僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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清純の親に問われる黒龍

「あ、あの……何かあったので?」

「「お気になさらず……」」

「あらあら」

 

葉隠家の中へと案内された龍牙を待ち受けていたのは何かを片付けながらも妙に瞳を細めている男前な葉隠の父親、大欺と同じようにしている葉隠の姿。一体何があったのだろうかと思う中で折に引かれるようにリビングの中央へと誘導されて腰を下ろす事になった龍牙は初めて訪れる級友の家というシチュエーションに緊張してしまう、そんな中漸く瞳を開けるようになった大欺が前に、折が大欺の隣へ、葉隠が龍牙の隣へと腰を下ろした。

 

「さて本日はよくぞ来てくれた黒鏡君、何時もウチの透がお世話になっております」

「いえ此方こそ、葉隠さんには何時もお世話になりっぱなしです」

 

自分の弱さを素直に吐露できるのは根津やギャングオルカを除けば酷く限られてくる、葉隠はそんな自分の素を出せる数少ない相手でもある。そんな彼女にはお世話になり続けているのは事実。

 

「いやいやまさかこの子の素顔をこうして見れるなんて本当に思いもしなかったからなぁ……思ってた以上に母さん似の美女でビビったのよ」

「本当よねぇ……お父さん似じゃなくて良かったわぁ♪」

「ちょっとそれ酷くありません……?」

 

今は家の中だからか完全に個性を解除して素顔を露わにしている彼女と母親を比べてみると確かに母親似であると思う。髪を伸ばして大人っぽくさせつつおっとりさせればその通りになるように思う、だがそれに関しては自分のお陰というよりも自分のせいでそうなったというのが正しいので何とも言えないのが素直な本音である。

 

「いやね、俺と母さんの個性で透明になったのよ透は。折角女の子だったのに母さんは一緒に服を選んだり出来なくてちょっと寂しそうだったんだけどお陰で本当に嬉しそうにして笑顔が増えたんだよ」

「本当一緒にお洋服とか選べると本当に楽しいのよねぇ……♪」

 

葉隠 大欺、個性:擬態。周囲の景色を身体に映し出す事が出来る!

 

葉隠 折、個性:屈折。様々な物を屈折させる事が出来る、収納面で大活躍だ!!

 

 

擬態と屈折、それらの個性が混合した事で生まれたのが透明化の個性。正しく天然の光学迷彩のような組み合わせ、モンハンのオオナズチのようだなと思わず龍牙は思う。

 

「それにしても透が友達を是非ともウチに招待したいと言った時は嬉しかったけどまさか相手があのドラゴンライダー君なんて驚きでお父さん腰が抜けて椅子からこけた上にコーヒーを被ったんだよ」

「まぬけ過ぎないお父さん」

「透ちゃんなんかさっきからお父さんに当たり強くない?」

 

しかしそれが父と母の本音である事に変わりはなかった。一般的に周知されている龍牙の印象はギャングオルカの弟子であり彼公認の次代のヒーローを担う存在というのがあった。そんな龍牙と同じ雄英に通っている事自体は分かっていたがまさかTVで話題になっている彼を連れてくるのは完全に想定外だった模様。

 

「黒鏡君から見たら透って如何かな、ヒーローになれると思うかい」

「ちょっとお父さん龍牙君に何を……」

「透、これは確り聞いておきたいの」

 

と何を聞き出そうとしているのかと不安そうな表情をする中、折は彼女を止めた。母親としてこれは絶対に聞いておきたいという雰囲気を纏いながら大欺と共に龍牙にそれを問った。それに龍牙はどうこたえるべきかと少しだけ考える、それに対して一人の娘を持つ親として父親が語りだす。

 

「ハッキリ言って透の個性はヒーロー向きとは言えない、何かをするにも出来ない個性だと思ってる。言うなれば巻き込まれない事に関しては優れた個性だとずっと思ってた。そんな娘が雄英を受験して合格した時は驚いた、透にもヒーローの資格があるのかとね」

 

言いたい事は理解出来る。事実として透明化の個性は身体能力に何も寄与しない、本人の隠密性などの飛躍的に向上させるがあくまでそれだけでしかない。そこから先は完全に当人の実力が問われる個性、それを生かすも殺すも当人次第というのが色濃く出ていると両親は思っている。

 

入試ではロボの仮想ヴィラン相手という形式だった、多少なりとも護身術の心得がある程度の透では受からないと思っていた。だが合格した、それは透が他を助けて得るレスキューポイントを多く獲得していたからだった。数ポイントは偶然仮想ヴィラン撃破で得られたものもあったが大半が誰かを救って得たポイント。逆に言えばそれぐらいしか出来ないという証明にも繋がっていた。

 

「雄英に入れた事自体は本当に光栄に思っている、だけど同時に不安でしょうがなかった。本当に大丈夫なのか、無理をしないか、大怪我をしないかってね」

「言い方はあれかもしれないけど透は普通の女の子と同じだからその……不安だったの」

 

普通ならばそんな考えを持つだろう、ヒーローは誰かを救う為に危険へと飛び込んでいく存在。それに娘が成ろうとするならば親としては様々な心配や不安が付き纏って行くのは当然。そこへ飛び込んでくる雄英襲撃や林間合宿、それらによって不安は加速度的に増して行った。娘を此処まで雄英に進ませていいのかと、寮制の導入時には本当に迷い、娘の強い意向もあって許してしまったがそれでも不安は残り続けていた。だからこそ聞きたい、龍牙に本当の事を。

 

「正直に答えて欲しい、透は―――ヒーローになれると思うかい、君は」

 

重々しい言葉に付き纏うのは親としての感情全て、それを感じながら龍牙はこれから放つ言葉に大きな責任がある事を感じつつも素直に語る事を誓う、それがきっとご両親も望んでいる事だから迷う事無くそう答える。

 

「葉隠さんは透明である事を活かして自分にしか出来ない事を既に見つけています、自分にしか出来ないヒーローのやり方を確立させています。それに―――俺にとっては彼女はヒーローです」

「……そうか、透はもうヒーロー、か……」

「ちょっと過保護すぎたかもしれないわね」

 

その言葉を受けて二人は柔らかな表情を作りながら、少し安心したような表情を作りながら龍牙へと頭を下げた。

 

「「これからも透と仲良くしてあげてください」」

「寧ろこちらからお願いしたいぐらいです」


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