僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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番外編、リューキュウルート……の続き的な物です。


続・二つの龍が手を結ぶ日

「最近さ、黒鏡……いや龍牙の奴ってなんか変わったよな」

「やっぱ切島もそう思うか?」

 

ある日の事だった、唐突に呟いた切島の言葉に瀬呂が同意を浮かべながら同じく今はインターンにて開けられている龍牙の席を見つめながら。A組にとっての龍牙は聞こえは悪いが恐怖の存在だった、入学直後の個性把握テストの一件でそれが鮮明に刻み込まれた事によってほぼ全員がその印象を持った。

 

「この前食堂で隣に座ったんだけどよ、結構笑って話を聞いてくれたし天丼のエビフライ一匹くれたんだぜ。しかも一番でかい真ん中の奴」

「ああ俺もあるわ、食堂で金出そうとしたらさ教室に財布忘れて右往左往してたら後ろから500円出して立て替えてくれたんだよ。しかも釣りは取っておいてくれていいって、なんかあいつの方から歩み寄ってくれてる感じだよな」

 

そんな言葉を聞きながら周囲の皆も龍牙の変化が脳裏を過るようになってきた、前は顔を背けながら此方を避けて通りながら此方が歩み寄っても逆に遠ざかってしまって行ってしまった。だがそれが今では龍牙から歩み寄ってなんかコミュニケーションを取ろうと努力している姿が見えるようになっていた。

 

「なぁ轟に常闇は何か知らねぇの?お前らは前からあいつと仲いいだろ」

「いや知らねえ」

「我もだ。黒炎龍は己で変化を遂げている、奴の変化に我らは介在していない」

 

A組の中で唯一龍牙が対して友好的だった焦凍も常闇も龍牙の変化に関しては全く心当たりがない、逆に彼らも良く笑うようになったことに疑問を持ったが明るくなって嬉しそうな笑顔を見せるように成った事は良い傾向だと思い特に疑問にも止めなかった。

 

「麗日と梅雨ちゃんは何か知らねぇの、一緒にリューキュウの所でインターンしてんでしょ?」

「いやぁウチらもさっぱりで……」

「リューキュウが何か言ってくれたのかもしれないけど良く分からないわ」

 

そう、龍牙が変われた大きな要因こそが―――若きトップヒーローの一角であるリューキュウであった。スケジュールと体調管理の一環で麗日と蛙吹はインターンには出ていないが龍牙は今日も彼女の下でのインターンに勤しんでいる。

 

 

「こっちの整理と決算終わりましたよ、続いてこっちの書類やっちゃいますね」

「助かるわ、リュウガのお陰で仕事がどんどん片付くわ」

「この位お安い御用です」

 

そんなリューキュウ事務所では主である彼女の部屋にてテーブルの上に重ねられている書類や決算を片付けていく龍牙と自分でやらなければいけない仕事を片付けていくリューキュウの姿がある。新進気鋭のレディースヒーローとして名が売れている彼女だが独立して日が経っていない為に事務員こそいるがサイドキックが全く足りていないという問題を抱えている。

 

サイドキックは単純な事件解決や冒険をする相棒や親友という意味合いではなく、ヒーローでなければ捌く事が出来ない書類をヒーローと共に処理するサポートなども含まれる。事務員とはいえ機密性が高い書類も存在するのでその場合などはサイドキックが処理を行う。

 

「それにしても本当に決算速いわね……算盤でそこまで出来るなんてすごいわね……音も凄いし」

「あっ煩いですか?」

「いえ全然気にならないけど、今時そんな音を立てながら算盤を使う光景も珍しいわねと思っただけよ」

「根津校長の仕込みです、指を使う事は頭の体操にもなるんです」

 

そう言いながらも片手間に弾きながら決算書類を始末していく姿に頼もしさと自慢げに胸を張っている姿に微笑ましさを感じてしまう。本来予算などの書類はリューキュウ自身がやるのだが、龍牙に任せる程に彼を信用している上に彼の方が処理能力的に適任だと信頼している。

 

「あれ、これって……リューキュウさん、此処の予算ってちょっと食い違い出てますよ、なんか計算すると逆に多いですけど」

「ああ多分この前出た新しいスポンサーからの奴ね、服のデザインに急に私をモチーフにしたいって言われちゃってね。それだと思うわ、近くにその書類があると思うわ」

「えっと……あっこれですね、それじゃあこれも踏まえて修正して起きますね」

「お願いするわね」

「了解です」

 

即座に数字の修正を行い種類を一緒にしながら一緒に確認できるように纏めていく龍牙を見ながら本当に今からサイドキックとして働いてほしいと本気で思い始める半面である思いが胸の内で募り始めていた。

 

「(……凛々しくてカッコいい、いいわね)」

 

真剣に書類に向かいながら作業を進めていく横顔を眺められる瞬間瞬間を彼女は存分に楽しんでいた。それに染まりすぎる事もなく仕事をこなすが矢張り内面は彼に対する感情は大きかった。そして時計を見て見るともう休憩するにいい具合の時間になっていた、声を掛けてお茶を飲みながら一息入れようかと思ったのだが此処で少しばかりの悪戯心が働いてしまう。

 

「ねぇっ龍牙」

「ハイ、なんです―――」

 

唐突に背後から手を回され抱きしめられるような形になった龍牙、柔らかな感触と甘い香りが鼻腔を擽り身体を強張らせると好機と言わんばかりに頬にリューキュウは口づけをする。

 

「リュゥッリューキュウさん!!?」

「連れない事言わないで……二人っきりの時は、名前で呼んでねって言ったじゃない……」

「い、今は仕事中で……」

「今貴方に名前を呼んで欲しいのよ、お願い龍牙……」

 

そっと、彼にだけ聞こえるように囁いた。優しく、熱を冷ますような口遣いで息を耳に吹きかけると龍牙は生娘みたいな声を上げて身体を更に震わせるように強張らせるのだがそれを拘束するように抱きしめて逃がさぬようにする。

 

「リュッ……龍子……さん、意地悪過ぎませんか……?」

「女って言うのは愛する男を前にするとね―――どうしても意地悪とかしたいたくなっちゃうのよ」

 

満足気に笑いながらも頬を染めてその響きに酔いしれながら彼の耳に口を当てるようにしながら囁き続ける。息と声が直接耳を震わせていくと面白いように龍牙は硬直させながら自分の視線から紅潮した顔を背けて逃れようとする。そんな姿に加虐心と庇護欲が刺激されて身体の奥からゾクゾクと刺激されていく。どうしてもこう、私の恋人は可愛くて素敵なのだろうかと自慢したくなる。

 

「フフフッ……そろそろ休憩しようと思ったのよだからこうしてるのよ」

「そ、そにゃら普通に……」

「それだと面白くないと思ってね……こういうのも好き、でしょ?」

「わ、分かりませんよ初めてですもの!!」

「声大きいと他に聞こえちゃうわよ」

 

指摘に縮こまるようになりながら声を潜める。下手に声を上げて此処に人が来てこの場面を見られたリューキュウにも余計な噂などが立ってしまい迷惑になるかもしれない、龍牙とリューキュウは交際こそしているがそれは現状では表沙汰にはせずに秘密裏になっている。故に龍牙はリューキュウは抜け抜けも良く言えるなと思いつつも実際そうだから声を顰めなければならない。そんな彼女に少なからず反撃したい気持ちがあった龍牙は座っている状態から身体を回転させてリューキュウへと向き直り真っ直ぐ見据えながら言う。

 

「そ、それなら龍子さんが俺の口を塞いでくださいよ!!」

「えっ?」

 

瞳を閉じながら彼女の正面になるように唇を差し出すように向けた。何処か反撃したげな強気を装っているが良く見るまでもなく震えている、龍牙としても恥ずかしいが同時に彼女に対する愛情表現且つ反撃の一手のつもりなのである。何処か微笑ましくも勇気を出した行動に龍子は呆気に取られてしまう、自分が誘う側だったにもかかわらずこれは予想外だった。

 

「……したく、ないんですか?」

「あっいえそんな訳じゃなくて、龍牙からそうされるなんて意外だったから」

「俺だって立派な男です、龍子さんに相応しい男になろうとする度量ぐらいあります」

「それもそうね」

 

これも彼なりの勇気と自分に対する好意に基づいている行動、それを受けないのは彼に対する侮辱である。何よりこんな場面を逃すほどにリューキュウは奥手ではない。ガッツリ行く系でもないが行ける時には確りと行ってチャンスを掴む程度には勇猛なのである。

 

「―――舌、いれてもいいかしら」

「入れたらエスカレートしちゃうから駄目です」

「……龍牙のケチ」

「仕事終わりなら良いです」

「流石分かってるわね―――愛してるわ」




―――龍牙、お前……クソがぁぁああああ!!!羨ましいんじゃ貴様ぁぁぁ!!!
完全に心通じ合っててなんかもう、書いててこっちがあれだわ今ちきしょぉおがぁぁ!!!!



―――まあうん、こんな感じでIFルートの続きをちょくちょくやっていきます。

活動報告にて番外編の募集をしてますのでお時間があれば覗いてみてください。
↓こちらから飛べますのでご利用ください。


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=239485&uid=11127

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