僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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似ている少女と黒龍

その日、相澤が一人の少女を連れて寮へとやってきた。3年のミリオや天喰、ねじれを伴ってやってきたのは少女に関していると言える。相澤が連れてきたのは壊理、龍牙も関わった死穢八斎會が厳重に隠し続けていた個性破壊薬の中核を成す存在であると同時に先日の文化祭で笑う事が出来た女の子だった。そんな少女が相澤と共にやってきて、彼女が雄英で預かる事になったと皆の前で告げられた。

 

相澤曰く、何時までも病院に置いておく訳にも行かず彼女の親は彼女を捨てており、血縁にある死穢八斎會の組長は意識不明の状態。そして彼女の個性である巻き戻し、その放出口になっている額の角が僅かながらに伸びているとの事。事件中、個性が暴走してしまった。個性破壊薬も彼女の巻き戻しによって人間を個性が無い状態の人間に戻すというのが正しいらしい。そしてそんな彼女の暴走を受け止めたのが全力で身体を壊し続けた緑谷だったという。

 

いざ暴走しても相澤の個性ならばそれを抑える事が出来る。そんな事情もあるので雄英にて受け入れる事で個性との付き合い方を模索しつつ、彼女を世話している事になるという。そんな壊理ちゃんと初めて顔を合わせる事になる龍牙なのだが……

 

「まあこうなるよな」

「むふっ~♪」

 

ねじれがいる、という事で抱きしめられた上で頭を撫でられる龍牙。久しぶりだなぁと思いつつ、頭の上から膝の上に移動したドラゴンを何処か興味津々と言った様子で見つめている壊理に龍牙も目を向けてみる事にする。

 

「……ちっちゃいドラゴンさん?」

「ああ、ドラゴンさんだよ」

 

ジッ~と視線を向けてくる壊理、彼女からしたら玩具サイズの四角い身体をしたドラゴンが自ら動いた上に欠伸をして膝の上で昼寝をしているのだから当然興味も沸く。それを察したのかドラゴンは目を覚ましながら此方をずっと見つめてくる壊理の方を見る、そして龍牙を一瞥するとやれやれしょうがないなと言わんばかりに欠伸をすると彼女の膝の上に移動する。

 

「わぁぁっ~……!!」

『……』

 

キラキラとした瞳で見つめてくる壊理に対してドラゴンは面倒さそうにしつつも、今度は頭の上に移動したり肩や膝の上に移動したりをする。そんな風に自分の周りを飛び回っている小さな龍を見て壊理ちゃんは更に目をキラキラさせながらそれを見て笑っている。

 

「ドラゴンの奴、面倒さそうにしながらも結構面倒見良いじゃないか」

「うん有難うね龍牙君!結構壊理ちゃんが楽しそうで何よりだよね!!」

「お礼ならドラゴンに言ってください先輩、俺は何もしてませんから」

 

ドラゴンは確かに自分の相棒ではあるが自分が指示したわけではない、先程の一瞥もしゃあねぇから相手をしてやる、と言った意味を含んでいた。恐らく戦兎が子供には優しいといった基礎的な情報を組み込んでいたのだろう、それに従って行動を行った……と言った所だろうか。

 

「壊理ちゃんか……」

「如何したの龍牙君」

「いや、な」

 

緑谷が龍牙の瞳を見て何か変わった色をした事が気になった。龍牙は彼女の事を聞いて僅かに自分と重ねてしまった。

 

「壊理ちゃん、俺は黒鏡 龍牙だ。そのドラゴン君の相棒……いや友達だな、良ければ君も友達になってあげてくれないかな。そうしてくれたら喜ぶよ」

「なりたい……!!」

「だってよ、ドラゴン」

 

それを言われてドラゴンはまるでえぇっ~……と言いたげな声を上げるのだが、渋々承諾するように肩に留まると宜しくというように小さく鳴いた。それを聞いた壊理は笑いながらドラゴンを撫でる、硬い感触だが撫でられて反応するドラゴンを見て彼女は満足そうに笑っている。話を聞く限りでは彼女は笑う事は無かったそうだが、文化祭がいい切っ掛けと刺激になってくれたらしい。

 

「そうだ龍牙君!君にはもう一体ドラゴン君がいるじゃないか!!彼も見せてあげてくれないかい?」

「あっドラグブラッカーだね!!良いよね、カッコいいもんね!!」

「いやあっちは結構強面ですよ先輩方……壊理ちゃん、怖がるかもしれませんけど……」

 

確かにもう一匹いるのだが、そちらは少女に見せるには刺激が強すぎるのではないかと思うのだが……が、もう一体ドラゴンが居るという事を聞いて見てみたいのは此方を見てくる壊理ちゃん。そしてミリオとねじれも笑顔で圧を掛けてくる。もう出すしかないと悟ると龍牙は観念したようにドラグブラッカーを出す事にした。

 

『グオオオォォォッ!!』

「わぁぁっ!!おっきいドラゴンさん!!」

 

意外な事に壊理ちゃんはドラグブラッカーを怖がることが無かった、寧ろ嬉しそうにブラッカーに瞳を向ける。純粋な視線を向けられて動揺しているのか、困ってしまっている。だがブラッカーは壊理ちゃんに対して悪くない気分になった模様。そんなブラッカーの背中に壊理ちゃんを乗せてあげて飛んであげたりもする、そんな風な一幕が起きている中でも龍牙の視線は変わっていなかった。

 

「何処か、俺と似ている感じがしちまうな……何か力になれたらいいんだけどな……」

 

そんな風に思わず呟いた龍牙の言葉は楽しそうにしている少女の声に掻き消されてしまったが、龍牙は気にしていなかった。ああして笑っているだけでも彼女は過去の自分とは大きく違っている、今はそれだけでもいいのかもしれない。




此処から壊理ちゃん関連が始まるかも。

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