僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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嵐へと備える黒龍

入院してから日が経過し、あと数日で退院という所で龍牙は漸く顔にしていた包帯が取れる事になった。少し前から取っても構わないと言われていたのだが何となく取るのを待っていた包帯を今日外してみる、そんな日は先日訪れてくれたピクシーさんこと流子も居合わせており少しドキドキしているような面持ちで包帯を外す瞬間を待っている。顔の一部を覆い隠すように巻かれていた包帯をゆっくりと取ってみる―――そこには新しい古傷があった。

 

「やっぱりな、こうなってたか……」

 

頬から右目の辺りまでに出来ている軽く抉れているかのように出来ている傷、脳無の一撃によって生まれた遂に刻まれた顔の傷はリカバリーガールの治癒で漸くここまでの物に回復したので良くなった結果なのである。

 

「龍牙君の顔にこんな傷をつけるなんて……脳無許すまじぃ……!!!」

 

流子は既に完全に捕縛されている脳無に対してすさまじいまでの怒りを感じてしまう、彼女が龍牙に惚れている要因は顔だけではないが精悍で凛々しい顔立ちも彼女としては非常に胸を打つポイントでもあった―――だが、見方を変えてみると傷がある姿も酷く魅力的に映っている。

 

「う~ん……目の辺りだけなら眼帯を着けるって手もあったけどこれじゃあ隠し切れないな……踏陰に借りた漫画にあった眼帯キャラにちょっとだけ憧れたんだけどなぁ」

 

右目から頬にかけての深く痛々しい傷、それが醸し出すのは生死を掛けた戦いを乗り越えた戦士の風格。凛々しさの中に猛々しさが加わって更に際立つように魅力が増している。最初こそ脳無への怒りに満ちていた流子だったが気付けば龍牙に見惚れているのか目がハートになっている。

 

「あっでも龍牙君、個性を応用した治療を受ければ傷を消す事だって出来るわよ。それをすれば顔の傷だけじゃなくて身体の傷も消せるはずだけど」

 

今の世の中、個性を応用した再生医療なども大きく発展している。それらを活用すれば顔の傷をだって消す事も出来る。あくまでリカバリーガールの治癒では治らないだけであって治そうと思えば治せない訳ではないのである。それも龍牙は知っているが龍牙はそれに対して傷は残す事にすると返答する。

 

「傷は消しません。あの脳無との戦いを忘れない為にも、あの戦いは重要な意味を俺にくれましたからそれを背負っていくには傷は遺さないと。傷は歴史です、俺の戦いのね」

 

数多く刻まれている身体の古傷、それら全ては意味を持っている。未熟な自分の失敗、必殺技の激突、本気の師との激突、オールマイトとの戦いなどなど傷自体が歴史と意味を宿している。それを消すのは自分が傷を受けた事実から眼を背ける事になるのではと考えている。人によっては何時までも過去に縛られているように思えるかもしれないが自分はそれらと確り向き合って生きていく、そう決めたのだから気にしない。

 

「そっか、うんカッコいいわ龍牙君!今のその顔も凄い魅力的よ、歴戦の勇者って風格が滲み出てる♪」

「敗北の歴史ならいっぱいありますからね」

 

そういう意味では歴戦かもしれないと軽口を叩く龍牙を見ながら流子はもう大丈夫そうな事に安心感を覚える。後は明後日に決まった退院日までじっくり身体を休めて万全な状態で雄英へと帰るだけ。戻ったらいろいろと試してみたい事もある、新たな進化を遂げたいや真のビヨンド・ザ・リュウガ。あれこそ自分の最強形態、様々な事を試して出来る事を徹底的に洗い出していくと決めている。

 

「TVで見たけどやっぱり龍牙君の反響凄いわよぉ~、二度目の変身もヘリからだったけど確り撮られたし」

「俺も見ましたよ、全然気づきませんでしたけど……あれ危険とかしっかり考えて撮ってるんですかね」

 

TVの中継はほぼ最初から中継されていた、当然龍牙と常闇が倒され龍牙の絶叫までしっかりと流されていた。だがその後、再び立ち上がった龍牙が龍を従えながら再度の変身から最後の一撃まで確りと撮影されている。最後の互いの身体を砕くような攻防からか、龍牙の事を不撓不屈と評する声も多く、不撓不屈のドラゴンライダーとも呼ばれたりしている。

 

「ああでも、龍牙君が絶叫上げた時には葉隠ちゃんが顔を卒倒しかけたってメールが来てたから戻った時は覚悟した方がいいかもしれないわね」

「や、やっぱり……ちゃんと謝るつもりではありますけどなんか怖いなぁ……」

 

葉隠とは同じ男に恋をするライバル関係だが、それだけ。対等なライバルだと決めているからか流子はそれなりに彼女に情報を流している。龍牙については自分がサポートについているから安心して欲しいという事と必要以上に攻めるつもりはなく、純粋に愛しい彼に早く良くなって欲しいだけという。なので共に居る、そういう事で葉隠も納得した。尚、流子は眠っている龍牙に手を出そうとしたがそれが未遂に終わった事は黙っておく事にした。

 

「そう言えばやっぱり流子さんと葉隠さんって仲が良いんですか?」

「まあね。同じ女同士だし色々と話したりもするしメールもするわよ、前なんて一緒にご飯食べに行ったし」

「へぇっ~」

 

龍牙的には一緒に居る時は自分を間に挟んで何やら争っているような姿を見せているので仲が良くないのではないかと思っていたのだが、それはいらぬ心配だったようである。まあその争いの大本が自分だという事に僅かながら気づき始めているが答えに指を掛けるのはまだまだ先の事だろう。

 

「そうだ、流子さん実はちょっとお願いがあるんですけどいいですか」

「何々お姉さんに何でも話してみなさいって」

「―――本当の意味で俺の味方になって貰っても良いですか」

 

その言葉を聞いた時思わず瞳を細めた、そして同時に味方になると即答しつつも尋ねる。

 

「どういう意味かしら、私は最初からあなたの味方よ。でも本当のってどういう事かしら?」

「順序逆だと思うんですけど、実は白鳥から根津父さん経由で連絡が来たんですよ。ちょっと面倒な事になるかもしれないので備えたいんです」

「詳しく聞かせて頂戴」




龍牙の傷はセンチメンタリズムな乙女座こと、グラハム・エーカーみたいな感じです。

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