僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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限界を超えたツクヨミと黒龍

「だあああああぁぁぁっっっ!!!」

「はぁぁぁぁっっ!!!」

 

二人のヒーローの激闘は続いている、周囲には既に人影はいない。最初こそそれを見つめようと避難をしない市民もいたようだがその戦いの余りの激しさと異常なまでの炎の嵐に恐ろしくなったのか逃げ去っていった。爆炎と黒炎が周囲を焼き、融かしてしまっている戦場。そこで必死に戦い続けている龍牙と常闇に周囲に気を配っている余裕など欠片もなかった。目の前の脳無を倒す事だけに集中しなければ自分が食われかねない状況下。

 

「常闇使え!!」

「すまん!!」

 

常闇に迫りくる爪を龍牙はドラグセイバーを投げ渡す事で防御させる。生憎剣など使った事ない常闇だが、それでも鋭い切れ味と優れた強度は彼の身を守る盾としても機能する。巨体から放たれる爪の一撃、それを受け止めるドラグセイバーも酷く軋んでおり今にも折れてしまいそうな勢いに舌打ちをする。

 

「我が友の刃を、折られてたまるか!!」

 

腕に力を込め、踏ん張りを決めながら腰を回して強引にそれを受け流してそれを地面へと炸裂させる。それは地面に炸裂すると同時に深い亀裂を生み出した。あれが自分の身体に当たっていたら―――という想像が脳裏を過った瞬間に追撃が迫って来た、一瞬の思考のロスが隙を生んだ。

 

「しまっ―――!!」

「腕部集中、ドラゴン・ストライクゥ!!!」

 

振るわれようとしていた鋭い一撃を向こう側へと至った龍牙が阻止する。真横からドラゴン・ストライクを炸裂させる事でコースを変えて直撃を防いだ。

 

「変な事なんて考えてる暇はないぞ!!」

「分かっている!!」

 

常闇とて分かっている、こんな事を考えている暇があったら腕を、脚を動かして戦わなければいけない事ぐらい。それが致命的な隙を生んで龍牙に自分を助けさせる無駄を生む事も承知している。それでも想像してしまう、この脳無の力は尋常ではない。それらを辛うじて捌いているがそれが一度でも炸裂したらと考えると……。

 

「如何した、ヒーローの力はこんな物か!!」

「焦るなよ化け物、俺も相棒もこっからが本番だぁ!!」

「―――っ……ああそうだ、我も此処から全開だ!!!」

「そう来なくて面白くない!!」

 

それなのに龍牙は自分の事を信じている、相棒と呼んでくれている。助けられてばかりなのに……そんな龍牙に報いる為に常闇は立ち上がって拳を握って立ち向かう。目の前で広がっている悪夢へと。

 

「あの二人を援護しろ!!」

「こっちだ早くしろ!!」

 

そんな激闘の地へとプロヒーロー達が到着し加勢を行おうとする、だが彼らは脳無の恐ろしさを理解していなかった。それは現地のヒーロー達の援護攻撃をその身に受けると目の色を変えて龍牙と常闇に背を向けると、憤怒を露わにしたような叫びをあげるとそちらへと突進を行った。

 

「こ、こっちに来るぞ!!」

「撃て撃て!!」

 

射撃系の個性を持つヒーローは攻撃を開始するのだが、それらでは装甲に傷もつける事も出来ずに唯々脳無の怒りを買うだけであった。脳無の凶刃がヒーロー達へと振り下ろされようとするのを必死に抑え込んでいる影と突進を受け止めている黒炎がある。

 

「ぐぅぅっ……!!!」

「なんてパワーなんだこいつっ……!!」

 

背後から黒影の腕を伸ばして攻撃を止める常闇と正面から突進を受け止めた龍牙、双方もパワーアップして通常時よりも比較にならない力を発揮できるはずの状態であるのにも拘らず、脳無を抑えるのが精いっぱい。

 

「邪魔だ、先ずはそのゴミムシからだぁぁぁあああああ!!!!」

「があぁぁぁぁぁぁっっ!!龍牙、まだいける、よなぁ……!!」

 

ブチブチと嫌な音を立てながら黒影の腕が限界の悲鳴を上げている、それでも離すつもりなどは毛頭ない。此処で離したら負担が一気に龍牙へと行ってしまう、あれだけ迷惑を掛けているのにこれ以上掛けてたまるかという思いが常闇の力を増させていく。そんな言葉に応えるかのように龍牙も口角を持ち上げながら言った。

 

「あたぼうよ相棒……俺達の合言葉、それがある限り俺達はどんどん前に行くっ……!!」

「更に、向こうへ―――!!」

「「Plus Ultra!!!」」

 

絶対に退かない、此処で退いたら全てが崩壊する。そう思う、此処が最前線であり最終防衛線である。逃げ場などない、引くべき場所などない。やるべきことは唯一つしかない―――この脳無を倒す事、それだけだ!!!強まっていく常闇の力と龍牙の力、それを今ここで解放して確実に仕留める!!

 

ド ラ ゴ ニ ッ ク ス ト ー ム イ ン パ ク ト

 

DRAGONIC STORM IMPACT(ドラゴニックストームインパクト)!!!

 

「オラアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「ムゥゥウウウウウウウウウウウン!!!!」

 

渾身の一撃が脳無の顎を捉える、渾身の力で突進していた筈の脳無を吹き飛ばす力。その反動からか龍牙の腕は崩壊するように鎧の一部が壊れていく、完全に身体のリミッターが外れてしまい限界以上の力が溢れ出している、がそんな事知った事ではなかった。今こいつを倒すのならば構わないと言わんばかりに炸裂させる。そしてそれを受け動きが止まった脳無を常闇は渾身の力を込め、指を脳無へとめり込ませながら天へと放り投げてしまう。もうこれ以上はもう自分達の身体が確実に持たない。これで決めるしかない。

 

「決めるぞ、常闇ぃぃぃい!!!!」

「ああ、合わせろよ龍牙ぁ!!!!」

 

龍牙は胸部の龍から黒炎の塊を常闇へと向けて放った、そして己は自らの周囲に出現したブラックドラグランザーへと飛び乗った。黒龍は咆哮を上げながら天へと舞いながら脳無の上を取ると空中で一気に身体を変化させるとバイク形態へと変化するとそのまま黒炎を纏った、これから放つは最強の一撃、いや究極の一撃、これで決める―――!!

 

「はぁぁぁぁぁ……!!!」

 

龍牙より黒炎の塊を受け取った常闇は静かに意識を練り上げていく、イメージするは最強の自分。龍牙の隣に並び立つ事が出来る最強の自分を、そして開眼する。それと同時に黒炎は自ら意志を持つかのように黒龍を模ったような形へとなりながら常闇の周囲でとぐろを巻いて咆哮を上げた。そして思い描く、過去に己の最強の一撃とぶつかり合った龍牙の一撃を―――俺のが体現する!!

 

「行くぞ!!!」

 

飛び出した常闇と共に黒炎は昇っていく。そして彼を押し出すかのように一気に同化し力となりながら最強の一撃となって常闇と共に龍牙と脳無へと向かって行く。だが脳無もそれらを見て叫んだ、全身から炎を噴出させていく。さながら活火山の大噴火のような炎を放出しながら、二人を迎え撃とうとしている。

 

「これが俺達の―――」

「全力全開いや―――」

「「Plus Ultra―――」」

 

「消えてなくなれヒーローがぁあああああああ!!!!」

 

ド ラ ゴ ニ ッ ク ス ト ー ム フ ィ ニ ッ シ ュ

 

DRAGONIC STORM FINISH(ドラゴニックストームフィニッシュ)!!!

 

 

深淵闇躯(ブラックアンク) 冥府煉獄脚!!!!

 

 

ド ラ ゴ ン プ レ ッ シ ャ ー ユ ー ト ピ ア

 

DRAGON PRESSURE(ドラゴンプレッシャー)

UTOPIA(ユートピア)

 

 

激突する三者の必殺技、黒炎を纏う龍戦士究極の一撃。黒き影が最も信頼する男の最強の一撃を自らの身をもって放つ一撃。無数の力を宿す怪物が全身から放出する爆炎の超熱線放射の一撃、それらが激突する。九州の一角で目撃されたのは空に突如生まれた太陽、地上の全てを焼き尽くすような獄炎の太陽。それらを貫かんとする上下から迫る黒い炎。それは太陽へと到達すると―――凄まじい爆炎と火柱となって天へと伸びていった。天へと、本当の太陽へと捧げられるような炎が鎮まった時……戦いの結末が、明らかになる。


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