僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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2人の英雄編―――ビルドと黒龍

「警備システムを管理しているのはタワーの200階―――今はまだ30階か」

「って200階ってマジっすか!?」

「冗談言ってるように見えるか」

 

と表情こそ見えないが、両手を上げているポーズからして自分だって登りたくなんてないわというのが滲み出ている戦兎に皆も同じ気持ちを募らせる。この島を救うために、平和の象徴を救うために戦う決意を固めた一同は警備システムを管理している最上階の管制室を目指す。非常階段を登りながらヴィランと接触しない事を祈りつつ、駆け上がっていく。

 

「はぁはぁっ……メリッサ、さん大丈夫……!?」

「大丈夫、よっ……!葉隠さんこそ、息上がってみたいだけど」

「私はまだ、大丈夫です!」

 

流石にこの二人は他のメンバーに比べて息の上りが早い。葉隠もヒーロー科で学びながら授業などで身体は仕上がっているがそれでも個性は一切身体機能をカバーしてくれないタイプ。どちらかと言ったら一般的な女の子的な体力しかない彼女には30階までの階段を駆け上がるだけでもきつい、そしてそれはメリッサも同じく。インドア系且つ研究者的な彼女もこれは応える事だろう、だが戦兎だけでは警備システムを完璧に元に戻すとは限らないので彼女の協力は必要不可欠……頑張ってもらうしかないだろうか、という時に不意に龍牙は下に駆け下りて膝を曲げた。

 

「ちょっと失礼しますよお二人とも」

「えっ?」「へっ?」

「よっと」

「「キャアッ!!?」」

 

膝を下ろした龍牙はそっと二人の腰に手を伸ばすとそのまま軽々と二人を抱え上げた。仮にも二人の女性となるとかなり重い筈だが……龍牙はまるで重さを感じていないのかそのまま軽快な足音を立てながら階段を一気に登って先に進んでいた皆にあっさり追いついた。

 

「って龍牙テメェ何美味しいことやってんだあ!!?」

「こんな状況下で何だテメェ!!?つり橋効果でも狙ってんのか!!?」

「つり橋……?なんだそれ、どんな効果で何時発動するんだ?」

「「どっかで聞いた事があるようなボケかましてんじゃねぇよこの野郎!!」」

 

と後ろから血涙を流している上鳴と峰田から凄まじい罵声が飛んでくるのだが、それを素で理解しているのか受け流す姿を見てこれを本気で言っているんだから天然とは恐ろしいと思う皆であった。そんな天然の龍牙に抱えられている二人は慌てながら龍牙に降ろして貰えるように掛け合うのであった。

 

「りゅりゅりゅりゅ龍牙君あの、大丈夫だから降ろしてぇ!?」

「わ、私も大丈夫だから!!こんなことしてたら貴方が余計に疲れちゃうわ!!」

「平気さ、師匠との一週間の実戦形式訓練に比べたら疲労のひにも入らない」

「流石のタフネスだね龍牙君!!」

 

この先の事を考えれば葉隠の力もメリッサの力も必要になる可能性が高い、ならば二人の体力も温存するべき。そうであるべきならば消費する体力は一番持久力が優れている龍牙が合理的であると判断したのだろう。龍牙に抱えられた二人はその事を理解したのか甘んじてそれに受け入れる事にするのであった。

 

「あ、あの龍牙君本当に重くないの……?」

「全然軽いですよ。ちゃんとご飯食べてるのかって心配になる位には」

「それは龍牙君が強すぎるからだよぉ……」

「そうかな」

「(……おいおいマジで素面で言ってるのこれ、だとしたらすげぇ乙女殺しだぞあいつ……)」

 

ビルドとしての仮面の下で微妙な表情を浮かべている戦兎、一応龍牙について根津から聞かされてはいるので彼の過去の事も理解している。なので彼に悪意などがあって乙女心を玩んだりしているという訳ではなく、本心且つ善意や良心で言っているのも分かるのだが……余りにも女殺しな事を平然とやらかしている龍牙に呆れた表情が浮かんでくる。

 

そんなこんなでいよいよ80階へと到達しそうになってきたころの事、先に続く階段は完全に封鎖されてそれ以上登れなくなっている。一応非常階段の内部からならば扉のロックを解除して開ける事は出来るが、そうなれば確実に自分達の存在がヴィラン達に筒抜けになる。つまり、これ以上の隠密行動は難しくなってくるという事になる。

 

「くそっ……これ以上バレずに進むのは難しいか……」

「ならやるべきことは決まってますよ戦兎さん、僕たちはもう迷わずに突っ走るって決めてますから!!」

 

戦兎が一瞬だけ、何か策を考えるべきかと迷った時にそれを緑谷が全力で否定する。このタワーに向かうと決めた時から戦闘になるなんて最初から分かり切っていた事。寧ろ此処まで戦闘なしで進めただけでも御の字と言うべきだろう。それを見て戦兎は迷いを捨てる、そうだ分かっていたじゃないか。だから自分は個性の許可を出すと決めたのだから。

 

「よし、なら此処からは俺がこのシェルターをぶち破って囮になる。出来るだけ派手に暴れて多くの敵を引き寄せる、相手も俺だと分かれば警備システムのセキュリティロボで止めようなんて甘い考えはしない筈だ」

「でも大丈夫なんですか戦兎さん!?たった一人で囮になるなんて……!!」

「ヒーローの活動は全然してなかったけど、これでも身体を鍛える事はやめてなかったからな。安心しろ―――と言いたい所だけど俺一人だけだと囮に不安があるな……相手に威圧を掛けて囮としての機能を上げたい所だ」

 

威圧、相手にかける脅しで囮としての精度を上げると言われた瞬間に一人に視線が集中した。そう、龍牙である。相手を威圧して、注目を集めるという点において龍牙ならばそれは適任なのではないか。それを察して龍牙は成程と頷きながらメリッサと葉隠を降ろしながら拳を鳴らす。

 

「付き合いますよ戦兎さん、精々注目を集めてやるとしましょうか。師匠仕込みの対ヴィラン戦闘術……それを見せ付けてやる」

「おしっその意気だ。全員は一旦階段に隠れてくれ、俺達はこのままシェルターをぶち破っておくに行く。そうだ、葉隠ちゃんも悪いけど付き合ってくれ。きっと君の力も必要になる」

「わ、私もですか!?私なんかで良ければ連れてってください!!」

「よしその勢いだ」

 

これで80階から上へと隔壁を突破して登っていく3人が決定した。他のメンバーはシェルターを破って時間をおいてから扉を開けて別ルートから上を目指す事に決めた。そして彼が一旦階段に隠れたのを確認したのちに龍牙の懐からドラゴンが飛びだした。身体と首や足を頻りに延ばして漸く出番かと言いたげな雰囲気だ。

 

「龍牙君、ドラゴンの出番だ。そいつにボトルを十分に振ってから入れてから個性を発動するんだ。後はドラゴンの方が勝手に同調してくれるはずだ」

「分かりました、よし行くぜドラゴン!」

WAKE UP !! BLACK DRAGON !!

 

 

戦兎を真似てボトルを良く振っていく、内部では小気味良い音を立てながら成分が刺激されていく。そしてそれをドラゴンへと装填するとドラゴンの瞳が赤く輝き、黒い炎が漏れ始めた。それらから溢れる炎は自らの黒炎と全く同じものを感じる、ドラゴンは自分と同じ力を持った青い龍。そして徐々にその力が高まっている。それらに合わせるように自らも個性を発動させていく、自然とドラゴンの力も自らのそれと同化している行くような不思議な感覚を味わいつつも龍牙は全開に力を発揮させながら戦兎に倣って叫んだ。

 

ARE YOU READY ?

「―――変身!!!」

WAKE UP BURNING ! GET BLACK DRAGON !! YEAH!!〉

 

黒い炎を纏う青い龍の力を借りて至った黒龍の姿、普段と姿は変わらない。あるとすれば付けていたボトルのホルダーが腰にある程度で姿は全く変化していない。だが―――今までは全く別次元の何かを感じる。感じた事もないような、言葉に表せないような一体感をその身に感じながら龍牙は拳を握った。

 

「この感覚……すげぇっ……!!」

「おおっ流石俺!!一発で完全に同調成功しちゃったよ!!凄いでしょ、最高でしょ、天ぇっ才でしょ!!?」

「マジで凄い……!今の俺はもう―――負ける気がしねぇぜぇええ!!!」

 

葉隠はその言葉に驚いていた。龍牙は日常的にオルカに自信を圧し折られ続けていたために自らを常に第三者視点で見つめ、実力を冷静に判断し続けてきた。自らの力に確信こそ持つが自信は一切持たないタイプ、だが今は違う。全く違う力の感覚に心が躍り自信に溢れてしまっている。そんな彼を見て葉隠がしたのは―――

 

「龍牙君、そんな事言ってるよオルカさんに怒られるよ?」

「―――……そうでした、本当に有難う葉隠さん」

 

龍牙のストッパーであった。

 

「おお、ブレーキの握り方も分かってるとか最高だな!!よし、それじゃあ―――行くぞ」

「貴方とメリッサさんに作って貰ったこいつも活用させて貰いますよ!!」

〈BEAT CROSSER!!〉

 

ボトルを開けるとそこから飛び出したのは一本の剣、刀身には何やらイコライザーのようなメーターが内蔵されており、ボトルを装填できるようなスペースまで完備されている不思議な剣、ビートクローザーを構えてドリルクラッシャーを構えた戦兎と並び立つ。

 

「(……こうやってビルドとして、誰かの隣に立つのも何年振りだろうな……あいつと別れて以来か……いや、今は忘れろ)よし、行くぞ龍牙!!」

「ええ、行きますぜ戦兎さん!!」

 

戦兎は赤いボトル、ラビットフルボトルをクラッシャーに。龍牙は渡されていたもう一本のボトル、金色のロックフルボトルを装填しながら習った通りに装填した後、グリップエンドを引っ張ってパワーをチャージしてから構えた。

 

SPECIAL TUNE!! HIT PARADE(ヒッパレー)!! HIT PARADE(ヒッパレー)! MILLION SLASH!!

Ready go! Voltech break!!

 

二人の一撃がシェルターを意図も容易く吹き飛ばし、葉隠を連れた二人はその先へと駆けあがっていく。3人の戦いが始まろうとしている。




うーん、やっぱり面倒くさい……色変えるだけで一体どれだけ時間使ってるんだか……いやでも完成後のこの陶酔感に浸るのも一興……。

そして最後当たりの戦兎の台詞は別に伏線という訳ではないです、うん多分……過去に個性関係である事があっただけですから。うん。

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