僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「いやぁ普通に良い感じでしたね、まあ半分以上オルカさんに持ってかれてましたけどね確実に!!」
「……おい小僧、そんな事を言いに来たのか」
「ゴーメイワークオカケシテマース」
「謝罪するなら感情を込めろ!!」
ビルボードチャートの発表後の控室、新しく№1に就任したエンデヴァーの部屋には3人の人影がある。一人はエンデヴァ―、ホークス、そして―――ギャングオルカ。今回のチャートにてベスト3に入ったヒーローが一堂に介していた。元々ギャングオルカは来る気はなかったようだがホークスにエンデヴァーを交えた話をしたいという事でそこにいる。
「いやでもエンデヴァーさんを見て安心したのは確かですよ、俺は特にオールマイト推しでもない。それでもあの人の引退はショックだった。それは世間じゃ俺なんかと比較にならないって事になる」
平和の象徴、オールマイト。日本が他の国と比べてヴィランによる犯罪発生率が低いのは偏にオールマイトという精神的な支柱があったからこそ。だが今それは失われた、その代わりが必要となってくる。人は求めるだろう、オールマイトに変わるそんな存在を―――
「だけどオルカさんの言葉でそれも意味が変わった、それでもあなたがその中心である事には変わりない」
だがそれをオルカが変えた。これからの時代は全てのヒーローが支えていく、ヒーロー全体がこの平和を支える柱になるのだ。オールマイトでも出来ない事、それは一致団結した大勢による莫大な力だ。オールマイトのような存在はそれを促す事が出来ても自分ではその代わりには成り得ない。だからこそ、自分達がその力になるのだとオルカが示した、そしてエンデヴァーがその力の中心となりこれからの時代を引っ張っていく。そんな中心に成り得る存在を見てホークスは何処か安心していた。
「それで結局何をしに来たんだ若造、そんな事を言いに俺を呼んだのか」
「あっこっからが本番っス、厳密にはエンデヴァーさんだけなんすけど出来ればオルカさんにも聞いてほしい事ではあります」
「俺にも、か」
「ええっ―――俺はエンデヴァーさんにチームアップを要請します」
「……何?」
それを聞いて訝しげに眉を顰めた、態々そんな話を持ってくるほどホークスという男は弱くはない。いやヒーローの中でも屈指の実力派と言っても過言ではない力を有している筈。それなのに、何故……。そんなオルカも耳を澄ませる中でホークスは言う。
「今俺の地元だとなんか嫌な目撃談が増えてるんすよ、脳無って覚えてます?」
「―――当然だ」
「……ああ、忌々しい程にな」
脳無、まさかここでその名前を聞くとは思わなかった。脳無、敵連合によって生み出される個性を複数所持し様々な手段によって強化を施された傀儡。神野の一件ではエンデヴァーも戦っている上にギャングオルカはその脳無に息子を捕えられている。
「加えて、死穢八斎會で龍牙君でしたっけ。彼が遭遇した撃破した脳無の
ハイエンドモデル脳無・龍騎。龍牙の個性、それがオール・フォー・ワンによって歪む前の状態の龍騎。それの個性を持つ脳無の個体。龍牙曰く、ヴェノムと一緒でなければ即死だった、全力を超えた先を発揮しなければ確実に殺されていた、と断言する程の戦闘力を持つ脳無。確定的な意見は言えないがそれの同一種である可能性が高いという。
「だがホークス、こいつにチームアップを依頼をするにはそれなりの確証があるのだろうな」
「いえガチ噂話オンリーです」
「出てけ貴様ぁ!!!」
真顔でそう言い放つホークスに流石にイラっと来たのかエンデヴァーは顔を真っ赤どころか炎に包みながらキレた。オルカも呆れているのか溜息を吐いた。
「でも、確実に何かある。それは間違いないです、俺が保証します」
「噂話を根拠に貴様の地元、九州へ飛べというのか」
「はい」
そう断言するホークスに渋い顔を作るエンデヴァー、流石に根拠としては薄すぎる。だが―――この確信は何かあると自分の勘も告げている、龍牙が遭遇した同一種と思われる存在、それが本当にいるとしたら確実に叩いておかなければ被害はとめどなく広がっていく事だろう。何とも言えないが……一度出向いてみるのも悪くはないかもしれない、それにこの小生意気な小僧の力も目にしておくのも今後の為になるだろう。
「今回だけだ、次からはまともな確証を持って俺の所に来い」
「うっす助かります~」
「それで俺に聞いてほしいのは終わりか」
「あっいえ、オルカさん―――龍牙君にお話しさせて貰っても良いですかね」
「話を、だと?」
チームアップをするならばもう自分はいらないだろうと思ったのだが、如何やらまだ用はあったらしい。ホークスの用件とは龍牙に対する事だったようだ。
「龍牙君ってオルカさんのお弟子さんで息子さんなんですよね、それだったら貴方に話をするのが筋ってもんでしょ」
「……」
「あっその顔は何で弟子は兎も角息子って事は知ってるかって事っすね。これでも見聞は広いんで、根津校長から聞きました。そしたら師匠でもあるオルカさんにも話を通してくれって言われまして」
「根回しも早過ぎる男かお前」
そこまでなっているならばもう自分の出る幕などない、根津に許可を取っている時点で自分は両手を上げて認めるしかなくなる。だが同時に疑問も生まれる。
「龍牙に何を聞くつもりだ」
「まあ色々とですけど、折角なんで次世代のヒーローを託せるかどうかも見たいなと思いましてね」