僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
間もなく行われる雄英の文化祭、その時が刻々と迫ってくる。準備や練習を重ねているうちにいよいよ文化祭は明日に迫ってきている。戦兎のお陰もあって無事に開催される事に決定した文化祭、と言ってもやはり今回は一般公開などはないのは変える事は出来なかったが、生徒たちにとっては開催される事こそが重要な事だろう。そんな文化祭を龍牙を楽しみにしている、何より葉隠がミスコンに出るのだから自分もそれを楽しみしている。念入りに楽器の整備を皆が寝静まってからも行い続けている。
『~?』
「ドラゴン静かにな、頭の上に」
夜の暗闇の中で一人、作業をし続けている龍牙に寝ないのかと質問をするように目線を合わせて聞いてくるドラゴンを頭の上に乗せながら楽器に向き直っておく。一晩寝ない程度で自分の技術は落ちない、それは10年の間に行った師との訓練が証明してくれているので安心して作業できる。というか、落ちないように訓練した。流石に三日は寝ないと落ち始めるが、一日程度なら問題ない。
「……一週間耐久の実戦形式訓練思い出すなぁ」
龍牙の中でワースト1に輝いている地獄の訓練、1週間の間常に緊張状態と臨戦状態を保ち続けなければいけない地獄。何時何処から師からの攻撃が来るか全く分からない状況が1週間続き、突然やってくる攻撃などに脅えながらもそれに対応しなければいけない。あれに比べたらどれだけ楽な事だろう……。
「まともに寝れないかったもんなぁ……寝た瞬間に師匠にやられるんじゃないかって不安で瞳を閉じるだけで凄い不安があったし……」
瞬きすら満足にできない程の緊張状態、そんな状況で当然で眠れるわけもなく満足な休息も取れない。心身を絞り尽くして力を生み出して前に進む事しか出来なかった。そして突破した後、二日間眠り続けた後の何気ない朝食が人生で最高においしかったのも覚えている。
「さて、懐かしむのもこの位にして作業の続きっと」
暗闇の中で僅かな光で手元を照らす状況が過去の情景と似ていたのでついつい思い出してしまったが、文化祭の為にも手は動かし続けなければならない。今日まで様々な練習や準備を重ねてきたのだ、絶対に成功させたいというクラスの役に立てればいいと思いながら作業をし続ける。そんな時、頬に温かい物が触れる。振り返ってみると飲み物を差し出してくれている葉隠が微笑みを向けながら此方を見ていた。
「葉隠さん、寝なくていいのかい」
「龍牙君こそ。みんなはもう寝ちゃってるよ」
「俺はコーヒーを飲んでるから眠くならないんだよ、有効活用って奴だよ」
隣に座った葉隠は個性を解除して素顔を晒している、ピンクのパジャマを纏っている彼女にお礼を言いつつも飲み物を口にする。中身はホットココア、暖かな甘みが少しだけ感じていた肌寒さを心地良く中和してくれる。
「それで如何したの葉隠さん」
「えっと、その……緊張しちゃって……」
「ミスコンの事で?」
「うん……」
ミスコンテストに出る事についての迷いはない物の、流石に彼女にとって初めてな舞台。自分の容姿もここで様々な人に見せる事になる。今まで目立たなかった自分が秘策をもって目立つ場に立つ、彼女にとっては色々と不安な所もあるのだろう。
「衣装とかどうやってアピールするとかも決めたの、いっぱい練習もしたしミッドナイト先生にも衣装との相性は抜群ってお墨付き貰ったから大丈夫だと思うの。でも……やっぱり緊張しちゃって眠れないの……」
「そっか、まあ緊張はしょうがないよ」
「龍牙君は緊張とかには慣れちゃってるの?」
「まあね、師匠との訓練で緊張には慣れちゃった」
緊張に慣れている、というよりもギャングオルカの殺気によって齎される物に比べたら緊張何でごみのような物なので何とも思っていないだけである。
「ねえ龍牙君、龍牙君は誰に票を入れる?」
「それ、この場で言っちゃったら駄目じゃない?」
「アハハッ確かにそうだね、ねじれ先輩に入れちゃったりしちゃうのかな」
「ノーコメントって事にさせて貰うよ」
葉隠としては龍牙が誰に入れるのか、それが気になる事だった。今回のミスコンは龍牙に自分の魅力を見て貰うという事が一番重要になっている。その為にミッドナイトに衣装のセレクトも任せて色々と練習も重ねてきた。何としてでも彼に自分が魅力的だと思わせると心に決めているのである。
「ねえ龍牙君、もしもだけど……ミスコンでいい成績を残せたらご褒美欲しいなぁ」
「ご褒美なぁ……俺としては良いけど何を上げたら喜んでくれるかな、葉隠さんは」
「そうだね……今度のお休みに一緒に出掛けようよ」
「それなら何時でもするよ、ご褒美でなくてもね」
「約束ね」
「うん約束」
と小指を結びながら約束をする。ちゃっかりデートの約束をして少しご機嫌になった葉隠は気付けば緊張がほぐれていた。愛しの彼といた事で満たされたのだろうか、故かそろそろ部屋に戻って休む事に決めた。龍牙はこのまま作業を続けるとの事なので、その場を立ち去ろうとしたのだが……そんな彼の背中を見て少しだけ深呼吸をすると……背中から龍牙に抱き付いた。
「有難う龍牙君、私……頑張るから」
そう言い残すと彼女はそのまま去っていく、真っ赤になった顔を隠すようにしながら去るのだが龍牙はそれに気づかずに小さく応援してるよとエールを送った。