僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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年末の黒龍

クリスマスも過ぎて間もなく大晦日を迎えようとしている中、龍牙の日常は変化しない。決められた訓練をし続けながら毎日を過ごしていく、雄英にも冬休みは存在しているが寮制になっている為に雄英の施設は何の躊躇もなく使う事が出来る。自らの鍛錬に余念がない龍牙にA組の皆は慣れたような瞳を向けるのだが、見慣れない者は驚いた瞳を向けざるを得なかった。

 

「お、おい切島ァ黒鏡の奴あれはやり過ぎだろ!?」

「そうか?あれでも普段より数割軽くしてるらしいぞ」

「あれでか!?」

 

龍牙が行っているはヴィランが全方向を包囲した、救援は絶望的、自らでそれらを突破しなければならないという状況設定の下でサポート科の発目 明が制作したロボヴィラン相手に訓練を行っている。彼女は緑谷の紹介で知り合った。そんな彼女としては実戦のデータも取れる上に龍牙の個性にも触れられてインスピレーションを刺激される、良い事尽くめでしかなかった。

 

「ご存分にやっちゃってください!!このベイビーたちは単独で行動するヒーローを支援する為、極限環境下における調査や救助目的に開発した物のプロトタイプとかなんです!!それらを活用して得られるデータは非常に尊いのです!!」

 

との事で極論として融解させても木っ端微塵に破壊されても構わないとの事。という事なので思う存分に訓練で酷使させて貰う事にした。

 

全方位を囲まれている状況下、ほぼ同時に襲いかかってくる攻撃を龍牙は唯々耐え続けている。超重量の鋼鉄の拳が炸裂しようが砲撃が飛んで来ようともにそれらを防御し続けている。ある種狂気じみた訓練は唯々身体を虐め続けているようにしか見えない。そして巨大なロボヴィランが龍牙を押し潰すような拳を叩き落とした、それに対してドラゴン・ストライクを放って防御するが流石に重量の差が凄まじかったのか押し潰さ掛けるが―――

 

「此処だぁぁっっ!!!」

 

全身から黒炎を溢れ出させながら全方位へと向けて自らが受け続けた事で蓄積し続けた全衝撃を爆発させるかのような勢いで放出させる。黒炎も四散し周囲に展開していたロボを吹き飛ばしていく、自らの攻撃が弱まるとドラグブラッカーに掴まってその中心地から脱出しながらその手に戦兎お手製の武器を手にする。エレメントドラゴナックル、戦兎が龍牙が使う事を前提にして開発した新しい武装。それを握りながら黒龍から飛び降りてロボの一帯に狙いを定めながらナックルへボトルを装填する、中へと入れるのはドラゴンマグマボトル。

 

BOTLLE BURN!!

 

重々しい音を響かせながら拳をナックルへと打ち鳴らす、それによってそれは起動する。自らの力を分析しそれらに複数を混ぜてマグマの力へと変化させたボトルは超高温と超高圧の両側面を併せ持つ拳となる、滞空している自らへと拳を飛ばしてくるロボら、それらを身を捩らせて掠らせる程度に収めながらそれを蹴って勢いを付けながら獲物に喰らい付かんとするサメのように機械の喉元へと拳を差し向ける。

 

VOLKENIC KNUCKLE!!

 

赤とオレンジに輝いていくその拳、龍牙の炎とは縁がないような輝きに満ちながら拳はロボへと突き立たれた。単純な拳ならば受け止められただろうがその拳は超高温のマグマの拳、その気になれば鉄をも溶かす龍牙の黒炎を発展させて生まれた龍の溶岩、その拳はあっさりとロボの装甲を融かしながら貫通する。内部の回路ごと融かし尽くし、それを引き抜く龍牙……だが

 

「アチャアアアアアアアアア!!??」

 

と大声を出しながら大慌てで拳を振るって何とか熱を払おうと試みている。黒炎は通常の炎よりも遥かに高温、鉄をも溶かす事を可能とするそれを鎧にしている龍牙。だが戦兎が仕上げたそれは龍牙ですら余りの熱量に悲鳴を上げてしまうほどの超高温を発してしまう模様。

 

「何だよこれ戦兎さん気合入れすぎ……!?マジでアッチィ!?ああもう、このままブッ放したれ!!」

 

VOLKENIC ATTACK!!

 

と龍牙は右手の龍頭から黒炎を放出しながらナックルからマグマのような超高温のエネルギーが溢れ出していき、それは黒炎を伝うようにしながらロボへと向かって伸びていく。エネルギーの奔流となってロボを飲み込みながら爆発と炎上が繰り返し起こっていく中でその中から残骸を掻き分けるように飛び出してくる複数の影を見る。それは発目自慢の極限環境下活動前提機のプロトタイプ、超高温にも平気で耐えながら向かってくるそれを見ながらある事を思い付き、熱さに悪態をつきながらボトルを引き抜いてもう一本のそれを差し込む。

 

GLACIAL KNUCKLE!!

 

「これなら如何だぁっ!!」

 

超高温に燃え滾っている環境下に置かれていても平然としているそれら、ならば今その状況下で超低温に晒されたらどうなるのかと龍牙は思い付き、それを実行した。炎とは真逆、あらゆる物を凍てつかせる絶対零度の冷気が地面を伝っていく。突き刺すかのように殴り付けたナックルから溢れ出る冷気、それは一瞬のうちに先程まで燃え盛っていたそれらを凍結させていく。燃え盛る炎も、煮え滾るようなマグマも凍て付かせる。その変化に付いていけるだろうか、極限環境下を想定していたとしてもそれは難しい。

 

「―――すげぇっ……」

 

誰かがそう呟いた、ナックルの凄まじさもあるだろうがそれらの根幹は全て龍牙の力その物。その中央部にいる龍牙は静かに立ち尽くしながらナックルの力に満足しているのか小さな息を吐いた……

 

「―――さ、寒い……」

 

のではなく此方も冷気が凄まじすぎるのが龍牙にまで冷気が一部伝わってしまって龍牙まで凍ってしまっている。幸いなのが黒炎で体温はある程度維持される点だろうか、この後龍牙はこれらを戦兎へと報告してナックルを調整して貰うのであった。そして―――

 

「ねえ龍牙君、大晦日って如何するの?」

「えっいや寮にいるよ、父さんも根津校長も忙しいだろうしさ」

「そ、それならさ―――あ、あの私の家で一緒に年越ししない!?」

 

清純な乙女からの勇気を振り絞った大きな一歩を受ける事になった。




尚、発目さんは得られたデータに超興奮した模様。

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