僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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清純と出掛ける黒龍

噴水がある時計塔の下にて、一人の男がサングラスを掛けなおしながら時間をチェックしていた。人ごみの中から不意に自分に対すると思われる声が聞こえて来るが全て気にしないようにしておく、本当に自分に向けられたものかもしれないが応えていたら折角の休日が潰れてしまう。公私を分けるのも立派な大人のステータスだと戦兎から言われている。やや暗めのライダースジャケットに青のシャツ、上質のデニムにウエストポーチとMt.レディから新しく貰ったテンガロンハット、これらが基本的な私服のスタイルになりつつある。それらに加えて戦兎から貰ったサングラス型モニター、そのモニターに投影された時計を確認する。

 

「後ちょっとって所か」

 

待ち合わせの9時半まであと10分、昔からの習慣から来る癖なのか約束事などに毎回毎回早すぎると言っても可笑しくない時間に来てしまう。下手に待たせると怖い師匠が居た影響からか、早めに来る事にしている。待つ事に慣れている彼にとって数時間単位で待つ事も容易い、後10分など待つのも良いだろうと思っている時、こちらに向かって走ってくる可憐な少女が映りこんだ。時計を見るのを止めてそちらへと視線を移しなおす。

 

「随分早かったね葉隠さん」

 

 

この日、葉隠にとって下手したら雄英に来てから初めてのレベルで重要な日を迎えていた。なんとあの愛しの彼である龍牙から直接映画デートのお誘いが来たのである。これを喜ばずして何に喜べというのだろうか、龍牙から渡された大切なチケットを見つめながらベットの上でキャ~キャ~言いながらも寝るまでの間ずっと服選びに必死になっていた。

 

そして漸く洋服も決まっていざ眠ろうとしても……逆に目が冴えてしまいなかなか寝付く事が出来なかった。眠ろうとすればする程妄想が捗ってしまい眼が冴えてしまった。結局眠れたのは午前1時を回った頃だっただろうか。そして朝起きた時に時計を見てみると時刻は既に8時半を回っていた。

 

「ね、ねねねね……寝坊しちゃったぁぁああああ!!!???」

 

血の気が引いて顔が青ざめて行くのを自分でも感じながらもベットから飛び起きながら大急ぎで準備を始めた。顔を洗い寝癖を直し、今日の為に選んだ服を来て髪をセットして荷物を確認すると大慌てで部屋を飛び出して寮から駆け出していく。

 

「あらっ透ちゃんおはよ―――」

「ごめん梅雨ちゃん私急いでるのぉ!!!後おはようだけどごめんなさいぃぃぃ!!!!」

 

と途中で挨拶をしてくれた蛙吹に謝りつつも全速力で待ち合わせ場所へと向かって行く、その時のスピードは緑谷曰くレシプロバーストを使った飯田にも負けないレベルの速度だったと語る。

 

「なんでなんで今日に限って寝過ごしちゃうのよもぉぉお!!!アラームだって確りかけてたのにぃぃぃ!!」

 

アラーム自体は確りと鳴っていたが妄想に耽ってしまったが故に眠りが深くなって起きれなくなっていた。そんな自分に嫌気を感じつつも全速力をキープしたまま駆け抜けていく、透明になったまま駆けて行く葉隠に周囲の人たちは一瞬何かのホラーだろうかと首を傾げたりもしていた。そして後僅かで待ち合わせ場所に到着しそうになる。此処まで来れば本当にあと少し、速度を落として息を整えていく。幾ら間に合わせたいと言ってもこんな姿は恥でしかない。出来るだけ普段の自分のままで居なければ……。

 

「よし、集合時間まであと10分……!!なんとか10分前ルールに間に合ったぁっ……!」

 

乙女としてデートをするからには定番の相手よりも早く約束場所にいて相手を待ちたいという思いがあった。最低でも10分前には準備をして待機しているのが鉄則と言われている、それにギリギリだが間に合う事が出来たと思いながらそこに足を踏み入れるのだが―――そこには既に龍牙が待っていた。

 

胸が高鳴った、普段から彼の姿を何時も見ている。活躍する時も、食事をする時も、可能な時は欠かさずに視線を向けてその姿を目に焼き付けているのにも拘らず彼の姿から眼を離す事が出来なかった。世間的にも有名になって来ているので髪型も変えた上でサングラス、そしてテンガロンハットを被る姿に思わず見惚れてしてしまうほどに魅力的な姿にぽつりと言葉が漏れた。

 

「―――素敵……」

 

そんな言葉に我に返り、葉隠は頬を軽く叩いて自分も確りしなければと意識を持つ。そして気合を十分に入れると深呼吸をしてからゆっくりと足を進めながら葉隠は個性を解除して素顔を露わにしていく。黒の縦セーターにクリーム色の上着に赤チェックのスカート、赤いマフラーで赤くなっている頬を少し隠しながらも紺色のキャスケットを被り直しながら龍牙の前に立った。

 

「随分早かったね葉隠さん」

「えへへっそれを言うなら龍牙君だって早いよ、まだ時間じゃない筈だよ」

 

はにかむと周囲を通り過ぎている男性陣からも声などが漏れた、それほどまでに今の彼女の姿は魅惑的で可憐な姿なのである。そんな葉隠に龍牙は軽くサングラスを外して笑いながら言う。

 

「恥ずかしい話だけど俺も楽しみでね、朝早起きしすぎちゃったんだよ。それに女性を待たせるのはマナー違反だからね、早めに来たんだ」

「紳士だね龍牙君」

「それじゃあ今日ぐらいはお嬢さんをエスコートする紳士的な振る舞いをしようかな?」

 

そう言いながら龍牙は帽子を胸に抱きながら少し仰々しく礼をしてから葉隠へと手を優しく差し伸べながら囁くように甘く唱える。

 

「それでは参りましょうかお嬢さん、僭越ながらエスコートさせて頂きます」

「っ―――うんカッコいい、それじゃあ本日は宜しくお願い致しますわミスター。楽しい一日になる事を期待していますわよ♪」

「ご期待に添えるよう、努力する所存に御座います」

 

慣れない言葉を使いながらも差し伸べられた手を取りながら二人は手を繋いで歩き出していく、そしてその途中で思わず吹き出し、笑い始めた。

 

「アハハハやっぱり変な感じぃ~私達らしくないね」

「確かに、全然だめだね。それじゃあ気を取り直して……今日は楽しもうね葉隠さん♪」

「うん龍牙君♪」




現在活動報告にてとあるお知らせを掲載中です。宜しければそちらも見に言って貰えると嬉しいです。

そして―――葉隠さんカワイイヤッター!!

よしこれからバシバシ言ったり言わせたりするから覚悟しておけ!!

下記のリンクから飛べます、どうぞご利用ください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=236081&uid=11127

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