僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「砂藤そっちにあるだしを取ってくれ」
「照り焼きに入れるのか?」
「ああ、隠し味になる」
「勉強になるなぁというか龍牙って料理も凄いんだな」
「ずっとやって来たからな」
12月下旬、その日龍牙は寮のキッチンに立っていた。今日はA組全体で楽しむパーティを催す事になっている、そのパーティで使う料理を追加で拵えている。何せ年頃の高校生21人のパーティだ、幾ら作っても足りない。本来は一人で立つつもりだったのだがお菓子作りだけではなく料理も出来る男砂藤が助っ人として手伝ってくれる事になった。砂藤は元々キッチンに立つ予定だったがまさかここまで龍牙が料理が出来るなんて予想外だったのか驚いてしまっている。
「いやマジで凄いな、プロ並みじゃないか?」
「それはない、俺は下の下だ」
「いやそれはない」
と否定する両名、一方は自分程度がプロ並みなんてもったいないと零す中で一方はその遠慮はないと否定する。砂藤の目の前では此方を向いて喋りながら全く手元を見ずに微塵切りをし続け、切り終わったものは他へと移しながら次の物を刻んでいる龍牙の姿がある。あれで全然と言われても説得力がない。
「なんでそこまで出来るんだ?」
「家だと一人で居る事も多かった、父さんたちも帰りも遅かった。そういう時にTVで言ってたんだよ、温かい手料理で日頃の感謝を伝えようって奴が」
些細な始まりだった。根津に引き取られて暫くした事の事、根津から遅くなると言われ出前で先に食べていていいと言われたが一人で食べてもなと思いながら何となくTVを付けた時にやっていたのが料理を教える番組だった。それが言っていたのが仕事で頑張る家族を手料理で迎えましょう、それが切っ掛けだった。レシピなどを検索、印刷してドキドキしながら包丁を握ってチャレンジした。そして出来た料理を見て根津は驚き、一緒に食べた時の美味しさとお礼を言われた時の嬉しさは凄まじかった。それが料理をし続けた理由。
「気付いたらこんな事も出来るようになってただけだ、継続は力なりって奴だよ」
「いやでもやっぱりすげえよ龍牙、俺そんな風にやる人TV以外で初めて見たわ」
「先生が良かったから、一時期にランチラッシュに教えて貰ってた」
「納得だ」
雄英の学食などで腕を振るっているランチラッシュの下で料理を教わっていたのならば納得の腕前に砂藤も負けじと料理に励みつつ得意のお菓子作りの腕をフルに生かしたケーキ作りにも着手する。料理の腕では負けていてもお菓子作りの腕では自分の方が上だという自負はある。
「よし出来た、鶏は全部上がった。そっちは如何だ」
「おうこっちも出来たぜ!!」
「それじゃあ運ぼう、皆待ち草臥れている筈だ」
それらをワゴンへと載せてキッチンから広間へと足を進めていく、そこではすでにA組の皆がパーティの準備を済ませ今か今かと待ちわびるかのように一時を楽しんでいる。皆が今回のパーティに沿うように衣装を着こなしながら談笑を楽しんでいる、そう本日は12月下旬―――即ちクリスマスなのである。
「何時までインターンについて話してんだよ!!?清し夜だぞ今日は、何時までも学業に現を抜かしてんじゃねえよ!!」
「学業に現を抜かすって使うのか?」
「さぁっ……まあ峰田の言いたい事は分からなくもないな、お~い料理が全部上がったぞぉ~!!パーティを始めようぜ!!」
「メリ~クリスマス~!!」
遂に出揃った料理、これで漸く始められるクリスマスパーティ。今日だけは自分達を雁字搦めにしている事など完全に忘れた宴に興じる事にする、その中には壊理ちゃんも確りいる。彼女も此処でパーティに参加する、何やら間違えているのかハロウィンやイースターやらの奴を口ずさんだり準備をしたりしているが、そんな勘違いも何処か可愛らしい。
「あっドラゴンのお兄さん見て見て、サンタさんがこれをくれたんです!!」
『~♪』
そう言いながら壊理ちゃんが見せてきたのは女の子らしくピンクや明るめの赤でペイントされたドラゴン、龍牙の相棒になっているドラゴンの壊理ちゃん仕様にカスタマイズした一品。そんな一品を作れる人物なんて一人しかない。戦兎も粋な事をするものだと微笑みながらも懐から自分のドラゴンが飛び出して不審そうな瞳を向ける。
「良かったな壊理ちゃん、これでお揃いだね」
「お揃いっ♪」
「「イエイ♪」」
タッチをする傍らで壊理ちゃんドラゴンは龍牙のドラゴンに興味を示しているのか近づいて行くのだが、怪訝な声を上げながら近寄るなと言いたげな威嚇をするのだがそんな物なんその、どんどん接近してくるそれにどう反応するべきか困っているのかドラゴンは懐に戻ってしまった。
「あっ戻っちゃった」
「グイグイ来られるのが苦手なのかもな……まあいいや、壊理ちゃん俺が作った料理も沢山あるから楽しんで言ってくれ」
「はい!」
そう言いながら自分のドラゴンを頭の上に乗せながらトトト……と駆けだしていく姿に愛らしさを覚える。自分の真似をして頭の上にドラゴンを乗せているのだろうか、それは不明だが愛らしい事には変わりはない。
「龍牙君これ凄い美味しいよ~!!」
「おい龍牙お代わりねえか!?」
「おいバカエロアホコンビお前ら二人占めするんじゃねえよ!?」
「「うるせえぇえ龍牙への仕返しじゃああ!!!」」
「どんな仕返しのやり方だよ!?」
パーティと呼ぶには些か騒がしすぎて品性に欠けるような光景もある、こんなことで本当に良いのだろうかと思うような所もあるが龍牙はそれを肯定してキッチンへと戻ると残していた料理を持って戻りながら上鳴と峰田が強引に占領してしまっている料理を渡していく。
「いやぁにしてもこの照り焼きチキン最高だな!!やっぱトリはクリスマスには必須だよな!!」
「そんな事言ってももう追加しないぞ、それで全部なんだから。上鳴と峰田は好い加減にしとけ」
「何だよ良いじゃねえか本当に美味いんだからさ!!」
「そうだそうだ!!」
本当に楽しいと龍牙は思いながら、もっと食べたいぞ~!と騒ぎながら耳郎の歌に合いの手を入れているメンバーに肩を竦めながらしょうがないと零しながらキッチンへと向かって追加分を作る事にした。あそこで騒ぐよりも自分は誰かが騒げるような環境を仕上げる方が好きだと思っている。包丁を握ろうとすると隣に誰かが経った、そこには笑顔で自分を見つめてくる葉隠の姿があった。
「えへへ、来ちゃった♪」
「楽しまなくていいのかい、葉隠さん」
「龍牙君と一緒に楽しみたいから、私も手伝うよ」
「有難う、素直に嬉しいよ」
そうしながら二人は並び立ちながら調理を進めていく事にする、一人でやっても二人でやっても作業時間としてはあまり変わらないが二人にとっては共に過ごす時間そのものが目的な所があるのでどうでも良かった。共に何かをするというだけで胸の中が温かくなるのだから。
「(龍牙君と二人っきりでキッチンに立つ、まるで新婚さんみたい……キャ~んもう私ったら♪)」
「葉隠さん、そこの瓶とってくれない?」
「はい貴方っ♪」
「えっ?」
「あ"っ……」
妄想に浸ってしまった葉隠、その流れのまま思わずそんな言葉が出てしまった。硬直してしまった葉隠と目を白黒させながらも調味料の瓶を受け取るが直ぐに微笑みを作りながら言う。
「良いもんだねそう呼ばれるのも偶には」
「あ、あ、あ、ああああ―――……そ、そうかもね……」
直後、葉隠は龍牙に手を握られる。いきなりの事に変な声が出てしまうがそこにあった龍牙の笑みにそれは掻き消えて自然と彼女も笑みを作った。そんな二人はそのまま楽しそうに幸せそうに調理をし続ける、そして二人は幸せを御裾分けするようにパーティに戻っていき―――大いに楽しむのであった。