僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
その日、多くの人々がそれに意識を注いでいた。この日に行われる物は現代社会において大きな意味を持っている。それはヒーロービルボードチャートJP。オールマイトの引退を決定づけた事件である神野以来初めてのチャートの発表は大きな意味になる。今までこの発表の場にヒーローらが登壇する事などはなかった、だが今回は特別。そんな場に登壇した居るヒーローらに注目が集まっていた。その中には―――龍牙の憧れとするヒーローも当然のように姿を見せた。
「№10、前回よりもダウン!だがしかしその実、衰えを知らずいまだに高みへと昇る!!具足ヒーロー・ヨロイムシャ!!」
「このような番付、全て時運により誤差。上位3名を除けばな」
「№9、キレイにツルツルのCMでお馴染み、洗濯ヒーロー・ウオッシュ!!」
「ワシャシャシャシャシャシャシャ!!」
トップ10の一番下から発表されていくヒーロー、大ベテランのヨロイムシャにTVを付ければ一度は目にするCMでお馴染みなウオッシュ。皆に顔が知られているヒーローばかりが矢張り名前が上がって行く。当然と言えば当然だろう、そして次に名前を上がったヒーローは少しだけ照れくさそうにしている。
「№8、前回よりもワンランクアップ!!ドラグーンヒーロー・リューキュウ!!」
「私ちょっと見合ってないかもしれないけど、素直に嬉しいわね」
龍牙のインターン先であったリューキュウ、彼女は前回は№9だったが今回はワンランクアップしていた。ヴェノムなどと共に現場に出たりなどもしている影響からか、彼女の株も大きく持ち上がっている。ヴェノムの補佐などもあって一気に出来る事が増えたのもランクアップした大きな要因だろう。因みにヴェノムのランキングは65位、矢張り見た目なども影響しているだろうが、それでも凄まじい順位。
「№7、大躍進そして成長し続ける期待の男!!シンリンカムイ!!」
「光栄」
「№6、THE・正統派な男は堅実に順位をキープ、シールドヒーロー・クラスト!」
「オールマイト……!!」
№7にはMt.レディとエッジショットとチームを組んだシンリンカムイ、№6には王道を征く正統派ヒーローのクラストがランクイン。未だに新人扱いをされるシンリンカムイだがその実力の高さが大きく評価されている。ヴィランの捕縛率などはトップクラス、同時にMt.レディとの熱愛報道などもあったりもする彼。彼女はノーコメントで何も言わないが、実際は如何なのだろうか。龍牙辺りが聞いたら答えるのだろうか。
一方のクラストはオールマイトいう大きな存在がもういない事に涙を流しつつも、それを飲みこんで前に進んでいかなければならないと声を大きくして叫びをあげている。
「№5、勝気なバニーは堅実にランクアップ!!ラビットヒーロー・ミルコ!!そして№4、ミステリアスな忍は解決率も支持率も鰻登り!!忍者ヒーロー・エッジショット!!」
「チーム組んだんたってな弱虫め!」
「黙らっしゃい公の場だぞ」
そんな風に語っているが最近は戦兎と毎日メールやら電話でやり取りをしているミルコ、少しずつではあるが以前のような関係に戻りつつあって自分のコスチュームの開発をお願いしており、現在交渉中との事。もしかしたらラビルド再結成の日も近いのかもしれないのでエッジショットの事を強く言えないのだが、それは彼女の胸の中にしまわれている。
そして続く№4なのだが、エッジショットは支持率、解決貢献度などで大きく伸びているが、それでも活動休止中なのに支持率が随一であるファイバーヒーロー・ベストジーニストと同率であった。それだけベストジーニストが多くの人たちに復帰を望まれているという事である。そして次なる№3、その人物にライトが上がった時、それを見ている龍牙は胸が震えてしまうと同時に笑った。
「№3、凄まじい大躍進!!№10から一気にランクアップして驚異の男!!大海魔クラーケンの確保が大きな要因か!?鯱ヒーロー・ギャングオルカ!!!」
「……光が強いな」
そう、龍牙の師であるギャングオルカがトップ3に入ったのである。龍牙がインターンに入って以来自分も師として立派にならんと行けないという自覚が彼に大きな力を与えていた、結果としてMt.レディの倍以上にもなる巨大ヴィランで大海魔という異名さえつけられたヴィラン、クラーケンをたった一人で確保した。そして神野では他のヒーローが行動不能になったにも拘らず、たった一人でオール・フォー・ワンを一時的にとはいえ捻じ伏せた末に人質を救い出した事も大きく評価されている。
「(見てるか龍牙、お前が俺をここに立たせてくれたんだぞ。感謝してるぞ……息子よ)」
登壇したギャングオルカが眩い光の中でここに立つだけの力をくれた息子に対する感謝を述べながら堂々としながら胸を張っていた。彼自身ランキングにはあまり興味は示さなかったが、それでもそれだけ世間が自分に注目しているならばそれだけの責任があると考えている。だからこそ彼は力を尽くした、その結果が自分を此処まで伸ばしたのだと思っている。
「№2、マイペースに!しかし猛々しく!破竹の勢いで今2番手へ!!ウィングヒーロー・ホークス!!」
「んな大ゲサな、言いすぎ」
№2には常闇が職場体験、そしてインターンで出向いたウィングヒーロー・ホークス。22歳である彼だが18で事務所を立ち上げその年の下半期には既にトップ10に入っていた。そして今№2へ、彼を人はこう形容する。速過ぎる男と。そんな男よりも上に位置する炎を纏う男が今日―――頂点へと昇りつめた。
「そして暫定1位から今日改めて正真正銘の№1へ、長かった!!!フレイムヒーロー・エンデヴァー!!」
遂に至った、長年二番手として頂点の背中を見続けていた男がその場所へと昇った。平和の象徴、偉大な男の背中を長らく追い続けてきた男、エンデヴァーが№1の座へと昇りつめたのだ。オールマイトの引退によるそれは本人としては不服かもしれないがそれでもエンデヴァーは堂々としながらそこに立っていた。
そんな男の登壇の後、ヒーロー公安委員会の会長が今回の発表が節目になると判断してヒーローをこの場に招待しての発表に踏み切ったと述べた後にそれぞれのヒーロー達へとインタビューが行われていく。そんな中、ギャングオルカの隣の№2、ホークスは何処か退屈そうな表情を作りながら不満そうにしている。
「お前としては不満か」
「あっ見えてました、すいませんね。相変わらず怖い顔に皺寄せちゃいましたか」
「……まあいい、言わんとしている事も分からんでもない」
オルカの言葉に本当に分かってんすかぁ?と軽口を飛ばすホークスだがそれに対してオルカは嫌な顔一つしない。良い事は言っているがどれも普段通りというか安定している物ばかりでヒーローらしくない、もっとヒーローらしい事が聞きたいという事だろう。
「では御次は怒涛の追い上げを見せたギャングオルカにお言葉を頂きます!!」
「おう、若造見ておけ」
そう言うとオルカはマイクを渡して貰いながら深く息を吸いながら、鋭い瞳を作りながらいった。
「ハッキリ言うぞ、貴様ら何時までいない人間の背中を見てるつもりだ」
そんな言葉にどよめきが生まれた、そんな事お構いなしにギャングオルカは続けざまに放った。
「オールマイトはもういない、いない人間を何時まで求め続けている。過去は過去で割り切れ、マイナスを見続け、それだけを求めてプラスになるのか」
誰もが分かっている言葉を放つ。分かっていても求めてしまう、世間は平和の象徴であったオールマイトを未だに求めてしまっている。それは余りに偉大な姿だったからだ、誰もが認める№1ヒーローの力を、言葉を、影響力を。
「オールマイトは確かに凄かった、あいつの代わりなんていないのも確かだ。だがそれだけだ、代わりになる?ふざけるな、俺は平和の象徴の後釜なんて御免だ。俺は俺なりにやる、認めろ―――俺達を」
力強い言葉が広がっていく、誰もが受け入れられずに過去を求めていたのにも拘らず現在へと目を向けさせる強い揺さぶりが掛けられた。今がマイナスに向けられている視線がゼロへと向けさせた。過去に縛られた者たちが、そこにある力へと。
「俺には一人の弟子が居る、そいつが俺に力をくれた。俺の目的はそいつにバトンを渡す、そいつに次のヒーローの世代を託す事。その為に俺は力を尽くす、ヒーローとして―――ギャングオルカは此処からがスタートだ」
そう言い切ったオルカは静かにマイクを下げながら一歩後ろへと退いた、鋭い瞳と共に放たれた言葉に全てが飲まれていた。同時に何かを変えられた、揺さぶられていた。誰もが求め続けていたものから何かがズレた。そしてオルカは静かに不敵な笑みを浮かべながらホークスを見ながら言う。
「若造、満足したか」
そんな言葉にホークスは笑みを浮かべながら両腕で〇を作ってからサムズアップした、自分の言いたい事も含めて言って貰えて満足と言いたげな笑いにギャングオルカはそのままホークスを介して次の頂点へとそれを渡した。
「決めろ―――№1」
「ああっ―――俺を見ていてくれ」
衝撃を与えたヒーロービルボードチャートの発表、だがその衝撃は決して悪いものではなく、良い衝撃を与えていた。新たな№1の誕生を、№2と№3は拍手をもって祝福した。