僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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血縁者と戦う黒龍

―――ガツンといけ、思いっきりな!!親なんて関係ねぇよ、全力で蹴っ飛ばせ!!

 

―――本当に俺の手助けはいらないのね、冗談だよ。お前の勝利を信じてる。

 

―――潰してきな龍牙、勝ったつもりでいるあいつらの鼻っ面圧し折ってやれ。

 

 

運動場β。そこに龍牙の姿はある、これからそこは龍牙とビーストマン、そしてミラー・レイディとの戦いの場になる。他の運動場では今現在A組とB組の対抗戦が行われているらしい、自分も是非とも参加したかったがどうやら今回はそれが良い方向に作用しているのが、人数バランス的に良いと根津が言っていた。如何やら普通科から一人の生徒が参加するらしい、彼はA組側として参加するらしい。後で挨拶に行かなければと思いながらも最後にヴェノムに言われた言葉を過らせた。

 

 

―――龍牙、マジでお前は恨んじゃないのか。

 

 

恨んでなんかいない。恨みを抱くよりも先に自分は無を感じてしまったのだから、両親や親戚の反応に対する理解やらも出来るようになっている。感情では動かずに理性で受け止められている自分にヴェノムは疑問を抱いたのかもしれない。事実だ、これから自分は実の両親と戦う。が何も感じない、一介のプロヒーローと対決するのと同じ。オルカの訓練でMt.レディと戦うのと近い。

 

「ドラゴン、行こうか」

 

そう言うとビルドドライバーを装着し、ガジェットモードのドラゴンが手へと収まった。これから行われるのは入学後に行われた戦闘訓練に近い形式になる。自分は前以てスタンバイをして何処からでも攻撃を行っても良い、ビーストマンとミラー・レイディは目の前で自分を見つめ続けている。

 

「準備は終わらないのか、それともやらずに負けを認めるか」

「つまらないジョークだな。さて俺は何処までやれるのかを見せ付けるぞドラゴン、ドラグブラッカー―――行くぜ」

 

 

WAKE UP !! BLACK DRAGON !!

 

 

鋭い瞳を作りながら龍牙は迷う事無くレバーを回していく。ベルトを通じて龍牙の周囲を取り囲むように黒炎のサークルが生み出される、それを見て二人は動揺するような声を上げるが龍牙は一切取り合わずに宣言する。

 

 

ARE YOU READY ?

 

 

「―――変身!!!」

 

 

WAKE UP BURNING ! GET BLACK DRAGON !! YEAH!!〉

 

黒炎が龍牙へと収束して鎧を形成する、それを見て夫婦は僅かながらに後退った。龍牙との決別をさせた忌まわしい姿が目の前にある、過去の行いがフラッシュバックしていく。だがそれらを今無くすためにここに立っているのだと二人は構えを取った。龍牙もその手に握る剣を握りしめながら戦闘態勢を取る。

 

「来てみろよビーストマンにミラー・レイディ、ステインやヴェノムの時の姿が全てじゃないって見せてみろ」

 

珍しい挑発的な物言い、それらを受けてビーストマンは自分達を完全に舐め腐っている自意識過剰な面に腹が立った。何処まで自分達をコケにするのか、そして同時にそんな愚かな考えを絶対に後悔されてやると思いながら個性を発動させていく。身体を虎、脚を馬に猪などを組み合わせながら突進力や速度を強化する。

 

「親を馬鹿にするのも大概にしろ―――龍牙ぁ!!」

 

直後、爆発した火薬のような飛び出しをするビーストマン。凄まじい加速力であっという間に龍牙との距離を詰めていく。同時に両腕にウシの角や猪の牙を露わにして大ダメージを与える気満々、そしてそれらが龍牙へと直撃―――する事は無く男の身体は呆気なく止まっていた。

 

「なっ!?」

「嘘っ……!?」

 

突き出されていた腕、それに突進の勢いを乗せて殴り付けようとしていたのだろう。だがそれは龍の手によって受け止められてしまっている。かなりの速度故か龍牙も踏ん張ってこそいるが、あれだけの速度と勢いを完全に殺し切っている。黙り込んでいる龍牙は爛々と輝く瞳で睨みつけながら言う。

 

「これで本気、じゃないよな。だったらもう力の差は歴然なんだが」

 

力は相当な物だろうが、この程度のものならば今までさんざん体で受けてきた。ギャングオルカにMt.レディにヴェノム、なんだったらオールマイトの一撃さえこの身に刻み込んである彼にとってはダメージにもならない。だがそれを素直に受ける程でもない、だから受け止めた。

 

「舐めるなぁぁ!!!」

 

馬鹿にされたと思い込んだのかビーストマンは更にギアを上げるように地面を蹴り上げて、身体を押し込んでいく。個性の出力を最大にするようにしながら渾身の力を込める、脚力は岩盤にさえ足形をつける程、腕の力も鉄をも押し込んで凹ませるほどの力、だがそれでも押し込み切れない。だがそれは急に進んだ、龍牙がワザと力を抜いた。そして同時に身体を反らしてあっさりとビーストマンを受け流した。そして無防備は背中へと裏拳、それを受けて自らの突進力で地面へと叩きつけられる。

 

その敵を討たんとばかりに素早く飛びやがったレイディは龍牙へと回し蹴りを浴びせ掛けようとするのだが、それを自らも回転しながら避ける。そして同じ裏拳を叩きこむとレイディはビーストへと落ちていく。

 

「大丈夫か?」

「え、ええ貴方も……」

 

立ち上がりながらも二人は動揺していた、僅かな時間の間に龍牙との力の差を見せ付けられたような気がしたからだ。確かに侮りはあった、だがこれでも自分達はトップヒーローと揶揄されている。それが此処まであっさりと手玉に取られるようにやられるだろうか。そんな二人に龍牙は振り向きながら、黒龍を出現させながら言う。

 

「これから俺は本気を出していく、仮にもアンタら二人はトップヒーローだ。だから全力で行く―――行くぜ、ビヨンド・ザ・リュウガ……!!」

 

 

WAKE UP RYUGA ! GET GREAT DRAGON !! YEAH!!〉

 

 

龍牙自身、加減なんてする気は毛頭なかった。全力でこの二人を倒しにかかる、同時にこの姿でどこまでやれるのかを測るつもりでもいる。トップヒーローならば相手としては申し分ないだろうと思っている。そんな二人は九州で見せた龍牙の最強形態を見つめながらも鼻を鳴らした。

 

「もう勝ったつもりでいるのか、おめでたい奴だ。なら見ていろ……ここからが俺達の本気だ」

「ええ、此処からよ。何年ヒーローをやってると思ってるのかしら、舐めないで欲しいわ。本気で泣かせてやるわ」

 

そう言うと二人は一気に走り出しながら龍牙へと殴り掛かった、それを龍牙は簡単に防御しながら咆哮を上げた。耳が劈くほどの大咆哮を。それらを受けながらも二人はヴィランに相対するヒーローの顔つきになっていた、それを見て龍牙は笑う、あの時と同じだなと思いを巡らせた。

 

―――決着を付けよう、過去に。




後数話は戦いかな。

その後は―――多分、カワイイヤッター回だと思う。

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