僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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私の腕前だとこれが限界……。


文化祭での黒龍

「雄英全員、音で殺るぞ!!!」

 

爆豪のそんな言葉と共に雄英文化祭でのA組の出し物であるバンドが開始された。念入りにチェックされ、龍牙が皆が起きる直前まで調整と手入れが施された楽器と小道具に抜かりはない。時間をかけて丁寧に丁寧を重ねた結果楽器の質は何段も上昇している。そんな楽器を持ちながら、龍牙は隣に立つ耳郎の始まりの合図と共に大きく腕を動かして楽器をかき鳴らした。

 

「全員、圧倒しろぉ!!」

『おおおおっっ!!!』

「宜しくお願いしまぁぁああすっっ!!!」

 

メインボーカル、耳郎の声と共に演奏が開始されていく。全員が、それぞれの個性を最大限に使って表現をする。彼らが作り上げたかったものらを、それは龍牙とて同じである。隣に立つ葉隠と共に背中を合わせながらギターをかき鳴らしながら重低音と高音の二つの声をミックスさせながら耳郎のハスキーボイスを際立てせる。メインを際立たせるサブの役割を果たしながら、龍牙は個性を発動させる。

 

「(行けっブラッカー!!)」

「グオオオォォォっ!!!」

 

瀬呂と轟、二人の力によって生み出される空中の氷をドラグブラッカーが身体全体を使ってそれらに瞬時に美しい造形の氷の橋へとし上げていく。そしてダンス部隊が麗日の個性で浮き上がりその上に着地し煌びやかな光を反射させる氷の橋の上で踊る。

 

「うおおおおっっ黒い龍が氷の橋を作ったぁ!?」

「すっげぇ如何やってるんだぁ!?」

 

ほんの僅かな時間の切れ目の出来事を観客たちは知覚出来ずに炎を纏う黒龍が通った後に氷の橋が出来たという光景しか見えない。炎が氷を形作るという摩訶不思議さ、それらが生み出す幻想的な光景、全身で聞き楽しみ、心を魂を揺さぶるような音楽が染みわたっている。それらに疑問を持つ隙間なんて与えずに畳みかけるように全身を突き抜ける高揚感が溢れ出す。そしてそれは―――大歓声になって響き渡る。

 

「ッ―――!!!」

 

それらは全てに伝染していく喜びのパンデミック、高揚感は身体を支配して気持ちを溢れ出させる。その場にいる全員が完全にA組の虜になっていた。最初こそA組をこき下ろすのが目的で見ていた生徒も気付けばそれに熱中してそんな事なんて忘れて夢中になっていた。そして最後の演奏を完全にやり切った時、体育館が崩れそうなほどの大歓声が響き渡り、A組は大満足な思いでライトを見上げながらその思いに酔いしれていた。

 

 

「―――あーあ、俺も見たかったなぁ龍牙のライブ……まあお仕事はしないといけねぇもんな」

 

そんなA組のバンドが行われている最中の雄英の敷地外、後僅かな所で雄英に入られる所に戦兎はいた。彼もA組の出し物には興味があり見たいと思っていたのだが、そもそも此処に来た目的を果たす為にその時の映像を録画を頼み、それで妥協して警備に当たっていた。そう、この日に雄英への侵入を企んでいた者を二人ほど戦兎は確保していた。

 

「なぁっ―――お前達さえよければ俺の所に来いよ、ジェントルマンとそんな紳士を愛するレディのお二人さん」

 

この後、戦兎は何をしたのかは何も分からない。唯、彼は異常なしとだけ雄英に報告した。そして―――戦兎は何処か熱に当てられたような表情で笑っていたのを根津だけが知っていた。

 

「何を見たんだい?」

「いやなに……純粋な相思相愛に当てられただけっすよ」

 

 

「龍牙君ッ最高だったわよ!!」

「ピ、ピクシーさん来てたんですか!?」

「えへっ連絡は敢えてせずにサプライズよ♪」

 

バンドを終えた龍牙は片づけを早々に終わらせると時間も迫っているので目的地に向けて歩き出している時の事だった。背後から突然抱き付かれ、振り向いてみるとそこには私服姿のピクシーボブこと土川 流子の姿があった。茶目っ気タップリな笑顔を見せながらも驚いた?とまるで悪戯を成功させた子供のように問いかけてくる姿に龍牙は笑みを零しながら驚きましたと素直に答える。

 

「龍牙君って演奏まで出来るなんて私初めて知ったわ!それに凄い上手だったじゃない」

「いやあれは先生が良かったからですよ、俺はあくまで引き立て役のサブです」

「いやん謙虚な龍牙君も素敵ね~♪」

 

とそんな風に黄色い声を出すピクシー、如何やら久しぶりに龍牙と会えたので大分テンションが上がって舞い上がっているご様子。一応メールのやり取り位はしていたのだが、それでも恋する乙女としては直接会って愛しの彼の感触を確かめたいのが素直な所である。

 

「そう言えば龍牙君何処かに行こうとしてたわよね、何処に行くつもりだったの?出来れば私に雄英を案内して欲しいんだけど」

「勿論良いですよ。でもその前にある場所によらせてください、そこに行くって約束があるんですよ」

 

そこへピクシーを伴って向かう事にした、そこは既に超満員。多くの人でごった返しているが龍牙とピクシーはちょっと離れた所からズルをして、ドラグブラッカーに乗って観戦する事にした。そして―――ちょうどそれが始まった。

 

ステージに立ってのは純白のロングスカートとブラウスをドレスのように見立てながら、黒い帽子を被った少女、だが少女の姿は一切見えない。衣装だけが浮いているように見えている、それも致し方ない。そこにいるのは透明の個性を持った葉隠、これではミスコンが成り立たないと誰もが思った時の事、その手に握っていたマイクから鈴のような清らかな声が響いた。

 

「私は確かに透明です、誰にも見られない。それが私、でも一人の人はずっと私を見てくれていた、私を可愛いって綺麗だって言ってくれました。今日はそんな人に感謝を込めてここに立たせて貰いました―――行きます、龍牙君見ててねっこれが私のオリジン!!」

 

マイクが天に投げられる、それと同時に音楽が流れる。静かな音から徐々に盛り上がっていくように少女にも変化が訪れる。透明だったはずの腕が徐々に色が付き身体が見えるようになっていく、純白のドレスに溶けるような白い肌が露出すると同時に彼女の楽しそうで嬉しそうな笑顔が飛び出した。そして天へと舞い上がっていたマイクをキャッチするとそのまま最高の笑顔を浮かべて歌いだす。

 

僅かなパフォーマンス、いやそう言えないかもしれない。唯姿を現しただけなのに彼女は完全に会場の空気を掴んでいた。

 

「凄い、葉隠ちゃん……輝いてる……」

 

それは思わずピクシーボブも感嘆の域を漏らすしかない程だった。歌声だけではない、自らの全てを使って会場の空気を掴んでいる。今全ての視線が彼女に向いている、視線が彼女を捉えている。

 

「最高だ、輝いてるよ―――葉隠さん」




さあ皆で言おう。

葉隠ちゃんカワイイヤッター!!

……うん、これが言いたかった。

因みにうたったのはビルドのOP BE THE ONE……のつもり。

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