僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
空中にて何度もぶつかり合う赤い炎と黒い炎の帯、ぶつかる度に周囲に凄まじい衝撃をまき散らしながら一帯を揺るがす。紅蓮の炎の翼と黒い炎を纏う龍のぶつかり合い、激しい空中戦を繰り広げ、一進一退の攻防が続けられる。
「そろそろ攻める!!」
〈Ready Go!!〉
更に燃え盛る炎を身に纏ったビルドは全身から炎とエネルギーを放出しながら一気に黒龍へと向かって行く。今までとは比較にならない一撃で流れを掴もうとしているのだろうと即座に看破する。そうはさせるかと龍牙は右腕の龍頭を肥大化させながらそれに黒炎を纏わせた。そして黒龍の背で跳躍、黒龍はそれに合わせるかのように身体を唸らせながら尾で龍牙を捉えながら凄まじい力で彼を思いっきりビルドへと向けて弾き飛ばした。
燃え盛る炎で加速しながら巨腕を振りかざし、最恐の一撃を放たんとするビルドと黒龍の一撃の勢いすら利用した黒炎を纏った一撃を放つ龍牙。正しく必殺技と呼ぶと相応しいそれが激突する。
〈
〈Voltech FINISH!!〉
「はぁぁぁぁっっ!!!」
「だぁぁぁぁっっ!!!」
赤い炎の一撃と黒い炎の一撃が激突する、凄まじいエネルギーを持つ炎のぶつかり合い。それらは周囲のビルをビリビリと揺さぶるかのような衝撃波を生み出し、空間そのものを震わせていた。それでも互いは意地でも譲ろうとせず一歩も引かない。寧ろ更に一撃を押し込もうとする、結果互いの一撃はそれぞれに引火するような結果となり、互いのエネルギーが干渉しあい大爆発を起こし互いを地面へと叩きつけてしまう。
勢い良く叩きつけられ、地面をバウントするように転がっていく。爆発によるダメージもあり互いの身体はかなり傷ついている。必殺技の激突、クリティカルヒットこそしなかったがそれぞれのエネルギーが飽和して起きた爆発は下手に食らうよりも大きなダメージを生みかねない。それでも二人は直ぐに立ち上がると走り出し、拳を繰り出す。
「やるな!!フェニックスロボの一撃は相当利くはずだけどな」
「師匠の超音波混じりのラッシュに比べたら全然!!」
「納得っ!!」
まだまだやれるという所をアピールする龍牙にビルドはその根幹を確認して、納得と呆れを抱いてしまった。本当にこの歳でどれだけの戦闘訓練を積んでいるのだろうかと。火力という意味では上位に位置するフェニックスロボの
「たああっっ!!」
そんな龍牙に対して抉り込むようなラリアットを加えて軽く吹き飛ばす、鳩尾に叩きこんだ筈なのに蹲る様子もなく構えを取り続けている姿に将来への期待と同時にどうやって攻略するべきかと思考が同時に巡っていく。この以上の火力を出せるフォームは一応存在しているが、そうなると本格的に龍牙に大怪我をさせかねない事になってくる。というか、下手すれば自分も大ダメージを受けかねない諸刃の刃的な物と龍牙を殺しかねない物しか思いつかないのが素直な本音であった。
「やれやれ……本当に将来有望だよお前は」
「戦兎さん……?」
「この位にしておこうぜ龍牙、文化祭の練習とか考えるとこれ以上やるとお前が動けなくしかねない」
「もうちょっとやりたい気もしますけど……戦兎さんがそういうなら」
そう言って龍牙も素直に戦闘態勢を解いて個性を解除する、ビルドドライバーからドラゴンが外れてまるで疲れたような声を上げながら再び龍牙の頭の上に乗って眠り始めてしまった。またスキャンでもするのかと思って戦兎専用デバイスのビルドフォンを見るのだが……唯のスリープモードに入っていただけだった。
「(やっぱり変な思考ルーチンが組まれてるな、いやまあ面白いけど)」
自分が設計してプログラミングを行い、調整まで行った代物であるブラッククローズドラゴンは僅かな龍牙とのふれあいで大きく変化と進化を繰り返している。それは龍牙の圧倒的な出力の個性によるものか、それとも龍牙自身がドラゴンを一個人、相棒として扱っているからそれによって組み込んだAIが成長したからなのか。全く分からない、天才である戦兎にも分からない。心という物ほど、解くのに苦労をする方程式は存在しない。
「にしても俺は貴方の本気を引きずり出せなかった、残念です」
「ふふん。高々1年程度のプロだと思ってちょっと甘く見てたか?残念、これでも1年で伝説を作ったって結構話題にもなったからな」
と言いつつも戦兎としてはあのまま続けていたら確実に本気を出さざるを得なかったと思っている。今回はその手前でストップをかけたに過ぎない。逆に本気を出したらとしたら龍牙に大怪我をさせてしまうかもしれない、今の時点であれだけの余裕がある龍牙なのだから自分が本気を出してもかなりの所まで喰い付いてくるはず、ならばそれだけの対応を迫られる。
「(あれで止められるなら良いけど、その先を迫られたとしたら……これでまだ成長していくんだから末恐ろしいな)」
改めて恩師の息子の底知れない力に寒気を覚えつつも、頼もしい後輩の存在に何処か胸を撫で下ろす自分がいる。これならば自分が復帰しなくてもきっとこの先のヒーロー社会は安定する事だろうと確信を持って言える。色んな意味で安心できる材料を入手出来た。満足がいく結果に頬が緩み、顔がくしゃっとなる。
「全くこの小生意気な後輩が、将来有望すぎるぞこのこの~!!」
「ちょちょちょっ何するんですか戦兎さんって痛いですって!?」
と強めに肩を組みつつ頭を小突く戦兎と割かし痛くてやめて欲しそうにする龍牙だが、二人は楽しそうに笑っていた。仲のいい兄弟のじゃれ合い、そんな風に映っている。
「さてと、それじゃあちょっと校長の所に顔出すか。お前との戦闘の結果は話してくれって言われてるし」
「俺も付き合いますか?」
「来い来い、そっち方が話がすんなり進むからな。後お前、あの必殺技中々凄かったぞ」
「結構自信作です、まあ師匠にはあっさり破られましたけど」
「ギャングオルカってそんなにヤベーのか」
そんな会話をしながら二人は校長室へと足を進めていく、そしてそこで―――
「よ、よおっ……」
「……」
「えっ何この空気」
「う、う~んやっぱりこうなるのか」
とある事件に巻き込まれる。
ホントはスパークリングとか出す予定でしたが……なんか、収集付きそうにないのでこの辺りにします。まあ代わりに、次回からちょっと修羅場るのでご勘弁を。