僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「よぉっ龍牙、来てやったぞ」
「……いきなりそんな風に顔出されると心臓に悪いぞ」
「俺らしいだろ」
退院して飛行機に乗って東京まで戻ってきた龍牙、流子もいるが仕事の関係でそろそろ抜けなければならないという事で涙ながらに空港で別れる事になった。そんな彼女と入れ替わりになるように護衛に入ったのはヴェノムだった。空港の天井から蜘蛛のように降りてきたヴェノムの顔が視界一杯に広がった時にはもう心臓が飛び跳ねた。ある意味自分よりもヴェノムの方がお化け屋敷には向いているのではと思うほどだ。
「というかお前何でこんな堂々と来てんだよ」
「一仕事入って急いできたもんでな、んじゃ行くぞ」
言われるがままにヴェノムの後に続くような形で空港を進んでいく、巨体のヴェノムだけ会って周囲から凄まじく注目を浴びる。逆を言えばヴェノムばかりに視線が向かって自分には向いていないとも言えるのだが……微妙な気がする、確かに護衛という意味では適任かもしれないが目立ちすぎるだろう。
「九州だと大変だったみてぇだな、俺と一緒なら楽勝だっただろうが」
「それは言えてるかもな、前の脳無はお前と融合してたしお前の能力がプラスされたのが大きな勝因だったって思い知らされたよ」
「だろうな、また融合するか」
「そう気軽にするでもないと思うが……」
そんな軽い言葉のキャッチボールをしていると背後からボールが飛んできた、龍牙は対処しようとするがボールはイレギュラーバウンドでヴェノムの後頭部へと向かって行く。だがそれはヴェノムの背中から伸びた四本の腕によって受け止められた。そしてボールを持ち主と思われる子供へと投げ返す。
「ありがと~」
「気ぃつけろ小僧、空港でやるもんじゃねえぞ」
「は~い」
なんだかんだでヒーローとして活躍しているヴェノムは見た目故に近づいてくる人は少ないが、人気はある。見た目の強面だが強さは折り紙付きな上にちょくちょくスーパーにカゴいっぱいにチョコを入れて並んだりもしている姿が目撃されており、それがギャップを生んで人気の一因になっているらしい。因みに子供は割かし平気なのか平然と話しかけたりサインを求めたりするらしい。
「んでこれから雄英に行くけど途中寄ったりすんのか」
「いや真っ直ぐ向かう、というかどうやって向かうんだ?」
「んなもん黒糸で飛んで行けば直ぐだろ、信号に引っかかる事ねぇぞ」
「パトロール中のプロヒーローに引っかかるわ」
「安心しろ、バレないようにする」
何故か自信タップリに語るのだが、色々と不安なのでやめておく事にした。根津に連絡した結果、既に迎えを送ってあるとの事、その迎えというのは戦兎だった。戦兎の運転する車で雄英へと向かっていく事になった、尚ヴェノムもちゃんと一緒である。
「龍牙、結構それに合ってるな。デザイン面も吟味した甲斐があった」
「何だそれ唯のグラサンじゃねえのか」
「俺が唯のグラサンなんて作る訳ないだろ?それは俺が構築した理論やら技術やらを詰め込んだ超ハイテクモニターなんだよ」
「えっこれそんなに凄いんですか」
箇条書きにしていくと……素材は戦兎が開発した形状記憶液体金属なので耐久性も折り紙付き。連絡機能、ズーム機能、眼精疲労の自動回復、視覚混乱の抑制と視力面のサポートやらが詰まった多機能搭載サングラス型モニターがこれ。一体幾ら掛ったのだろうか……それを聞いて見ると戦兎は含みのある笑いを浮かべながら
「ちょっと言えない位♪」
と末恐ろしい言葉を放つのでそれ以上追及するのはやめておいた。後、これは変身の際に付けておいても問題ない代物なので付けたまま個性を発動させて貰っていいとの事、至れり尽くせりである。
「そうだ、一つ言っておく事があったぞ。先生宛に連絡が来たらしいぞ、寄越してきたのはビーストマンとミラー・レイディ。お前と是非とも話をしたいって言ってきたらしいけどお前、話する気はあるって言ったらしいけどマジか?」
「ええ、もう来たんですか連絡」
如何やら既に話が回って来ているらしい。向こう側としても手早い方が良いとの事だろうか、真実が漏れる可能性は出来るだけ抑えたいというのが透けて見えるようだ。
「あの二人か、何であれらと話なんかするんだ」
「あれヴェノム知らねぇの、あれらって龍牙の実の親なんだぜ」
「―――えっマジか」
「マジ」
「……いやなんかの冗談だろ、なんであれから龍牙が出来るんだよ」
率直かつ遠慮のない言葉に戦兎は大声で笑いだしてしまった、実にヴェノムらしい言葉だと龍牙も思う。その言葉からもヴェノムが如何に龍牙に対して良い感情を結んでいるのがか分かる。まあヴェノムとしてはヒーロー入りする始まりでもあるのだが、彼としてもあの二人は極めて気に食わないのは相変わらずらしい。
「これがマジなんだよ、色々あって今の龍牙がある訳だけどな」
「色々あったんだよヴェノム」
「まあそういう事にしとくか、にしても今の話を聞く限り円満な関係って訳じゃなさそうだな。そもそもがオルカと根津を親って呼んでる辺りから分かるが」
取り合えずヴェノムは龍牙とあの二人のヒーローは親子だが関係自体はかなり悪いという事は理解した。その認識で良いと戦兎は言いながら話を奥へと進めていく。
「んで明日辺りにあの二人が雄英に話をしに来るってよ」
「随分と急ですね、俺としては良いですけど」
「それだけ向こうとしてもさっさと処理しないとやばいと思ってんだよ。まあ安心しろよ龍牙、いざとなれば俺も出張ってなんとかしてやるから。いざって時はこれも切ってやるから」
そう言いながら片手をハンドルから話して腰のホルダーから赤いトリガーを取り出して手の中で回して見せる、それを見せるという事は本気という意思表示。同時にそれだけは使わせるのは拙いと龍牙は思う、戦兎としてもそれを使わせるような状況になってしまう事自体がまずい。
「戦兎、何だったら俺は龍牙と融合しとくか。話し合いをするって感じだが備えあれば嬉しいなってコングも言ってたぞ」
「憂いなし、だろそれ。まあそれが一番かもな、向こう側としてもお前の存在は辛いだろうし。何事もなく話し合いが終わるのがベストなんだけどな」
「ですね」
そんな会話をしていると雄英に到着して、戦兎とヴェノムと共に寮へと帰還するのだが……そこで龍牙は皆からもみくちゃにされ様々な質問攻めを受けてしまう。そんな最中、常闇から
「我もこんな感じだったぞ、お前も頑張れ」
的な視線が飛んできて覚悟を決めて受け入れるのであった。
葉隠さん成分が足りない?
もうちょっと待って、絶対に葉隠さんカワイイヤッター!!って言わせて見せるから