僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「そう言えばよ、もう直ぐビルボードチャートが発表されるよな」
「ああそう言えばもうそんな時期か、オールマイトの居ないランキングとか想像つかねぇわ」
プッシーキャッツの皆さんが来賓として訪れた翌日の事、間もなく下半期のチャートが発表される事に気付いたからかそんな話が出てきた。ヒーロービルボードチャートJP、事件解決数や社会貢献度、国民の支持率などを集計して毎年2回発表される現役ヒーローの番付、ランキング。上位に名を刻んだものほど人々に笑顔と平和を齎したヒーローという事になっている。
「お師匠さんのギャングオルカとかどうなるんだろうな龍牙」
「さあな」
この中である意味一番チャートに興味がありそうだった龍牙へと声が掛けられるが、本人は至極如何でも良さそうな表情を浮かべたまま淡白な返しをした。
「おいおいおいなんだよツレないな、お前の師匠だって№10だしインターン先のリューキュウだって№9じゃねぇか。だから一番興味あると思ってたのに」
「大っぴらに表現される物ほど正確な物差しには成り難い、そこには様々な誇張や拡大表現が混ぜられる。それを鵜呑みなんかにしてたら余計な慢心を作って破滅する。師匠にはそう言われてきてるんだよ」
あくまでビルボードチャートは世間的には自分はそんな風にみられている程度の認識で良い、それで良い気になって慢心して破滅するなんて愚かの極みでしかない。名誉は名誉で受け取るのは良いがそれらで自らを飾らずに本当の自分を見極める事が重要だと龍牙は思う。
「相変わらずお前の口から出るギャングオルカってすげぇスパルタだなぁ……俺だったら1週間持たないと思うぞ」
「オイラも」
「そんなすげぇ人に教わり続けてる龍牙はマジですげぇよ!!熱いぜ!!」
「それを否定する気はないけどよ、辛かったり辞めたいって思った事ないのか?」
瀬呂の言葉に対して龍牙は素直に考えなかった事は無くはなかったと答える。子供ながらにあの訓練の嵐は辛いなんて次元のレベルではなかった、根津やグラントリノ公認の虐待一歩手前のメニューに逃げたくなかったのかと言われたら嘘になる。だが自分は逃げるなんて選択肢を選ばずに向き合い続けた。
「やっぱ師匠みたいになりたかったからかな」
そんな風に言うが、本当はオルカが必死に自分の為に作ってくれたものを無碍にはしたくなかったのが本音。不器用な愛情だったがあの愛情は本当に心地よかったからだ。そんな事を語っていた龍牙だが、彼は膝の上に乗っていたドラゴンを頭へと移すと立ち上がって出掛ける準備を済ませる。
「あらっ龍牙どっか行くのか」
「ちょっと野暮用でな」
「まさかデートか!?」
「さぁてなんでしょうね」
少しだけ悪い顔をしながらも寮を出て行く龍牙、デートか否かと言われたら自分がやるのはデートなのかもしれない。これから出向く先には女性が一人待っているし、その人との用事があるのだから。まあ、待っているのは―――妹なのだが。そんな事を考えつつも歩いていると前からミリオと手を繋いでいる壊理ちゃんが見えてきた。
「おおっ龍牙君!!」
「おはようございます、ドラゴンのお兄さん」
「ミリオ先輩に壊理ちゃん、ども。また遊びに来てくれたんすね」
「うん、壊理ちゃんもドラゴン君達と会いたかったみたいだから連れてきちゃったよね!」
笑っている隣で少しだけ気恥ずかしそうにしている壊理ちゃんは頭の上にいるドラゴンを見つめている、やはり気入ったのだろう。戦兎に相談してみたら今度彼女専用のドラゴンを作ってくれる事になった、変身とかは一切関係なしに彼女の役に立つ機能を詰め込んでおくと言っていた。
「そっかそっか、態々来てくれてありがとうなぁ壊理ちゃん。お兄さんも会えてうれしいよ」
「えへへっ」
「それじゃあ寮で待っててもらっても良いかな、お兄さんこれからちょっと用事があるんだ」
「龍牙君何処かに出掛けるのかい?」
「ええ、グラウンドβで妹とちょっと手合わせをするんです」
「妹さんって言うと鏡さんだね」
それを聞いてミリオは寮で出久などと一緒に相手をして貰うと思ったのだが、此処である事を思い付いた。
「なら俺達も同伴しちゃっても良いかな、壊理ちゃんも興味あるだろうし」
「えっでも手合わせっつってガチバトルですよ。女の子が見ても楽しいかどうか……」
「多分楽しめると思うよ、壊理ちゃんにこの前の体育祭のビデオを見たんだけど結構楽しんでたから」
それなら大丈夫なのだろうか……少々不安な所もあるのだが壊理ちゃんも如何やら見て見たいという事なので了承する事にした。それにある意味白鳥に紹介するのも悪くはないかもしれない。そんなこんなでミリオと壊理ちゃんと一緒にグラウンドβに向かい、そこで白鳥に壊理ちゃんを紹介した。そして
「壊理ちゃん、私にもお兄ちゃんのドラゴンさんみたいな友達がいるのよ」
「わぁぁっおっきな鳥さん!!」
ブランウィングを見せて貰う事にした。壊理ちゃんは初めて見る巨大な白鳥にドラグブラッカーを見た時並に目を輝かせている。ペタペタと触ったりしながら羽を少し引っ張ったりしている。そんな少女にブランウィングは何処か慈しみのある瞳を作りながら翼で器用に撫でてあげたりしながら、軽く遊んであげたりしている。如何やら白鳥と同じく温厚で優しい性格のようである。
「悪いな白鳥、いきなりこんな事させちゃって」
「大丈夫だよお兄ちゃん、それにあんなに可愛い女の子が笑ってくれてるんだからヒーローを目指す者としては本望って奴だよ」
「俺としてもお礼を言わせて貰うよ鏡さん」
ブランウィングの背中に乗って軽く飛び回っている壊理ちゃんは本当に楽しそうだ、笑う事が出来ていなかったなんて嘘のようだ。矢張り子供は笑顔に限る、子供の笑顔を守るヒーロー……そんなものを目指すのも良いかもしれないと思っていると壊理ちゃんは満足気にしながら戻ってきた。
「凄かった!!鳥さんの背中モフモフだったよ!!」
「有難う壊理ちゃん、ブランウィングも喜ぶよ」
「因みに壊理ちゃんは鳥さんとドラゴンさんの背中、どっちがいい?」
「ドラゴンさん!!」
とミリオの質問に対して即答で答える、まさかの言葉に驚きながら理由を尋ねる。
「ドラゴンさんカッコいいし、暖かくてポカポカするの。落ちそうになると凄い気を遣ってくれるの!!」
「へぇっ~……流石お兄ちゃんのドラゴン」
「ドラグブラッカーってツンデレクール系なのかな龍牙君」
「いや俺に言われても……」
次回、龍牙 VS 白鳥、再度激突!!
リュウガ、ファム、何方が勝つのか!?