僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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天才と再会する黒龍

文化祭に向けての準備を行っている際の土曜日、その日は死穢八斎會との死闘の末に完成形である個性破壊弾を撃ち込まれ個性がなくなってしまったミリオがその中心人物的な少女だった壊理ちゃんを連れて雄英へとやって来ていた。話を聞くと緑谷が相澤に彼女を文化祭に招待出来ないかと話したところ、来る事になったとの事。今日は本番の文化祭前の見学という事との事で、緑谷もそれに付き添って行った。そんな時の事だった。

 

「よぉっ龍牙、久しぶり」

「戦兎さん!?」

 

寮へと自分を訪ねてきてお客さんが外にいるという事で足を運んでみると、そこにはなんと夏休みにI・アイランドでお世話になった戦兎の姿がそこにはあった。突然の来訪に驚きつつも駆け寄ると戦兎は頭を撫でながらも少しだけ笑いながら言う。

 

「おっこの前会った時より背が数センチ伸びてるな、やっぱりこの時期の子は良く伸びるなぁ」

「そうですかね」

「この前は187センチだったのに今や190位だな」

 

何処か親戚のおじさん的な言葉を言いながらも成長を喜んでいる戦兎に少しだけ気恥ずかし気に微笑む龍牙。まさかの再会に龍牙としても嬉しさを感じずにいられない、のだがそもそもなぜ戦兎が此処にいるのか良く分からなかった。天っ才物理学者である戦兎の活動拠点は基本的にI・アイランドで滅多な事では島外には出ないと聞いていたのに今こうして雄英に居るのは色々と解せない。

 

「いや日本で野暮用がってな」

「野暮用、ですか」

「本当に野暮な用事だよ……ったく今更過ぎんだよ……ったくあの馬鹿が」

 

舌打ち混じりに戦兎は苦虫を嚙み潰したような顔を作ってしまう、良く分からないが戦兎としても来ることは本意ではないのかもしれない。だが行くべきだろうと総合的に考えた末の結果として島を出たのだろう。と自分の顔を見られている事に気付いたのか咳払いをしつつも話を変える。

 

「まあそんなこんなで日本に来ちゃった訳だけどさ、そろそろ文化祭だって言うから俺も先生から色々と協力の要請が来たからそれについては快諾したんだ。暫くは雄英で世話になりながら文化祭を楽しませて貰うつもりだ」

「根津校長に、ですか?」

「ああ」

 

龍牙には詳しく話せないのだが、今回の文化祭はかなり際どい位置にある。警察のトップから文化祭は自粛するべきだという話が来ていた。また雄英が揺れるようなリスクは避け、ヴィランに隙を見せないのがベストだと。だがそれでも根津は子供達に暗い未来を見せられないと開催へと踏み切った。その上でセキュリティの強化、誤報であっても警報が鳴った時点での中止と避難が絶対的な条件とされて開催が許可された。

 

戦兎が日本に来た一つの理由が根津から直接セキュリティ強化の協力願いが飛んできたから、恩師の為ならばと戦兎は寧ろこちらをメインに据えてやって来た。そして他の理由は―――

 

「こいつを渡しに来たんだよ」

 

そう言いながら懐からある物を取り出してそれを龍牙へと差し出す。それは即座に戦兎の手から飛び立って龍牙の頭の上に飛び乗って暢気な欠伸を上げながら特徴的な音をかき鳴らした。そこへミスコンへの出場手続きを終えて戻ってきた葉隠がその姿を見て声を上げた。

 

「あっ!!ドラゴン君だ!!」

 

そう、かつて戦兎が龍牙専用のサポートアイテムとして贈呈した変身アイテムとも言うべき存在のドラゴン。正式名称をブラック・クローズドラゴンというらしい。I・アイランドでの事件では龍牙の力を存分に発揮する手伝いをしたのだが余りの龍牙の個性出力に耐えきれずに壊れてしまったものが漸く調整と修理が終わったのである。

 

「いやぁ苦労したぜ、だってあの時壊れた原因が想定出力を超えてだからさ単純に強度とデータの修正を地道に重ねて行くしかないからマジで大変だったわ。加えて詳しいデータが無いから今現在の個性出力データが無いから、どの程度まで設定すべきか全然わからねぇから兎に角頑張ったわ」

「なんか、ご迷惑かけたみたいですいませんでした……」

「何、なんだかんだで楽しい毎日だったから気にしてねぇよ。それに今、ドラゴンが龍牙に触れてるのも触れる事で個性出力を測ってるのも兼ねてるから」

 

唯々以前のように欠伸をしているだけではなく、確りと龍牙のデータを取っているとの事。出なくても今ここに戦兎と龍牙がいるのだからすぐにデータの修正は間に合うとの事。

 

「後、葉隠ちゃんお久」

「はい、お久しぶりです!!メリッサさんはお元気ですか?」

「元気も元気だよ。メリッサも雄英の文化祭には来るはずだから当日には会えるだろ」

「わぁっ楽しみです!!」

 

まさかメリッサまでこの文化祭に来る事になっているなんて思いもしなかった、これは想像以上に文化祭では気合を入れて行かなければならないのかもしれない。そんな龍牙に戦兎は更なるものを差し出してくる。一つは自分の個性の成分が内部に封じ込まれているBRフルボトル、そしてもう一方は……戦兎がビルドへと変身する為に使用するベルトと酷似した物。

 

「これって、戦兎さんが使ってる……」

「そ、ビルドドライバー。ドラゴンはそれにセットして使うようにしてくれ、ドライバーがドラゴンの補助をしてくれてお前さんの力をこれまで以上に受け止めてくれるはずだから」

 

試しに龍牙は腰に押し当ててみると腰にベストフィットするようにベルトが巻き付いた、それにトキメキを覚えつつも素直に龍牙は感謝を述べる。実はビルドの変身を見ていいなぁと内心で思っていた龍牙であった。

 

「まあ兎に角今はドラゴンにお前さんのデータを取らせてやってくれ、後日俺の所に顔出してくれれば完璧に調整してやるから」

「分かりました、んで戦兎さんはこの後は?」

「あ~……そうだな、先生に顔出してくるわ」

 

そう言って戦兎はひらひらと手を振りながらそのまま去っていく、そんな姿を龍牙と葉隠は見送った。そして頭の上で昼寝を始めたドラゴンに本当にデータを取っているのかと小言も漏らす。そんな二人を背中で感じつつも戦兎は携帯に入っているメールの事を考えていた。

 

「……今更なんだってんだ」

 

忌々しげに吐き捨てると溜息を吐きながら校舎へと歩き出していく。この雄英に居ると根津と共に一人のヒーローの事が脳裏を過って致し方ない。その一人は戦兎にとっては嘗ての相棒であると同時にもう終わった過去であり、出来る事ならばもう関わりたくないと思っている。

 

『戦兎、もう一度会う事は出来ないか』

「……誰が会うかよ、もう終わってんだよ俺とお前は―――馬鹿ミルコ」




という訳で、番外編から戦兎さんが参戦。まあ本編で出す予定ではあったんですが。これからはちょいちょい手が込んだ文章が出るかも……ああ、面倒くさい。まあちゃんとやりますけど。

それとミルコさん、雄英じゃないって感じの描写がアニメのEDでありました……やべぇ雄英って事にしちまったよ……。

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