僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「も~龍牙君ったらまだ怒ってるの?」
「怒っちゃいないさ、でも不満はあるよ」
映画も見終わった龍牙と葉隠はジュースを買ってベンチに腰掛けながらそれを飲んでいたのだが、龍牙は何処かむくれているような様子だった。映画前のビルドドライバーの一件を根に持っているのか拗ねているような様子に葉隠は困ったような笑いを浮かべながら謝り続けている。
「別に気にしちゃいないさ、でも俺にとってあれはかなり気恥ずかしいしまだ辛い光景でもあるんだよ。それを面白そうに言われたら多少なりとも根に持つよ」
「でもそれは龍牙君が積み重ねてきた物が認められて、皆の理解を得られてきたって事だよ。それは正しいし誇るべき事だよ」
体育祭からインターン、そして九州での脳無との戦い。龍牙が一つずつヒーローとしての階段を登り続けた、その際に成してきた出来事の積み重ねの結果がこうして形として現れ始めた。子供が憧れるヒーローとして見られるようになった、少し視線をずらしてみれば広場にて遊んでいる子供達が視界に入ってくる。それらが証明になっている。
「それを恥ずかしがることなんてないよ、だって当然の報酬なんだもん」
「当然の報酬か……だからってそれを使って俺をからかう葉隠さんは悪い子だよ」
「ありゃ言いくるめられなかった……アハハハッ~……ごめんなさい」
「はぁっ……まあいいけど」
もうとやかく言う事はやめる事にする、これ以上何を言っても不毛なだけだしきっと何も生まない。そして彼女の言う通りなのだろう、自分は個性の故に愛されたいヒーローになりたいと心から願っていた。それは承認願望に近いものだったかもしれないが今は違う、様々な鍛錬を経た自分が歩いてきた道すがら救ってきた人達の笑顔を守りたい、師のようなヒーローになり次の社会を支えていく。ラブ&ピースを齎せるヒーローになる。
「―――そうかもな」
「何か行った龍牙君?」
「いや何も。にしてもあの映画、ヒロインの演技がいまいちだったね」
「なんかあれだったよね、オーバーリアクション感が凄かったね」
改めてそんな考えよりも今回の映画の事へとシフトさせた、映画としては面白く満足の行けるものだった。唯一気になったのは新人女優がヒロインだった故か他の演技派俳優らとの演技力の差が浮き彫りになって浮いていた事ぐらいだろう、それを差し引いても良い映画だったのは間違いない。
「それじゃあこの後は……折角だから買い物とかしていこうか」
「そうだね、私お洋服みたいかな。龍牙君に選んでもらうかな~♪」
「ちょっとちょっと俺にそういうセンスを期待しないで欲しいよ」
「や~だよ、絶対に選んでもらうから♪」
席を立ちながら振り返り、前かがみになりながら笑う彼女に龍牙は一瞬見惚れたように反応が遅れながら胸が高鳴っていく。それを無意識に誤魔化すように溜息を吐きながら彼女の頭を撫でながらベンチから腰を浮かせて、彼女に手を引かれるように店内を歩いていく。
「折角私もこういう風になれたんだからいっぱいお洋服買っちゃおうっと♪」
「やれやれ、それならこの前の芦戸の申し出を受ければよかったじゃないか」
「龍牙君に選んで欲しいの、ダメかな……?」
「―――駄目、じゃないよ……」
少し震えた声と寂しそうな仕草をする葉隠に龍牙は顔を赤らめ、少しだけ顔を背けながらも了承してしまう。先程から自分が何処か可笑しいという事を理解していながらもそれを理解出来ないままに葉隠にペースを握られたまま、手を引かれて歩いていく。今度ミッドナイトやMt.レディに相談でもしようと思いながら彼女の後に続いていく―――
―――これはこれは、まさかこんな所にあのライダーの力があるなんてね。
「っ?」
「如何したの?」
不意にに何かを囁かれたような気がしたので振り向いてみるがそこには休日さながらの混雑した店内風景しか映らない。それは当然の筈の自明の理、だが奇妙過ぎる違和感があった。何も分からずに首を傾げているとショッピングモールの一角が騒がしくなっていた。目を向けてみるとそこには凶悪そうなヴィランが巨大な得物を構えて子供に殺意丸出しの瞳を向けていた。
「葉隠さん俺行って来る!!」
「えっああうん!!気を付けてね!!」
直ぐに龍牙の意図を理解した葉隠は周囲の人たちに避難を呼びかけた、龍牙は駆け出した。そのヴィランが子供に向けて得物を振り下ろそうとするのだがその間に割って入りながら部分出現で腕のみに個性を発動させてそれを防御する。
「何だテメェ……俺はいまむしゃくしゃしてんだ、誰でも良いからぶっ殺してやりたいんだよぉ!!」
「なら俺が相手になってやる……おらぁっ!!!」
巨大な剣を弾き飛ばしながらそのヴィランを殴りつけてノックバックさせる、そして後ろにいる子供たちにサムズアップをしながらビルドドライバーを腰へと押し当てながら懐から飛び出してきたドラゴンにボトルを装填しながら笑いながら言う。
「もう心配いらないさ、俺が此処にいる」
「テメェ……何者だゴラァ……俺を苛立たせやがって!!!」
「通りすがりのヒーローだ、覚えておけ」
黒炎のサークルが龍牙を囲んでいく、そして同時にドラグブラッカーが出現して高らかに咆哮を上げる。これ以上子供に手出しはさせないという龍牙に呼応するかのように、折角こんな場にいるのだから自分なりに全力でそれに応えてみるとしよう。それに黒龍は酔狂だなと言いたげな表情をしていたが龍牙は無視して、叫ぶ。
「―――変身!!!」
姿を現した黒龍の英雄にショッピングモールは驚きと衝撃に包まれた、それはヴィランも同じ。彼とてTVやネットなどに流れている物でそれを確認していた。あの脳無を撃破したセミヒーローである筈の未熟なヒーロー、雄英所属の黒龍が何故ここにいるのかと。だが黒龍はヴィランを見据えたまま、構える。
「―――行くぞ!!」
その後、龍牙は迅速にヴィランを確保し警察に引き渡したが、子供らや買い物客に殺到されてしまいその日のデートはそこで終わってしまったという。
自信満々に攻める葉隠さんカワイイヤッター!!!
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