僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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心配を掛けた黒龍

退院直後、緑谷は警察からの聴取があったためにそのまま警察署へ。龍牙は一旦麗日や蛙吹と合流し、リューキュウの事務所へ。そこで手続きなどを済ませてから帰宅という事になったので結局寮へと戻ってこれたのは夜へとなってしまっていた。

 

「龍牙君、一人で凄い事になってたもんね。凄い先輩が心配してた」

「事務所に戻ってから何てずっとだったものね」

「あれはあれでもう日常の一ページと化しててなんか俺、軽く安心してたよ。いやそれはそれで如何かと思うんだけどさ」

 

リューキュウの事務所で処理などの為に手続きをしていたが、龍牙はたった一人で脳無の最上位個体と言っても過言ではない者と戦っていたという事実を皆が知った。龍牙の疲弊具合と周囲の荒れようとヴェノムからの話で途轍もない死闘であった事は確実だった。故か龍牙はリューキュウの命令でねじれの傍に居ることを言明された上で拘束に等しい抱擁をされたままで手続きをする羽目になった。それについてはもう何も言えなくなっている自分が完全に慣れきってしまっている事に呆れつつ、慣れている事が異常だと思い直すのであった。

 

「龍牙君、本当に身体とか大丈夫なの?」

「話聞いて俺マジでビビったぞ!!USJとか林間合宿でいたあいつの一番やべぇ奴と戦ったんだろ!?」

「本当に大丈夫だ。まあまた古傷増えたけどな」

 

龍牙にとってはもうその程度の認識になっている、既に勝利した戦いを何時までも引きずるのもおかしな話だ。勝利出来たのだからもういい、そのような事態にもう一度遭遇した時の為にもっと自分は力を付けて今度は捻じ伏せてやると力強く笑うと切島は漢らしいな!!と笑って自分も頑張る!!と気合を入れ直す、そんな会話を繰り広げた後に寮へと足を踏み入れると―――

 

「み、皆が帰って来たぁ!!」

 

とクラスメイト達が凄い勢いで迫ってきて自分達を取り囲んでいく。今回の一件はニュースでも大きく取り上げられており皆それを見て心配にしてくれていたらしい。

 

「ま、まあ兎に角疲れてるだろ!?ガトーショコラ作ったから喰ってくれ!!甘いものは疲れに効くぞ!!ガトーショコラお食べ!!!」

「モガゴガァッ!?お、押し込むな砂藤!?」

「龍牙お前ダチの俺達を心配させんじゃねぇよぉ!!」

「そうだぞこの野郎が!!バツとしてお前に貸したエロ本返せ!!」

「ちょっと待て峰田、俺お前からそんなもん借りてないぞ。押し付けようとしたけど結果的に借りたの上鳴だろ」

「あっそっか、つう訳で上鳴返せ!!」

「なんでだよまだいいじゃねぇか!!」

 

そんな風に騒がしくも賑やかな皆のやり取りに龍牙はこれにも日常を感じる、こんな賑やかで楽しいのは今までの人生では中々味わえなかった。ミッドナイトやMt.レディ、リカバリーガールと過ごすのとも違う。根津やギャングオルカと共に食事を取る一時とも違う何かを感じずにはいられない。本当に温かい、温かくて心地が良い。

 

「うわぁぁあん龍牙君心配してたんだよぉ~!!ヤクザとは別のと戦ったってニュースにあって本当に心配だったんだからぁ!!」

 

と手を握りしめてくる葉隠の言葉にも龍牙は少し反応する、脳無の事は多少なりともボカされて流されていたらしい。死穢八斎會との関りが不明な謎のヴィランと戦闘しそれらを確保したと流れているらしい。

 

「龍牙、死闘だったのか」

「ああ死闘だったな。古傷がまた増えた」

 

常闇はその言葉に龍牙の戦いの苦労を読み取り、ポンと肩を叩いた。

 

「き、傷ってプールで見せて貰ったあれか?あれみたいなのが増えたのか!?」

「まあな。腹を二回ぐらいぶち抜かれたから」

『ぶち抜かれたぁ!!?』

「ちょっと龍牙君それどういう事!!?死闘だったって聞いたけどそんな凄い大怪我だって聞いてないけど僕!!?」

「ウチも聞いてないよ!!?」

「私も聞いてないわよ龍牙ちゃん……!?」

「いや、聞かれなかったし」

『いや言えよそこは!!!』

 

ヴェノムのお陰で即座に傷自体は塞がっていたし入院時にはそこの処置はされなかったので、あまり知られなかった事実。そんな大怪我ならば入院しなくて大丈夫なのかという軽い大騒ぎになったのだが、龍牙が無造作に腹部を見せて大丈夫だとアピールすると皆は胸を撫で下ろすのだが、また一つ龍牙の身体がデコボコな身体になった時だった。そしてそんな中、葉隠は龍牙に近づいて

 

「龍牙君……後で話あるから部屋に行くね、いいよね」

「あっはい、大丈夫です」

 

不思議と威圧感のある彼女の問いかけに何も言えず、龍牙は唯々受け入れるしかなかった。前にも経験がある、これは服なんかどうでもいい、と言った時に凄まじい気迫を見せたミッドナイトとMt.レディと似たような物だと理解して素直に従う。何やら逆らってはいけない何かを感じる、その後は飯田の計らいで一人の時間を作ってあげようという事で各自が自室へと戻った。

 

「はぁっ……何か色々あったな……」

 

大きなソファチェアに背中を預けながら振り返る。自らの個性のオリジンとも言える存在と激突したり、それに腹を貫かれたり、自分の全てを完全に昇華させた形態へとなる事が出来たりと……本当に色々あった。今の自分は新しいステップへと確実に足を踏み入れている、これからそれらを煮詰めていかなければとそう思う中で扉がノックされた。立ち上がって扉をそっと上げるとそこには葉隠がいた。先程の事を思い出しつつ中へと迎え入れ、扉を閉めると葉隠は自らの個性を解除して姿を露わにした。そして龍牙は言葉を失った。

 

「本当に、本当に心配したんだよぉ龍牙君……」

 

そこには大粒の涙を流しそうになっている彼女の姿があった、顔はくしゃくしゃに歪んで彼女本来の美貌を歪めている。頻りに上げる嗚咽も少しずつ大きくなっている。

 

「龍牙君なら、大丈夫って思ってたけどそんな大怪我までしたなんて私知らなかった……能天気に龍牙君なら大丈夫って思ってたのよ私……でも全然大丈夫なんかじゃない、龍牙君は背負いすぎだよぉ……!!」

 

遂に決壊した涙を流しながら葉隠は怒っていた。終わったのだからもういい、のではないのだ。既に起こった事実はそんな簡単に済ませていい筈の事ではない。愛しの彼がそれほどまでの戦いをした、そして腹部に傷痕が残る程の大怪我をした。それが重要なのだ。堪らなくなった彼女はそのまま龍牙に抱き付くのだが勢い余って彼を押し倒した。床に転がりながらも必死に彼の存在を確かめるように力一杯に抱きしめる。

 

「龍牙君に何かあったら私、私……もうどうにかなっちゃうよぉっ……だから、だからもっと自分を大切にして……」

「葉隠さん……」

「また一緒にご飯食べたり一緒に出掛けたいの……だから、もっともっと……」

 

昂っていく感情を纏めきれずに言葉も出ない、唯々声と涙が溢れてしまう収拾が付かなくなっていく。そんな彼女に龍牙はむしろ能天気だったのは自分だったと思いつつ彼女をそっと抱きしめる。優しく頭を撫でながらなだめるように。

 

「……ごめんね葉隠さん、俺にとっても不意な遭遇だったんだ。でもあんな簡単に言うなんていけなかった、ごめんね。それと約束するから大丈夫、俺はちゃんと戻ってくるって」

「ホント……?」

 

涙目になりながら縋るような瞳を向ける彼女に龍牙は笑いながら頷いた。彼女の涙に誓おう、もうこの涙を流させてはいけない、だからもう彼女を悲しませない。

 

「じゃあ今日はもうずっとこうしてて……私を心配させた罰」

「君が望むなら」

 

そのまま龍牙は葉隠を抱きしめ続けていた、彼女が満足するまでずっと。この日から二人の心の距離は今までよりも近くなった、のかもしれない。

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