僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
もう手遅れな時点来た時点で何やらやばい物を感じ始めた龍牙、それでも龍牙は落ち着きながら確りと対処をしていけば大丈夫だろうと自分を励ましていく。きっと、恐らく、多分……。
そんな龍牙は背中に何か冷たいものを感じつつもピクシーと葉隠に挟まれる事になる、周囲も何やら察するのだが茶化すような雰囲気でもなく寧ろ藪蛇になりたくないのが距離を取って遠巻きそれを見つめている。唯一サムズアップして頑張ってという意志を伝える蛙吹の心遣いが素直にありがたく、小さくサムズアップで返す。二人が威圧しあっている中でA組の元に一人の来客がやって来た。
「あっ白鳥さん」
「すいませんあの……お兄ちゃんいますか?」
「龍牙君ならいるよ」
やって来たのは龍牙の妹である白鳥であった。何やら用事があるのか態々訪ねてきた模様、そんな彼女に対応する為に二人に頭を下げつつ近寄っていく。
「何か用か」
「此処では少し……兄をお借りします」
そう言って白鳥は龍牙を伴って外へと出て少し歩いた所へと移動した。龍牙は軽くなった空気を思いっきり吸い込んで気分を切り替える、ピクシーの妙に此方を狙うような視線にそれを阻止するかのような静かな覇気を発する葉隠の間は流石の龍牙も居心地が悪かった模様。
「いや何の用事か知らんけど助かった、今度飯奢る」
「それは別にいいんだけど……お兄ちゃん何かやったの?」
「何もやってない。割とマジで」
と若干顔を青くしている龍牙だが、白鳥は何となくだが察しがついている。兄とは今ではそれなりの兄妹関係に戻りつつあるのでそれなりに近況の話もするようになっている。それらと兄に対する評判やらを総合すると、葉隠とピクシーボブの心を射止めてしまっているのだろう、恐らく全く意図せずに。兄にも春が来たのかと喜びたい所だが今までの事を考えると口を出しづらいので、取り敢えず追及する事はせずに最低限の事だけにしておく。
「取り合えずお兄ちゃん、気を付けておいた方がいいんじゃない?」
「……何それ怖い、まあ気を付ける事にする……んで何の用でこっちに来たんだ」
忠告は有り難く受け取っておくことにして本題に入る事にした、連れ出してくれた事に関しては礼を言っておくがそれなりの理由があるのではないだろうか。
「また、あの二人が悪だくみしてるとかか」
龍牙の脳裏にあったのは実の両親の事。彼にとっての二人の印象は最悪に尽きる、勝手に許嫁を作られる所だったり白鳥を助ける為に自分の友人を犠牲にしようとしたり、出来る事ならばもう関わり合いになりたくはない。しかし白鳥は首を横に振った。
「お父さんとお母さんはお兄ちゃんに関わる気はないみたいよ、ヴェノムさんまでお兄ちゃんの背後にはいるからね。二人にとってヴェノムさんは勝てないと分かってる相手だから」
「俺の背後って言っていいのか謎だけどな、あいつの場合」
最近漸くヒーローデビューを果たしたヴェノム、縦横無尽に駆け回りながらヴィランを倒して行く姿は正しく無双。見た目は恐ろしいのだが、時々パトロール中にチョコなどを購入している姿が見かけられそんな姿のギャップが人気を生んでいるか人気を博したりしている。因みにヴェノムからもメールやチャットが飛んでくるが、顔文字を妙に使いこなしている。
「お兄ちゃんって龍を出せるよね」
「ああ、ドラグブラッカーの事だろ」
「うんそれ。実は私も……似たようなの出せるようになったの」
「似たようなの……?」
その言葉の直後、ファムの傍へと空から一匹の白い翼が降り立った。それはドラグブラッカー程ではないが十二分に大きな翼を持っている白鳥、白い翼は光を反射して眩しい程の閃光を放っている。自らと真逆な光を発する翼を持った存在。それに興味を引かれたのかドラグブラッカーが自主的に影から顔を覗かせ、それを睨みつけている。
「お前にもそんなのが……」
「うん。お兄ちゃんにえっとドラグブラッカーがいるみたいに私にもいるんじゃないかなって思って授業で色々試してたら出せるようになったの、名前はブランウィングって言うの」
『キィエエエエ!!!』
甲高い声を上げながら翼を広げる鳥を眩しそうに見つめる龍牙、矢張り自分と彼女はある種の対極に位置しているような気がしてならない。
「それでそのお兄ちゃん―――体育祭でのリベンジをさせて貰う事って出来ますか」
「成程、用件ってのはそういう事か」
「私はブランウィングと共に戦うスタイルをお兄ちゃんから学びたいんです。既に完成された貴方から何かを学び取りたい」
「成程な……体育祭のあれ以来か、あれは不完全燃焼だったからリターンマッチでもするって事か」
「―――そう取って貰っても良いですよ、お兄ちゃん」
不敵な笑みを浮かべながらも挑戦的な視線を投げかけてくる妹に対して龍牙は自信を持って応える事にする。影からのぞき込むだけだったドラグブラッカーが飛び出し、龍牙の周囲を取り囲むように蜷局を巻きながら低い唸り声を上げながら目の前の存在らを威嚇している。
「俺とドラグブラッカーに勝てるなら挑んでくると良いさ、俺達はそれを全力で叩き潰すだけだ。龍の逆鱗に触れたいならご自由に」
「蹴りつけて差し上げますよお兄ちゃん」
不敵な笑みを返してくる妹に龍牙は嬉しそうに笑う、これは戦う時が楽しみで仕方無くなってきた。ドラグブラッカーも滾っているのか先程からかなり興奮しているような様子になっている。
「そうだお兄ちゃん、一つだけお伝えしなきゃいけないことありました」
「んっ何?」
「あの……木の陰から凄いピクシーボブさんと多分葉隠さんだと思うんですが……お兄ちゃんを凝視してますけど本当に何もしていないんですよね……?」
「本当に何もしてない……」
「……辛かったら相談してくださいね、私たちは兄妹何なんですから」
この時、今までで一番兄妹の繋がりを感じた二人であった。