僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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新たなものを得る黒龍

その日、戦兎に連れられた龍牙は運動場のβの一角へとやって来た。今回戦兎は漸く仕上がった龍牙専用のアイテムの試運転兼調整を行う事になっている、戦兎は意気揚々とボトルから制作したアイテムを展開する。それは持ちてのある黒い拳のような形をしているアイテムだった。拳の中央部には龍の紋章のような刻まれているのも特徴的。

 

「如何だ龍牙このお前専用拳型武器、その名も―――エレメントドラゴナックル!!凄いでしょ、最高でしょ、天っ才でしょ!!」

「いや戦兎さん、俺その武器の詳しい内容とか一切聞いてないので全然分からないんですけど」

「そうだぞ戦兎さっさと教えろ」

「っつうかなんでお前までいるんだよ馬鹿ミルコぉ!!?」

「ってそうですよ何でいるんですかミルコさん!?」

 

そう、此処には何故かちゃっかりミルコまでいるのである。龍牙も隣でミルコが喋るまで余りの自然さに突っ込む事を完全に忘れていたほどに溶け込んでいた。ミルコも今更驚くのかよ、マジかと逆に驚いてしまっている。

 

「それ、私が前にぶっ壊しちまったパソコンに入ってた奴なんだろ。それだったら壊しちまったせいで龍牙に渡すの遅れちまったんなら謝んのが筋だろ、悪かったな龍牙ぁ私のせいで遅れちまってさ」

「いえ俺は全然……というか新しいアイテムの事も先日聞いたばっかりですし寧ろもう十分だと思って位です」

「ったくそこはもっと生意気になんだよこのこの~!!」

「いててててっ力強いですって!?」

 

小生意気にもいっちょ前に謙虚な姿勢を取る龍牙に軽くヘッドロックを掛けた上で力任せに頭を撫でまわしてやる。生意気な弟にちょっかいを掛けている姉のような構図だが、実際にミルコは楽しそうにしながら力強く言う。

 

「子供なんだからもっと太々しくして大人の好意にも甘えりゃいいんだ、その甘い汁を吸ってでっかくなるつもりでいればいい、一々遠慮する必要なんてねぇんだよ。こいつだって問答無用で渡すつもりなんだから有難くどんと構えて受けとりゃ良いんだ」

「ミルコさん……なんかカッコいいですね」

「そうだ私はカッコいいんだ、これから私は姉さんで良いぜ?」

 

キランッ☆彡!と歯を光らせながら男前な笑顔を龍牙へと見せつける。ミッドナイトやMt.レディとは全く違うタイプだがなんだか姉と呼ぶのが妙にしっくりくる。どちらかと言えば此方の姐だろうが、呼んでもいいならそう呼ぼうかと考え始めた時にミルコを一発戦兎が引っ叩く。

 

「何さり気なく姉認定受けようとしてんだ馬鹿ミルコ、というか謝るなら俺だろ!!直接的な被害受けた俺だぞ!!」

「うっせぇ馬鹿戦兎てめぇには散々謝っただろうがこのすっとこどっこい!!」

「んだとこの脳筋露出兎馬鹿女ァ!!」

「黙りやがれ自意識過剰でナルシストな大馬鹿大将のバカ野郎!!」

「「ンだとテメェ上等だ今日こそ決着つけてやろうかぁ!?真似すんなぁ!!」」

「ま~た始まったよ……」

 

互いの胸倉に掴み掛りながら勢いよく頭突きをかまして額をぶつけ合い、押し合いをしながら叫びあう二人。傍から見たら凄まじく仲が悪いように見えるのだろうが行動のタイミングや言葉の速度までもが完璧に一致している。今も目の前でギャアギャア騒いでいるがそれも本当は心の中では誰よりも信頼しているからこそ、喧嘩しあっているのに何処か仲睦まじく見える。不思議な二人だと改めて思う、が好い加減止めないガチバトルを始めかねないので止めさせる。

 

「二人ともやめてくださいって全くなんでそんなに仲が良いんですか」

「「何処をどう見たら仲が良いようにって真似すんな!!一緒に言うなぁ!!!」」

「そう言う所ですよ、客観的にご自分らの姿を一度見て見ます?どんだけ異口同音しているかが良く分かりますよ」

「「ぐぬぅっ……」」

 

もうこれ以上はもう何も言われたくないと言わんばかりに二人は口を噤んだ。唯でさえ今のだけでも相当恥ずかしいのに、今の言葉を受けたらもう喧嘩なんて出来る雰囲気なんて維持出来ない。そんな二人に対して龍牙は肩を竦めながらも笑いながら思わず言った。

 

「全く―――兄さんと姉さんは世話が掛かる人だ」

「「―――っ龍牙今のもう一回!!」」

「えっ世話の掛かる……」

「「そこじゃないもうちょい前!!」」

 

龍牙の言葉に凄い勢いで反応した戦兎とミルコ、ズズイッ!!と擬音が付きそうな程に龍牙に身を乗り出して言葉の催促をする。龍牙は嘗ての経験もあったからか直ぐに察して、咳払いをしてから笑顔を作って言う。

 

「戦兎兄さんにミルコ姉さん」

「一度で良いから、一度で良いから呼ばれたかったんだよ親しみを込められた兄さん呼び……!!」

「くぅぅぅっっ……良いぜこれ、最高だ……っ!!」

 

如何やら二人の何かに呼び方がぶっ刺さった模様。龍牙としてはミッドナイトやMt.レディを思い出す光景である、まあ兄さんと呼ぶ事は無かったが似たような事だろう。龍牙としてはこれで喜んでくれるならば幾らでもそう呼ぶつもりである、二人は彼にとっては大切な人であるのに変わりない。そこに親しみやらを込めるのも当然という物。

 

「それで兄さん、そのナックルってどういう代物なんですか」

「っ―――あ、ああそうだな。言葉の魔力に引き込まれてすっかり忘れるところだったぜ……」

「おい龍牙もう一回、マジで頼む。すげえ来る、なんでだ、前にも姐さんって言われたことあるのに全然違うぞなんでだ!?」

「いやお前の場合(ねえ)さんじゃなくて(あね)さんだからだろ」

「ハッ――――それかぁっ!?」

「まあ姉さん凄い男らしいですもんね」

 

男前に振舞い続けていればそちらにばかり目が行って思わず、姐さん呼びになるのも致し方あるまい。だが龍牙の呼び方は純粋な姉に向けられた親愛の物、それが堪らないと思えるのかもしれない。姉さんと呼ぶ龍牙をミルコはそれでも尚、男らしく腕で抱き込むようにしながら彼女は笑った。

 

「良いぞ、お前は今日から私の弟だ。異存はないな、ないよなあったら蹴っ飛ばす!!」

「言わせる気、ないですよねそれ、いやないですけど……あったら」

「おう無いぞ!!つまりあったら時点でお前は吹っ飛ぶ!!」

 

それは力強く肯定するものではないだろうと肩を竦めるが龍牙としては不思議と心地が良い、粗暴で喧嘩っ早くて力任せな姉なのにそれもそれで嬉しいのかもしれない。

 

「おいおい龍牙やめとけ、こいつが姉とか絶対苦労する未来しかねえって。飯は奪うわマッサージさせられるわ勝手に秘蔵の菓子食うわでもう最悪だぞ!?それに比べて俺はメシは作ってあげるし発明もしてあげられるし取って置きの店のケーキだって御馳走するナイスガイ♪」

「戦兎テメェ何人の評価下げて自分の評価上げようとしてんだ!?っつうか秘蔵云々はテメェが私が取っておいたショートケーキ勝手に喰ったのが原因だろうがぁ!!」

「あれだって元々俺が買ってきたケーキの一つじゃねぇか!!何でお前の物みたいになってんだ元々俺のだあの時のケーキィ!!」

 

と再び目の前で喧嘩を始めてしまう二人だが、それを見て龍牙は微笑んだ。それを見て兄と姉も笑った。結局その日にする筈だった事の30%も消化出来なかったが、それでもそこにいる3人は幸せそうに笑い続ける。確かな絆が生まれた瞬間。




和気あいあい兄姉弟。

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