僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
死穢八斎會、個性を壊す薬という現代社会の構造そのものを破壊しかねない末恐ろしい企てとその手段を確立しようとしている団体へのヒーローと警察の殴り込み。それは壮絶かつ凄まじいものとなった、双方ともに大きなダメージを負った。最終的には―――
「目の前の小さな女の子一人救えないで……みんなを助けるヒーローにぃ……!!成れるかよぉぉお!!!!」
個性破壊薬の中心となっている少女、壊理を助け出した緑谷が彼女の個性、巻き戻しで壊れていく身体を元に戻すのを利用し、全力で大怪我をし続けるという常軌を逸した方法で全力を出して戦闘を開始。治崎との壮絶な戦闘を征する形で彼は勝利を収めることに成功した。ヒーロー側も怪我人を多く出す結果となったが、なんとか死穢八斎會の全てを捕縛する事に成功する。
その一方で―――巨悪・オール・フォー・ワンが生み出した脳無の最高傑作個体、ハイエンドモデルと称される龍騎と激突した龍牙。死闘を経て龍騎を完全に打倒に成功した後に全てを出し切ったかのように倒れ伏した。そんな彼も動けるヒーローや警官らによる周辺の被害状況確認をする際に倒れこんでいる姿を確認され、保護の後に病院へと搬送された。同時に龍騎も確保され、ヴェノムの証言で脳無だと判明したのちに然るべき場所へと連行された。
「よぉっ緑谷」
「りゅっ龍牙君!?」
死穢八斎會との一件で検査入院などで一日入院していた緑谷、しかし問題もなくこれから学校に戻ろうかという時の事、相澤やリカバリーガールと少しだけ話をしている時に思わず人物に声を掛けられた。そう、龍牙である。龍牙の一件はヴェノムを通じて全員に伝わっており、たった一人でオール・フォー・ワンが生み出した怪物と戦っていたという事実に驚いた。そして暫くは入院するだろうとばかり思っていたのだが……そんな彼が元気そうに姿を見せれば流石に驚くという物だろう。
「えっだって火傷とか骨が折れてたりしてるからしばらく入院するって聞いたけどもう大丈夫なの!!?」
「問題ない。火傷はリカバリーガールの治癒で、骨折やらはヴェノムが何とかしてくれた」
身体の古傷はそのままだけどな、とジョークを交えているが龍牙はマジでもう退院なのである。ヴェノムが龍騎との戦いで負ったダメージは出来る限り治してくれているが、それでも火傷などは完璧に治せなかった。炎が弱点であるように火傷には深くまでは手を出せないとの事。が、そんな事よりも龍牙は緑谷の肩に手を置いて言う。
「……ナイトアイの事は聞いた」
「―――っ」
サー・ナイトアイ。オールマイトの元サイドキックだったヒーロー、今回の死穢八斎會の事に真っ先に気付いて導いてくれた彼は……もういない。龍牙が龍騎と戦闘している間に治崎との戦闘で左腕切断、腹部に大穴を開けられる重症を負ってしまった。そして戦闘終了後、病院へと緊急搬送されたが……手の施しようがない状況で助ける事が出来ず……最後にはオールマイトと緑谷、そして自身の最大の誇りであったミリオと最後の一時を過ごした後にこの世を去ってしまった。
「僕は……僕は……」
拳を力の限りで握り込む、彼から漏れる言葉は悔しさと悲しみで満ちている。一体どれほどまでに悔しい事だろうか、それを一番実感しているのは彼かもしれない。頭の中にはIFが無数に浮かび上がってくる、それの一つでも選択すれば何とかなったのではないか……と考えてしまう、そんな友人に龍牙は軽くデコピンをする。
「痛っ!?」
その痛みで我に返った緑谷が見たのは自分を真っ直ぐ見据えてくる龍牙の姿だった。
「緑谷、IFなんて考えるだけ無駄だ。もしとかたらとかればとか……なんてそんな言葉で自分を縛るな。お前はやれる限りを尽くした、その結果助けたかった女の子を助けられたんだ。それでいいんだよ」
「龍牙、君……」
「過去は過去、今は今だ。何かを悔いるよりも先にやるべきなのはこれから先にそれをどう活かすか、だ。俺はそう思う。俺だってそうやって今を生きてるんだ」
「そ、それを言うのはずるくない……?」
過去の出来事で大きな傷を負って、それを根津という偉大な存在によって助けられ、その姿を見て自分も改めてヒーローになりたいと願っている龍牙にそんな事を言われたら自分だってしっかりしなければいけない気がしてならない。
「うん、ちょっとだけ元気出た。帰る前に最後に先輩に挨拶してくるよ」
「おう」
そんな風に少しだけ元気を出した友人を見送った龍牙、そんな彼に対してリカバリーガールは何処か生暖かく微笑ましい物を見ているような視線を送っていた。それに気づいたのか振り向いて此方を見て笑っているのを見て不思議そうに首を傾げる。
「如何したの、じっと見て」
「いやね、お前さんも立派になったねぇと思ってさ……こりゃ何としてでも龍牙が嫁さんを見つけるまでは死ねないねぇ」
「いきなり何を言ってるんだよ……というか、師匠と校長にもいったけど俺って結婚できないと思うよ。そもそも交際すら分からないのに」
「大丈夫だよ、アンタは案外モテるからねぇ」
「いやねぇよばっちゃん」
と否定する龍牙と女の勘で確実に龍牙は結婚すると豪語するリカバリーガール、孫と祖母の会話を聞きつつも一緒に居た相澤は、龍牙の教育方針の事での相談でどうやったらうまく龍牙に恋愛をさせられないかという相談を受けた。ハッキリ言って専門外なのでミッドナイトにでも聞いてくれと投げた。
『しかしなぜ態々俺に、こういうのは出来ないと分かるでしょう』
『いやさ……出来るだけ多くの人の意見が欲しいんだよね……現状、龍牙は二人の女性の心を射止めちゃってるから……しかもそれに全く気付いてない』
『……それはまた』
『友好的な好意と恋愛的な好意との区別と理解が出来てなくて……これから如何した物かと悩んでるのさ』
と言う事を思い出す。男手で育ててきたツケが回ってきたと根津は頭を抱えてたが、相澤的には何も言えない。本当に何も言う事が無い。
「あっ!!むふっ~♪」
「もう何も言う事は無いです」
「慣れきってるね、龍牙」
と龍牙を見つけたねじれが即座に龍牙を確保して頭を撫でるという事が起きているのを見て、確かにリカバリーガールの言う通り龍牙はモテるのだろう。まああれは何方かといったら愛玩目的だろうが……。
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