僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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救助活動の苦労を知る黒龍

「ねえねえ、あれが噂のドラゴンライダー君でしょ?」

「カッコいいわよね~……あれでまだ雄英の一年生なんでしょ」

「ホント将来超有望株、しかもあのギャングオルカのお弟子さん」

「やっば将来安泰みたいなもんじゃん」

 

プッシーキャッツ事務所でインターンに励んでいる龍牙、そんな彼には事務所内の事務員たちからも様々な視線が向けられている。矢張り龍牙のネームバリューを気にする者やその強さを純粋に感心する者、狙いを掛ける者と様々。肝心の龍牙はそれらに一切気を掛けずにやるべきことをこなし続けている。頭の上で欠伸を掻くドラゴンの声は事務所内に珍し気に響くが当人らは気にも留めずに普段通りに過ごす。

 

「流石はギャングオルカの弟子ね……見てよこの書類も完璧よ」

「うわっしかも文字も凄い綺麗……これであの速度で仕上げてるってどんだけハイスペックなのよ」

「ねえっアタックしちゃ駄目?」

「アンタピクシーさんに殺されたいなら止めないわよ」

 

ピクシーボブが龍牙に恋をしているのは事務所内では周知の事実、事務所内の皆は気心知れた家族のような仲間たち。それを外部に漏らすなんて真似は絶対にしない。するにしてもからかいに使う程度。真剣に恋をしている上にギャングオルカの承認が記録されたボイスレコーダーも聞いている。

 

「ヒェッ……!!?」

「バッカほら言わんこっちゃない……」

「おいそこさっさと仕事しろ、というかお前らもピクシー姉さんの事言える程に相手居ないだろ」

『勝ち組めぇ……!!!』

「(賑やかだなぁ……)」

 

指に結婚指輪を輝かせている人物の一声で皆は仕事に戻っていきながらも結婚して幸せな家庭を築いている事に対して嫉妬を浮かべている様子を聞きながら素直に龍牙はそう思った。リューキュウ事務所にいた事も賑やかだったが、それはあくまで個人個人が賑やかだったに過ぎない。此処は事務所全体はアットホーム、全体的に家族のような関係を築いているので本音で語り合える。

 

「うぅ~ん……いやぁこんなにも事務作業が進む日も珍しいわね、これもリュウガのお陰かしら」

「純粋にピクシーさんが出来過ぎるからでしょう、俺は補佐しかしてません」

「その補佐のお陰で私の仕事が凄いスムーズに片付いちゃってるんだけどね」

 

基本的に山間部の救助活動では毎回のように出動するピクシーボブとしては事務所にて待機し続けて事務作業をし続ける事はそこまでない、基本的にチームで出動するがそれでも救助において土を操れる彼女の負担は大きく彼女が残って地滑りなどで崩れた斜面を整えたりする事が多いので自分の分は他の三人が代わってくれることが多い。こうして待機をしながら事務作業をするのは何方かといえば珍しい部類に入る。

 

「このまま出動要請が無い事が一番ね、ヒーローにとっては出番よりも何も起こらない平穏こそ望む物だし」

「確かにそうですね」

 

龍牙もそれは承知している、何も起こらない平穏こそがヒーローが目指すべきもの。と言ってもそれを望むのは難しいし自然災害を相手にする事を主にしているプッシーキャッツ事務所にその平穏が訪れる事はほぼ確実にあり得ないのであるが、望みたくはなる。

 

「さてとこれでやるべきだった書類仕事は全部終わっちゃった~!!いやぁ溜めちゃってた支払いとかマニュアルチェックとか運営云々かんぬん系も全部終わった!!本当に有難うねリュウガ、これも先生とお師匠さんの仕込みかしら?」

「どっちも、ですかね」

 

少しだけおどけて応える彼に微笑みを返すピクシー、表情こそ平静を装っているが龍牙の小さな笑みに胸が強く高鳴っているのを必死に隠す。

 

「さてとそれじゃあ休憩しましょうか、折角だから良いお茶でも淹れてあげるわよ龍牙君」

「―――分かりました、それじゃあ御馳走になりますね」

 

君付で呼ばれた事で完全に休憩に入ったのを理解するとそれに合わせるように声色を柔らかいものにしつつ彼女の後に続いていく。本来なら近くにあるコーヒーメーカーを使って淹れても良いのだが此処では事務員たちに茶々を入れられて良い感じに話す事は難しいだろう、折角なので応接室でお茶を入れて休憩をする事にした。

 

「さて如何かしら龍牙君、うちでの仕事は」

「思ってた以上に勉強になる事ばっかりで……ちょっと圧倒され気味ですね」

 

ギャングオルカの指導は戦い抜き為の強さを教え込む者が大半だった、職場体験でもそれは感じていた。ヒーローが必ずぶち当たるあと少し努力すれば……というラインに突き詰めるかのように厳しい体験、それは厳しい社会を生き抜く為の経験でもあった。

 

「救助って皆簡単に言うけど実際はヴィランと戦う以上に大変なのよねぇ……現場の地形や環境、空気の流れに天候、要救助者の状況とかそれらを把握した上で適切かつ迅速に行動しないといけない。そこにヴィランまでいる時があったらもう修羅場よ修羅場」

 

ピクシーボブから思わず零してしまうのは救助活動における苦労だった、世間的にはオールマイトがヴィランを倒したなどをより大きく報道するが救助の場面はそれ以上に凄まじい修羅場なのである。大半が自然災害、ヴィランなんて目じゃない程の強敵と戦わなければいけない。

 

「一番最悪なのはヴィランが馬鹿やって災害起きる時なのよ、前に超振動を起こすヴィランがいたんだけどそいつがとんでもない土砂崩れを起こしやがったのよ!!」

「あっそれ見ましたよ俺、確かアースクエイクってヴィランですよね」

「そうそいつ!!あいつのせいでもうあの時はもうやばかったわよ……土砂崩れだけじゃなくて山火事まで同時発生して……怪我人だけで済んだがマジで奇跡みたいな現場だったわよ……」

 

若干ゲッソリとした表情を作っているピクシーボブ、ある意味プッシーキャッツが今一番望んでいるのは戦闘で活躍出来る者、贅沢を言えば救助でも力を発揮出来る者が非常に好ましい。ヴィランが原因で自然災害が連鎖して起きるという事も非常に多いのである。あれらは周囲の被害も構わずに暴れる、雪山で爆音で叫びまくって雪崩を誘発するか如く。そんなヴィランを即座に鎮圧出来るような実力派を迎えたいとチームで切に願っている。

 

「龍牙君、マジで卒業後本当にウチに来ないかしら。マジで歓迎するんだけど……」

 

と此処で僅かに頬を染めながら上目遣いの涙目で龍牙を見つめる、自分の武器の使い方を酷く理解している女性のやり方である。先程の凛々しさから一転して何処か弱弱しく守ってあげたくなるような庇護欲が刺激される姿に龍牙は動揺しつつも咳払いをしつつ、進路に組み込んでいいのならといいながら彼女の後ろも回る。

 

「あ、後ピクシーさんさっきの作業の時も時々肩を気にしてましたけど凝ってるじゃないんですか?」

「分かる?最近疲れが溜まっててね……こう見えて私って着痩せするタイプで胸もあるから凝っちゃうのよね……?」

 

と肩を回す、無意識だったがその時胸元が見えそうになって少しばかりドキドキしてしまう龍牙。邪念を振り払ってそれを出さずに笑みを作っておく。女性に失礼に当たる事は顔や言葉に出してはいけないと言われている。

 

「それならマッサージしましょうか、これでもミッドナイト先生やMt.レディさん相手にやってたんですよ」

「本当に!?それならお願いしちゃおうかしら」




「あん、そこいぃぃぃ……んんっっっ……ひゃぅいいっ……♡」
「相当凝ってますよ……整体とか行った方が良いですよ」
「そうね、考えてみるわ……(ウッヒャアアアア!!龍牙君に身体揉んで貰えるとか此処は天国かぁぁぁ!!!!どうよ葉隠ちゃん貴方だって此処までの事された事ないでしょう!!そして私のセクシーボイスで龍牙君を誘惑♡)」
「(凄い喜んでくれてるな……というか声が凄いな……なんか睡さん(ミッドナイト)みたいな声がでまっくてるし……)」


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