僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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衝突する白鳥と黒龍

グラウンドβでは二人の若い力が向き合っている。一方は白い翼を持つ少女、白鳥。一方は黒炎を纏う黒龍の少年、龍牙。二人は互いを真っ直ぐに見つめながら拳を握った。

 

「こうして向き合うのは体育祭以来だな」

「そうですね、あの時は観客の皆さんの反応が私には凄い不愉快でした。それなのに私は何も言えずにお兄ちゃんを守る事も……」

「対戦相手の俺を守るって言うのは可笑しいな、俺は気にしてない。俺も俺でお前の綺麗な姿には嫉妬してたからな」

 

何の変哲もない兄弟同士の会話、それに少しだけ白鳥の表情が和らいだ。今まで体育祭での事を気にしていたのか改めて兄の口からその事が聞けて少しだけ安心した様子。しかし一転して凛々しい顔つきへと変わりながら自らの隣にブランウィングを召喚する、主に付き従う従者のような姿を見せる白い翼はまるで彼女を翼で包み込むかのように翼を動かすとそのまま白鳥の身体に溶けるように消えていき、そこには白い翼と白い翼に優美な金の装飾で飾られた姫騎士が光来する。

 

「ならばお兄ちゃんが気にしないというのであるならば、私ももう何も言いません。これから私は貴方に向けて全力を差し向けます。それが貴方の身体を突き抜ける事になっても手を休める気はありません、貴方を尊敬するからこそ全力で向かいます!!」

 

凛々しい表情で勇ましい言葉を放つ妹に龍牙は頭の上に乗り続けていたドラゴンに口笛で合図を送り、手を出すとガシェットモードに変形したドラゴンが降り立つ。片手には自らの成分の入ったボトルを握りながらそれを振るう。それは彼の胸の高ぶりに呼応するように激しさを増していく。

 

「良い啖呵を切ってくれる、それなら―――俺も本気を出し甲斐があるってもんだぜ」

 

WAKE UP !! BLACK DRAGON !!

 

装着していたビルドドライバーへと差し込み準備が終わる、ボトルの内部にあった力が龍牙の周囲を取り囲む炎となって駆け巡る。炎の円陣に囲まれながらも不敵な笑みを浮かべ続ける龍牙は問いかけられる準備は良いか(ARE YOU READY?)、という言葉に対しても勢いよく答える。

 

「出来てるよ―――変身!!!」

 

WAKE UP BURNING ! GET BLACK DRAGON !! YEAH!!〉

 

炎の円陣が一転に、中央の龍牙へと収束するように黒炎の火柱を生み出す。そして龍の咆哮と共に火柱は消し飛び内部から爛々と紅い瞳を輝かせる黒龍の戦士がその姿を露わにする。それを見て白鳥は剣を手にし、構えを取りながらタイミングを計るかのように足を動かす。それに呼応するように龍牙も彼女とは逆に動きながら彼女の動きを見つめている。

 

「不思議ですね、以前はお兄ちゃんの個性は怖いと思いました。でも今は凄い羨ましく思うんです」

「俺はその後の踏陰との戦いで漸く自分に自信を持った。あいつとの戦いが俺を変えた」

「私も見ました、あの時のお兄ちゃんに私が憧れを持ちました。丁度お父さんとお母さんへの思いに影が差したからかもしれませんが」

 

会話をしながらでも相手への注意を一切解かない、一歩一歩行われる足の運び方や身体の向きなどを見ている。何かアクションを起こそうとしたら何かしらが変化する、それを見逃がさない。一瞬も緊張を解かずに相手への集中し続けている白鳥に対して龍牙は何処か自然体に近くのか片腕をそっと彼女へと向けているだけ。冷静な様子を一切崩していない、何処か対照的な姿。

 

「本気を出してくれる、と言っている割にはのんびりですね。私の油断を誘っているのですか」

 

そんな龍牙に対してまだ下に見ていると思わせたい、と考えるが笑いながら無駄だという。

 

「私は油断しません、私は絶対に!!」

「そうでもあるが―――そうでもない」

 

直後、龍牙の足元から黒炎弾が飛来する。突如の攻撃に身体に力が入ってしまい、一瞬回避が遅れてしまうが寸での所で後方へと飛び退くことが成功するが直後に龍牙の正拳が飛んでくる。それを剣で受け止めるが怪力の力を受け止め切れずに、後ろにのけぞってしまう。

 

「ぐっ―――突然!」

「油断しない、じゃなかったかっ!?」

「してなかったけどしちゃったの!!」

 

更に押し込んでくる龍牙のそれを逆に利用するように後方へと飛び退いて距離を取ろうとするのだが、そこへ龍牙の右腕に出現した龍頭から黒炎が飛んでくる。距離を取ろうとしたことが完全に読まれていた事を理解しつつも翼を広げながら自分を包むようにガードを固める。そして黒炎を振り払うように翼を広げた時、白鳥の手には純白の盾が握られていた。

 

「油断も隙もないってこの事ね!!」

 

そして同時に理解する、今のやり取りだけでも分かる。自分と兄との力量の差がハッキリと、兄は完全にドラグブラッカーを組み込んだ戦術を確立しており、それを完璧に扱える。そしてそれらを活かすだけの戦闘経験を行って来ていた。それが決定的な自分になくて兄にはある大きな差を生み出している。

 

「―――お兄ちゃん、もう一度言うね。本気で戦ってね、手を抜いたりなんかしたら怒るから」

「随分念入りに言うんだな」

「私はもっと先に行きたい、お父さんとお母さんなんか目じゃない位に大きくなってやるの」

「言うな」

 

自分とは違う10年を過ごしてきた白鳥にしては随分と強気且つ何処か両親を粗末に扱っているような言葉にそんな言葉がつい出てしまった。

 

「お父さんとお母さんは私を大切にしてくれてる、それは本当に嬉しいし感謝してる。でも私は軽蔑してる、お兄ちゃんに敬意を示さないから。だから私はあの二人を否定してやるの、私なりのやり方で」

 

白鳥が過ごしてきた10年は龍牙の物とは全く違う。二人からの愛をタップリ浴びながら様々な教育を受けながら両親やそのサイドキックから個性の指導や訓練を受けてきた。だが兄を見るたびに思う。どれだけ自分が優しい物を受けてきたのかを。そんな優しさでステインと対した時自分は如何したか、緑谷に庇ってもらわなければいけない程に弱かった、ステインの意志や強さに飲まれていた。精神的に自分は弱かったと思い知らされた。

 

「だからブランウィングに誓ったの。この子の為にも私はもっともっと大きくなってやるって、その為にはお兄ちゃんの強さも飲み込んで自分の強さに変えてやるって位に強くする。だから―――」

「もういい、もう言わんでいい。それなら―――」

 

妹の言葉を打ち切った黒龍が相棒であり自分自身でもある黒龍を呼び出し、共に妹を睨みつけながら問いかける。覚悟は良いかと、師匠譲りの威圧感に気押されそうになりながらも必死に抗いながら真正面から睨み返す姿に満足気に笑いながら龍牙は改めて構えを取った。

 

「なら見せてやるよ―――俺達が紡いできた時間の重さって奴をな!!」

「感じさせてよ、お兄ちゃんの重みを!!」


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