、内包している力も比べ物にならない、そして常に感じていたドラグブラッカーの気配がない、いや感じてはいるが完全に龍牙に溶け込んでいるかのような……調和を感じさせる、龍牙の意思であってそれはドラグブラッカーの意思でもある。不思議な感覚がヴェノムにも理解出来た。

 

「来い、龍騎」

 

構えを取りながら右腕の龍頭を向けて戦闘態勢を取る、すると龍騎は衝撃を後方へと飛ばす事で一気に加速して迫ってくる。同時に爪と尾の同時の連撃が龍牙を再び貫かんと迫ってくる、先程は意図も容易く貫けたが―――今度はそれを同時に発せられた衝撃波も含めて真正面から受け止める。それを見て龍騎は動揺したように動きを止めた。

 

「如何だよ龍騎、これで同じ位置に立てたな……いや、お前は唯食らっただけ。それは唯の足し算だ」

 

力を強める、握り込む、爪と尾を。

 

「だが俺は違う。俺とドラグブラッカー、その両方を掛け合わせる。今まで離れ離れだったものを本当の意味で一つに統合した事で得られる力」

 

罅が入る、自らの身体を貫いた強靭な爪と尾が。

 

「俺達が積み重ねてきた10年間は―――簡単に超えられるほど安くはない」

 

遂に龍騎の爪と尾が砕け散った。強靭な筈のそれが砕け散った事で龍騎は完全に動揺して隙を見せた、その隙を見逃がさない。地面に龍騎を抑えつけように叩きつけながら、そのまま背中に足を置き力強く踏みつけながら翼に手を掛けた。そしてそのまま力任せに翼を千切るようにもぎ取った。

 

「っ―――!!!」

 

激痛に悶える龍騎、叫び声を上げるが龍牙は手を一切緩めない。もう一方の翼にも手を伸ばし、それを引き千切った。自分の痛みの復讐だと言わんばかりの攻撃、それを終えると龍騎を持ち上げその顎へとアッパーを決めて高々と打ち上げる。そしてダメージの影響か自由落下してくるそれに対した再度、龍頭を構える。黒炎を纏いながら打ち放たれる。

 

ド ラ ゴ ン ス ト ー ム イ ン パ ク ト

 

DRAGON STORM IMPACT(ドラゴンストームインパクト)!!!

 

黒炎の嵐を纏った龍頭が龍騎の顔面を叩き潰しながら炸裂する、先程龍牙が浴びた熱線と並び立つ程の火力を発揮しながら炸裂した。黒炎に焼かれながらも未だに龍騎は健在なのか苦しみながらも徐々に元通りに復元するかのように姿を取り直していく。回復系の個性まで備わっているのだろうか、ならば解決策は至極単純、回復しきれない程の大ダメージを与えればいいだけの事。

 

『グオオオオオオオォォォォォッッッ!!!!』

 

猛々しい雄叫びと共に龍牙の胸の龍が叫びをあげる。そこからは一体の龍が飛び出した、強大化し龍牙と共に時を駆けて経た力を全て身に体現した黒龍、ブラックドラグランザーが龍牙の元へと馳せ参じたのだ。龍牙はその姿を見て少しだけ微笑むとその背中に飛び乗った。黒龍は叫ぶと唸りを上げながら再生し始めている龍騎へと突進していく。

 

直後、ドラグランザーの身体の内部から車輪が飛び出した。同時に器用に身体を折りたたむとそのままバイクのような形態になりながら地面へと降りながら途轍もない速度を出しながら龍騎へと突貫していく。自ら黒炎を纏いながらも黒炎火球を吐き続け、龍騎の逃げ場を完全に立った状態でそのまま突進した。凄まじい爆発音と共に龍騎は吹き飛ばされ、天を舞った後に地面へと激突した。そして―――龍騎の姿は戦い始める前のフードの男の状態へと巻き戻ってしまった。如何やらもう戦える状態ではなくなった様子。

 

「……やったっ―――」

 

それを見届けた龍牙はそのままぐったりとドラグランザーに身を委ねるように倒れこんだ。それと連動するようにドラグランザーも倒れこむとそのまま消えていき、後には個性が解除された龍牙だけが残された。




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