僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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緑谷と黒龍

演習場にて行われている龍牙と緑谷の戦い、それはオールマイトから誘いを受けた戦兎が行う筈の物なのだが本人曰く龍牙の方が全力を引き出せるだろうという事で龍牙が代行する事になった。ビルドでもそれが可能ではあるがビルドでは力を出そうとする危険な性質を持っている姿もあるので緑谷の身体を配慮した結果でもある。ミルコも相手をしたがるのだが加減が出来ないから駄目だと戦兎から言われてブー垂れてる。そんな龍牙と緑谷の戦いが行われているのを観戦してる三人だが、ミルコは思った以上にやれている緑谷の実力に感心している。

 

「中々やるじゃねえかあいつ、機動力も中々だし攻撃能力も申し分ねえな。それに頭の回転も速いな」

「だな、単純なヒーローマニアってだけじゃなくて色んなヒーローの情報が詰まってるからそこから有力なやり方を引き出す事もやろうと思えばできるだろうな。まだまだ戦ってる最中の思考は難しそうだけどな」

 

龍牙に対して緑谷はかなり善戦している、緑谷自身も龍牙の強さなどは重々承知している上に龍牙のヒーロー研究ノートも作って考察などを個人的に深めたりなどもしている。様々な意味で興味深い龍牙の個性を緑谷なりに研究している、それが生きている。

 

「SMASH!!」

「ムンッ……ぬっ……!!」

「こっちだぁっ!!」

 

振り抜いた回し蹴り、凄まじい衝撃波が周囲に木霊しながら龍牙へと襲い掛かるが完璧にガードしている上に僅かに音が聞こえだしていた。それを聞いた途端に更に足に力を込め、壁を蹴るように龍牙を蹴って距離を取りながら細かい動きで背後へと回り込むとそのまま背中へと飛び蹴りを放つ。それを背中に回したドラグセイバーで受け止られるが、即座に距離を取った。

 

「さっき、反射を使おうとしたよね」

「―――良く分かったな」

「気付いてなかったんだと思うけど、君が反射を使おうとすると反射の鏡を作る音が聞こえるんだ。咄嗟に退いたけど正解だったよ」

「成程、良い反応だ」

 

龍牙の反射は反射を行う『反射龍鏡(リフレクト・ドラゴンミラー)』を構築してからそこを通して受けた攻撃を相手に向けて反射する技。その鏡を構築する音がある事に気付いた緑谷は高速で距離を取って別の角度から再度攻撃する事でそれに対応する事に成功した。

 

「それに気づかれたならば反射は大した意味はないな、お前のような機動力相手には」

 

龍牙は敢えて今、目の前に鏡を出現させた。そしてそれを自らの手で叩き割った。それが意味するのはこれからは鏡は使用しないという決意の表れだが同時にこれからは積極的に攻めていくという事でもある。右腕には龍頭、左手にはドラグセイバー。龍牙の基本的な戦闘スタイル、此処からギアが上がり始めていく。

 

「さあ行くぞ―――緑谷ぁっ!!」

「来い、龍牙君!!!」

 

地面を強く蹴って突進する龍牙、一歩一歩が自分を大きく揺るがすような振動を起こしながら迫ってくる龍牙に僅かながらに威圧されるが、緑谷は変わらずに冷静にいながら全身に力を込めていく。迸る緑の稲光が全身を包みこんで力を底上げし、同時に自分の目の前まで迫った龍頭を見つめる。

 

「右だっ!!」

 

ほんの僅かな時間の間、その隙間に龍牙の攻撃予測を行いながら回避を行い通り過ぎ様に肘鉄を入れる。

 

「なぁるほどな、細かい動きと瞬間的な加速で攻撃を回避しながら隙間を狙って一撃を与えていくか。中々考えてるじゃねえかあいつ。いいぞ嫌いじゃないぞ!」

「うむ、黒鏡少年にいい選択をしている」

 

全体的に龍牙には劣ってしまっている緑谷、瞬間的な出力ならば確実に上回っているだろうがそれは自らの身体を破壊する自爆技。出せる範囲で全身を強化しながら細かな動きとほんの一瞬だけ、限界を上回る事で超加速して龍牙の周囲を動き回る。

 

「龍牙の隙を見極めて、そこに一撃をぶちかますって案だな。悪くはないな、だが龍牙の持久力を考えたらそれは微妙だぞ」

「うむっ正しく戦兎君の言う通りだと私も思う。黒鏡少年の長所は攻撃でも防御でもなく反射でもない、あの尋常ならざる持久力だ」

 

「SMASH!!」

「如何した、お前の力はこんなもんかぁ!!」

「分かっていたけど、なんてタフネスなんだ……カッちゃんと比較にならない……!!」

 

緑谷だってそれは十二分に把握していた、龍牙の戦闘力の根幹になっているのはその異常なタフネスさ。ギャングオルカによって鍛えられた凄まじい総合持久力、それらも考慮に入れたが龍牙の一撃などの怖さや防御面にドラグブラッカーなどを計算に加えるとこれが最善手としか思えない。だが実際に相手にしてみるとその耐久力に眩暈を起こしそうになる。

 

「SHOOT STYLE St. LOUIS SMASH!!!」

 

上段からの飛び蹴り、それを両腕でガードする。漸く生まれた隙、だがそれは真正面。それでも構わない、漸く訪れた技を決める事が出来るチャンスに緑谷は跳んだ、渾身の力を込めたスマッシュは龍牙の腕にガードされているが、利いているのか龍牙は相当な力で地面を踏みしめているのか地面が沈み込んでいる。利いていると分かるが同時に龍牙はまだまだ健在だと理解する。

 

「いいぞ緑谷、そうだそうしろ。気持ちで負けるな、分が悪いと怖気付くな。相手を飲み込むつもりでこい、俺を超えてみせろ……!!そして、受け取れこれが俺なりの反射の礼だぁ!!!」

 

スマッシュを振り抜くように腕を広げた龍牙はそのままの勢いで地面へと腕を振る、両の腕の鉄槌が地面へと振り下ろされる瞬間に全身に鳥肌が立つような寒気が走る。両手の指で空気を弾いて身体ごと吹き飛ばすが、それよりも早く鉄槌が振り下ろされた。瞬間、周囲の空気を押し出して真空にするかのような勢いの衝撃波が龍牙から放出された。

 

「ぐうううっっうああああ!!!!?」

 

咄嗟に空気を弾いたが、それでも衝撃波は緑谷を襲っていた。滅茶苦茶に吹き飛ばされた緑谷、地面を数回バウンドしながらも立ち直りながら龍牙へと視線を向けた。今の衝撃は覚えがあった。USJにて脳無を倒した一撃、試験で受けた一撃、それらによく似ていた。

 

「何だ今の……まるで、オールマイトのスマッシュじゃないか……!?」

「いや、お前の力だ緑谷。お前の力は何れそれになるという表れかもな。バースト・リフレクトって所かな」

 

そう語る龍牙は首の骨を鳴らしながら此方を見つめて来ていた、そう今のは全て緑谷が自分に与えてきた攻撃の全て。純粋に反射するのではなく反射する攻撃を溜め込んで衝撃波として周囲に放出反射を行う、これはミラー・レイディも行う事が出来るがあれは捌きによって生じた衝撃を蓄積して行う。龍牙の場合は受けた攻撃全てを衝撃に還元するので威力も範囲も桁違いの物になる、龍牙のタフネスさがあるからこそできる芸当と言える。

 

「そうか今のってミラー・レイディの放出反射……でもあれなんかよりずっと強力だ。あれだって人一人を吹き飛ばすのが精々な筈……」

 

レイディのそれは的確に相手の急所に放って使用するが龍牙のそれは全く違う。例え完全に包囲されて攻撃され続けたとしてもそれらを糧にして、周囲を吹き飛ばすような一撃を放つ事さえも出来る。本当にあの強さには舌を巻くしかない。

 

「俺は改めてお前を尊敬する、お前から受けた全てを放った時に試験でオールマイトのスマッシュを連想した。あれに等しい、何れオールマイトいやその先にお前は立つ」

「―――次代を担うヒーローにそう言われると光栄だよ」

「フフフッ……お前だってそう成れるな、たった一人だけで担わなきゃいけない事なんてない。相応しい者がそこに立つんだよ」

 

「そうかそれじゃ……こっからは正真正銘の全力全開だ、行くぞ龍牙君!!!」

「来い、俺も全力でお前に応える!!ビヨンド・ザ・リュウガ……!!」


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