僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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入院中の黒龍

九州での一大決戦とも言われつつあるハイエンド脳無との戦い、それによって受けた傷によっていまだに入院を余儀なくされている龍牙は大人しくベットの上で横になりながら何もすることが無いので眠ったり、スペイン語の勉強の続きなどをして戦兎とミルコが帰った後も時間を潰していた。多くの傷は塞がっているが身体に蓄積しているダメージはまだ回復しきっていない。

 

「―――いつっ……脳無のパワーはやっぱり計り知れないな……」

 

肩や腕、まだまだ痛みを強く持つ場所は多く存在する。流石はドラグブラッカーの拠り所として生み出された脳無なだけはある、最低でも自分並のパワーがあったのだから途轍もない強さだった。エンデヴァーの方の脳無も凄まじかったという話を聞いたが、自分の戦った脳無よりもやばかったのだろうか。いや既に済んだ事を考えるだけ無駄という物だろう、今は余計な事は考えずに身体を休める事に専念しよう。

 

そう思っていると近くに置いていた携帯が震えていた、この病院はヒーローなどを多く診療する病院なので病室でも携帯などを使う事は許されているので遠慮なく電話を取る事にする。

 

「はい、黒鏡です」

『やあ龍牙、僕だけど今大丈夫かい』

「校長、ええ大丈夫です」

 

電話の相手は根津であった、思わず声色が高くなって嬉しそうな物を露わにしながら電話を持つ。

 

『戦兎から話は聞いたけど活躍は聞いたよ、本当に凄いじゃないか』

「俺は俺がやるべき事をしただけです、あの脳無は俺が倒さなきゃいけなかったから俺は前に出た。まあその結果が無理が祟っての入院ですけど」

『僕の君の戦いはTVの中継で見させてもらってたけど、本当に凄まじい激闘だったね……常闇君は昨日こっちに戻って来たけど皆に質問攻めにされてるみたいだよ』

 

怪我が龍牙に比べて軽かった常闇はリカバリーガールの治癒と十分な休息で回復する事が出来たので龍牙より一足早く雄英へと戻っている。が、彼を待っていたのは仲間からの凄まじいまでの追及や質問であった、ドラゴンライダー・リュウガと漆黒ヒーロー・ツクヨミ。この二つの名前は大きく取り上げられて今は注目の次代のヒーローとされている。そんな彼に対しての質問は凄い事になっており、常闇はそれに対する対処で大変な思いをしているとの事。

 

「今度踏陰に謝っておきます、まあ多分も俺も帰ったら同じ事になるんだろうなぁ……」

『それは覚悟しておいた方がいいかもしれないね、今は君は超絶有名人なんだから。君に対する取材も凄い来てるみたいだし』

「それは知ってますよ、病院の外に凄い人がいますもん」

 

ベットから動けないので鏡の中にいるドラグブラッカーと視界を共有して窓の外へと目を向けてみると、そこには多くの報道陣が詰めかけている。何処から漏れたのか自分がこの病院に入院している事は分かっているのか取材目的の人たちが詰めかけているのだが、それをプロヒーローと警察が協力して防いでくれているらしい。自分としてはゆっくり養生したいので取材を受ける気はない。それを見てげんなりしつつ黒龍に礼を言いながら改めて電話を手に取る。

 

「マスコミってこっちが入院してるって事理解してるんですかね、あれじゃあ他の患者さんにも大迷惑ですよ」

『報道の自由を主張して他の自由を侵害するのが今のマスコミの大半だからねぇ……でもその内強制解散命令でも出されるんじゃないかな、話を聞いた様子だと救急車も入るのに時間が掛かりそうだし』

「前の特田さんみたいな人だったら喜んで取材受けるんですけどね……」

 

しかしヒーローでやっていくうえで仲良しな記者や出版社は作っておくべきだという話を以前ピクシーボブから聞いた。特田に相談してその辺り、信頼出来る所でも紹介して貰うべきだろうかと少しばかり思案するのであった。

 

『とにかく僕としては龍牙が大丈夫そうで安心したよ、後1週間位で退院だっけ?』

「ですね、明後日にもう一回ばっちゃんに治癒して貰ってそれから明確に退院日が決まりますけど」

『そうかそうか、それじゃあ確り休んでおくんだよ。葉隠さんは入院中だからって遠慮してるみたいだから僕の方から元気そうだって事は伝えておくから』

「それじゃあお願いします」

 

それを最後にして龍牙は電話を切った、きっと葉隠にも大きな心配を掛けてしまったのだろう。顔を合わせて謝らなければならない、以前の脳無との戦いの後でも彼女を泣かせてしまった。今回は如何だろうか、TVで中継されていたらしいがどのようにみられただろうか。不安だろうか、自分が勝つと信じてくれた、なんにせよ話し合いは必要になるだろう。

 

「―――今は寝よ」

 

気分が良い、根津と話して満たされている。心地良い浮遊感が身体を包み込んでいる、今はこの良い気分のまま眠りにつく事にしよう。瞳を閉じると然程時間もかからずに龍牙の意識は微睡の中へと落ちていき、静かな寝息を立てながら夢の世界へと旅立っていった。そんな風に龍牙が眠りについた事、彼の眠りを妨げないような程に静かに扉が開きそこから影が病室へと入り込んだ。

 

「こんにちわ~……ってあれ、龍牙君お休み中だったみたいね……これはタイミングミスったわね……」

 

そんな影は龍牙が眠っている姿を見て頬を欠きながらも出直すべきかと思案する、そして布団が確りかかっていないのでかけ直してあげながらも龍牙の幸せそうな寝顔を見て思わず、それに見惚れてしまう。

 

「やばいなんて幸せそうな龍牙君……いけない鼻血が……」

 

そんな影の正体はピクシーボブこと、土川 流子であった。龍牙が戦っている最中、ちょうど出動中だった彼女は仕事が終わってから龍牙の事をニュースで知り、大慌てで九州まで飛んできたのであった。だがしかし、無事な事が分かって一安心……したのであったが、龍牙の幸せそうな寝顔を見て鼻血が出てしまったのが引き金になったのか、欲が出てしまう。

 

「そ、添い寝とか……いやいっその事……ゴクリ……」

 

と色々考えたのだが、結局何かしらしようとしてベットに手を掛けた瞬間に龍牙が目を覚ますというミラクルが起きて彼女の思惑は外れる事になるのであった。




尚、龍牙の唇を奪おうとしていた模様。

龍牙のファーストは守られた。

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