僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
『~!』
「おっなんか何時もの欠伸とは違う感じの声だなドラゴン」
気分転換を兼ねて担当楽器の練習をしつつ好きな曲を演奏していた龍牙、そんな頭の上で龍牙のデータスキャンをし続けていたドラゴン。戦兎から彼を受け取ってから自分が風呂に入っている間もずっとくっついたままだったドラゴン、離れていたのは頭を洗う位だっただろう。寝ている時は器用な事に額の上で眠っていた、そして龍牙が目覚めると自然と場所がズレて元の頭の上のポジションに戻るのである。何とも器用な事だ、そんなこんなで漸くスキャンが終了したのか元気のよい甲高い龍の声が響いた。
「終わったのか」
『~♪』
「ご機嫌だな、もう昼寝は良いのか」
『~♪』
「そっかそっか、お疲れさん」
周囲にはそれぞれの練習を行っているA組のメンバーがいるのだが、そんな龍牙の姿に首を傾げる。ドラゴンは独特な音を撒き散らしているだけにしか聞こえないし、確かに龍牙に向かって何やら吼えているように見えなくもないのだが……全く意図が読み取れない、それなのに龍牙はそれらが把握出来るらしい。自分達と会話するのと何ら変わらない様子でドラゴンの発する音に頷いたり頭を撫でたりしている。龍だから通じる何かという物があるのだろうか。
「ねぇ龍牙君、ドラゴン君のスキャニングだっけ終わったの?」
「みたい。これでやっとドラゴンが今の俺に適応出来るようになった」
「おっ~やったね!これであの時みたいになれるね」
当事者であり龍牙の力の凄まじさを目の当たりにしている葉隠にそれに拍手を送った。実際、たった一人でヘルブロスを圧倒して変身解除まで追い込んだドラゴンを使用した龍牙は凄かった。力の制御が今まで以上に楽でスムーズに行える上に、潜在能力を引き出してくれるお陰で最大値を上昇させてくれるのも大きい。龍牙としても笑顔を浮かべ続けている。
「あっでももう調子に乗っちゃだめだよ?過信しないのが龍牙君の強みでもあるんだから、それを潰しちゃうのも凄い勿体ない!」
「いやうん、あの時は本当に有難う御座いました……」
思い出されるはタワーで初めてドラゴンを使用した時の事、あの時龍牙は思わず内側から湧き上がってくる凄まじい力の感覚に心が躍って自らの力を過信してしまった。葉隠のあの一言が無ければあのまま完全に慢心上等、全部ぶっ飛ばせばいいんだ的な思考になっていた事だろう……そしてそれが師匠にバレて凄い怒られるという結果になるだろう。何処か子供を叱りつけるような動きをしながら指摘をする葉隠にはもう頭が上がらない。
「何だよ何だよ、龍牙の頭のそれがどうかしたのか?」
「いや話したっけ、こいつ俺専用のアイテムって事は」
「おう、昨日聞いたぜ!」
先日、ドラゴンを受け取った直後に緑谷以外にもこのドラゴンの詳細も皆には話している。皆それを聞いて矢張り興味津々なのかドラゴンは注目を集めていた。当の本人は極めてマイペースで昼寝兼データスキャンをし続けていた。まあ峰田が無理矢理触った結果、怒ったのか龍牙からBRボトルを奪って自分に装填して、小さな黒炎弾の雨を降り注がせて峰田を黒焦げにしていた。
『おい龍牙めっちゃ危険じゃねぇか!?』
『峰田ちゃん、誰がどう見ても貴方が悪いわよ』
そんな蛙吹の言葉に誰も否定はせず、寧ろ頷く者しかいなかった。ドラゴンもそんな言葉に如何だ俺の方が正しいだろう、と言いたげな程に満足気且つ見下しているような炎混じりの息を吐いていた。それを見て峰田は憤慨していたりもしていた。
「その調整がようやく終わったらしい。もう使えるみたいだ」
「おおっマジか!!?それじゃああの、お前の変身!が出来るように成ったって事だな!」
「まあ端的に言えば」
「んじゃ早速見せてくれよ!!休憩がてらに!!」
そう言えば切島は戦兎のビルドになる瞬間には居合わせていなかったからある種初見、という事になるだろうか。ならば気になるのも致し方ないだろう、自分は良いだろうがドラゴンは如何なのだろうかと目線を向けてみるとまるで鼻を鳴らしながら、ガジェットモードに移行しながらボトルを龍牙の手に渡してきた。お前の勝手にしろ、と言いたいらしい。何とも気分やな相棒だと肩を竦めてしまう。それじゃあ了承も得たのでやろうかと思ったのだが、そんな矢先に来訪者がやって来た。戦兎である。
「よおっ龍牙、スキャン終わったみたいだな。俺の方にも通知が来た」
「みたいですね。何か満足気に鳴いてたのでそうなんじゃないかなぁとは思ってましたけど」
「随分慣れてるなお前、思い切って喋る機能とかつけるか?」
突然の来訪してきた戦兎だが、如何やら彼の方にもドラゴンのスキャン終了のお知らせが来たらしい。それを踏まえて様子を見に来てくれたそうだ。加えて両手には差し入れである大量のジュースやらお菓子やらを満載した袋が下がっている。頑張るのも良いが休憩も適度に入れろという事なのだろう、皆はそれを心良く受け取りながら休憩に入る事にした。
「んでよ龍牙、お前その力を試してみたくね?」
「いやまあそりゃ……」
「ちょうどいいからさ、俺が相手になってやるよ」
「えっ!?」
いきなりの事で龍牙は変な声が出てしまった。確かにI・アイランドの時よりも成長している自分がこれを使用したらどれ程の力を出せるのかは正直気になっていた。あの時ですら凄まじいエネルギーが迸っていた、今は如何なってしまうのか……興味しかなかったが、その相手を戦兎が買って出てくれるのは予想外だった。
「許可は直ぐに貰える、さあどうする」
「……是非、お願いします!!」
その時の龍牙の表情は、今まで見せた事が無いような好戦的な嬉しそうな笑みで染まっていた。
根津に連絡を取ると戦兎の功績もあるからか直ぐに許可が貰えた、グラウンドβにて向かいあう龍牙と戦兎。二人の手にはビルドドライバーが握られており二人は同時に腰をに押し当てて装着を行う。
「さて龍牙、お前がどこまでやれるのかこの天っ才物理学者が見てやるよ。何だったら俺の全力を見せてやってもいいぜ?まあお前がそこまで俺を追い込めるかは分からないけどな」
軽い挑発を絡めながらも龍牙に対するエールを送る、捉え方によってはお前に期待してるからな、という事にも取れるからか龍牙のやる気も鰻登り。此処まで言われているのだからそんな期待には応えないと失礼に当たるという物。
「やってやりますよ戦兎さん、I・アイランドから少しは成長してるって所を見せてやります」
「そりゃ楽しみだ」
そう言いながらも二人はボトルを構える、振られる音が周囲に木霊し、それらがドライバーへとセットされる。
〈
〈
〈WAKE UP !! BLACK DRAGON !!〉
互いに勢いよくレバーを回していく。戦兎はボトルに秘められた成分がドライバーから伸びて自らを覆う鎧をくみ上げ、龍牙は自らの力が詰まったボトルから力が溢れ出して自らとの同調を始めながら身体を覆う準備を行う。そして同時に二人に問が掛けられ、それに二人は即答で応じる。とっくに準備なんて―――出来ている。
〈ARE YOU READY ?〉〈ARE YOU READY ?〉
『変身!!!』
〈
〈WAKE UP BURNING ! GET BLACK DRAGON !! YEAH!!〉
顕現する二つの要素を一つにして生まれる創造の戦士、出現する黒き炎の中からその身を露わにする黒龍の戦士。互いはじっくりと拳を握り込みながら相手の手肩を窺う―――
「「だぁぁぁぁっっ!!!」」
そして同時に走り出して、互いの拳をぶつけ合った。凄まじい衝撃が周囲に響き渡り、空気と建物を揺らしていく。その中心に手向かい合う戦士は一歩も引かずに唯々目の前の相手を凝視する。
VS戦兎、いやビルド。一体どこまで戦えるのか、そして今の龍牙の実力は如何に!?