僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
間もなく12月に入ろうとする頃、休日は皆各々自由に過ごすのだが本日は冬もかなり近づいているだけあってか相当に冷え込んでおり皆が寮の中にいる日。そんな中で何か面白い番組でもやってないかと番組を変えている峰田と上鳴のお決まりコンビ。
「何も面白いのやってね~……昨日疲れたからって寝すぎたなぁ」
「今昼だしなぁ……大抵がニュースかドラマだもんな」
「済まないが二人とも、ニュースを見せて貰えないだろうか」
そんな所に飯田の要望が飛んでくる、本当ならばそんな要望には聞くつもりは無いのだがヒーローを目指す者としてはニュースはそれなりに見るようになっている。ニュースはニュースでプロヒーローの活躍や特集を組んだりしている事も多いのでそれなりに面白いし為になる事もある、他に見たい番組も無いので妥協としてニュースへと変えてみる事にした。そして直後に飛び込んできたのは―――
『「出来てるよ―――変身!!!」』
あちらこちらで瓦礫が転がっている戦場、そのど真ん中で凶悪なヴィランである脳無へと立ち向かいながら個性を発動させて戦闘形態をとる龍牙の姿が映し出されていた。黒炎の柱が叫びと共に四散して新たな姿となった龍牙に芸能人やアイドルヒーローなどが意見などを述べていくのを峰田と上鳴はまたこれか、と溜息を吐く。
「最近こういうのばっかだよなぁ、龍牙関係の奴。いやまあしょうがないとは思うけど」
「やった事があれだもんなぁ……」
「正当な評価だと俺は思うぞ、俺もあの時の中継を見ている身としては心が震えっぱなしだった」
飯田としてはクラスメイトとして本当に誇らしかった、共に保須市をパトロールした日がもう遠い日の過去のように思えてしまう。最初こそ同じスタートをしていると思ったが実際は大きく異なった、龍牙はもっともっと大変な苦労と努力を重ね続けていた。積み重ねてきた強固な過去が現在を作り上げていると思うと本当に尊敬すべき友人だと再認識させられる、が峰田は何処かいやそうにしながら番組を変えたそうにしている。それに気づいた芦戸がリモコンを取り上げながら言う。
「如何したのよ峰田、このアイドルって推しの奴でしょ?」
「今は違ぇよ、なんか龍牙を傍に見てるオイラとしてはこいつらが言ってることがすっげぇ安っぽくて軽々しく思えてなんか聞いてるのが腹立つんだよ」
あの峰田から出るような言葉とは思えないような言葉に皆が驚いたが何処か理解も出来る言葉。アイドル達は如何に龍牙かカッコいいとか凄いとか、ちょっと怖いけどそこがいいとか言っているが酷く安っぽくて軽々しい言葉にしか聞こえてこない。特に龍牙は凄い才能がある天才だと言われた時なんて溜息が出た。それは龍牙の口から直接から直接鍛錬の日々の事を聞いてきたからこそだろう。
あの戦いを見て皆が思ったのは矢張り龍牙の凄さ、精神的な凄さが凄まじかった。何が待っていたとしても立ち上がって敵に向かい続けていくあの背中にはオールマイトにも似た安心感を感じてしまう、そしてあの強さは脱帽だった。だがギャングオルカの一件もあるので彼ならば当然と、いった感情もあるのも事実。
「何だ峰田って結構確り龍牙のダチやってたんだな」
「どういう意味だ瀬呂ゴラァ!!」
「いや普段から自分の道に龍牙を引きずろうとするけど失敗してるじゃん」
「そうだね~この前だって上鳴と一緒に遊びに行くときに龍牙君も一緒に連れてくって意気込んでたけど大失敗だったもんね」
「うるせえ!!あれは前以て予定をぎゅうぎゅう詰めにしてるあいつのせいだ!!あいつが居れば絶対にナンパに成功してたんだぁ!」
「結局それ成功してるの龍牙だけでお前らは失敗してるだろ」
此処で緑茶を啜っている焦凍の正論が飛んできて峰田と上鳴の胸を貫いて床にひれ伏させた。その光景に芦戸や瀬呂が轟の空いている手を取って上に掲げる。
「「WINNER 轟 焦凍!!!」」
「喜んでいいのか、これ」
「良いのではないか」
と近くに座っていた常闇がアッサムティーを飲みながら答えた、TVでは常闇の事も特集されているが矢張りリュウガの方に話題が取られてしまっているがそれを常闇はそれを気にする気は一切なかった。あの場で最も注目されるべきは龍牙だし自分はやれることを全力でやった、それだけで自分は満足なのだ。最後の最後の自分の全てを振り絞ったあの行動が―――
―――り、龍牙が、戦っているのならば、まだ我も戦い、続けるのが相棒として道理……!!
―――踏陰!!
龍牙の勝利への楔となった、それを龍牙は存分に活用してくれた。ほんの一瞬しか役に立たなかったそれを最大限に生かすように全力を叩きこんだ一撃。そこからの最強の一撃は自分ですら心が躍ってしまい、素直な称賛しかわきあがらない、そこに嫉妬などの醜さはなく純粋な憧れがある。あの時、最後に常闇が見たのは―――脳無を倒した偉大なヒーローが静かに佇んでいた背中、その時の背中が自分に語り掛けていた。
『お前のお陰で勝てた、本当に有難う』
それを聞いた時に思わず呆れた、その勝利はお前の手で掴み取ったのだと誇ればいいのに、その権利があるのに龍牙は誇らずに感謝を述べていたのだから。そして振り返った彼は心配を掛けたと一言述べて倒れこんだ。全くお前には自信と自己顕示欲が足りないと真面目に思った。だがそれが龍牙ならば致し方ないとも思った。
「そういえば肝心の龍牙は如何した、あいつ普段はそこでスペイン語の勉強してるだろ」
「龍牙は何やら緑谷と先約があると言っていたな、緑谷の訓練に付き合うと言っていた」
「この前のあれ関連か」
緑谷から飛び出したあれ、本人にも理解が及ばないのか分からないというのが一番の回答だった。そんな現場に龍牙はいなかった、恐らく龍牙にスパーリングの相手でも頼んで制御を試みようとしているのかもしれない。そういう分野では龍牙が一番適しているかもしれない。耐久と持久、そして反射という自分で自分の攻撃を受けて確かめる事が出来るのも大きなメリットになる。
「何だよそれなら俺達だって参加したかったし見たかったぜ、あの龍牙の超カッコいい姿が見れるかもしれねえし!!」
「そうそう、ダークヒーロー感全開だったのが凄いヒロイックな感じになったもんな」
瀬呂と砂藤が語るビヨンド・ザ・リュウガ、龍牙の一番の難点であった表情。剥き出しになった牙に爛々と輝く赤い瞳などが合わさって禍々しい顔つきが一気に緩和されているからか龍牙の人気が過熱された要因でもある。そんな姿を近くで見たいという二人にアンサーを示したのは蛙吹の隣で落ち込んだように机に伏せている葉隠。
「如何したの透ちゃん、元気ないわね」
「むっ~……私龍牙君にお願いしたんだけど今回はダメだって言われちゃったの……私だって見たいのに……」
「あ~でもそれだけ集中したいって事なんじゃねえの?緑谷だってあれの時、なんかかなり辛そうだったし」
「それでも残念~……」
理解は出来る、だが矢張り感情が理解してくれない。愛しの龍牙の姿を目に焼き付けたかったのだろう、だがそれはまたの機会という事になってしまった。
そんな風に思われている中、寮から離れている演習場にて―――戦いが行われていた。
「どうした緑谷、俺の事なんか気にするな―――全力で掛かってこい!!」
「そうさせて、貰うよ……龍牙君ッッ!!!!」