僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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思いを募らせ始める黒龍

葉隠家に迎え入れられた龍牙、ほんの僅かな時間であったがそれは非常に楽しく暖かな時間だった。僅か一晩のみという時間だけだったがその時間は大きく龍牙の胸に残った。特に娘を可愛がっている大欺と折の姿は酷く鮮明且つ美しい光景として脳裏に焼き付いた。あれが暖かな家族の団欒という物なのかと深く胸に刻まれた。父が居て、母が居て、子供がいる家庭の姿が龍牙には酷く眩しかった。

 

彼にとって父はいる、姉もいる、兄もいる、妹もいる、だが母親が居ない。それが彼にはなくて目の前のそれにはある物だった。だからこそが酷く眩しく映り続けていた。そんな時に不意に父の言葉が脳裏を過った。

 

 

―――龍牙にも彼女とかできちゃったりするのかな。

 

 

そんな言葉が過った、何故それを思ったのか分からない。顔が熱くなるのを感じながらも顔を隠しながらも思う、自分にとって葉隠 透と土川 流子、この二人は大切且つ全く別の存在、親友という常闇とも違う存在だと捉えている。共に居れると嬉しく心が躍るようになっている。それが恋なのかも理解出来ない、仮にそうだと仮定するとして―――自分に築けるのだろうか、崩壊を導いた張本人でもある自分が。

 

「ホラッ龍牙君も飲みなさいって君がくれたシャンパンなんだかぁ!」

「まってお父さんそれマジのシャンパンだよ!?ノンじゃなくてインアルコール!!」

「龍牙君のお土産はこっちよ~」

 

そんな考えなんて吹き飛ばすかのように、自分も既に家族一員だと言いたげに肩に手を回して酒を進めてくる大欺と慌てながら正しいものを渡そうと慌てる透に折。それを受け取りながらも一瞬でもネガティブな考えてしまった自分がばかばかしく思えながらも思い切って渡されたシャンパンを飲み干した。

 

「ああっ!?龍牙君それまずいってマジのシャンパン!!」

 

正直言ってあまりおいしいものではなかった、如何して大人はこんなものを呑めるのかとすら思えるほどの酷い味。だがそれが妙に今の舌には合っているように思えた。そう思うと龍牙は改めて姿勢を正した。

 

「本当に楽しいですね、こうして過ごすのって……忘れてましたよ、家族ってそういう物ですものね」

「そうだよ家族は楽しく過ごして当たり前だからね、さあもっともっと!!」

「だからそれはダメだってばぁ!?」

 

改めて龍牙はその日、葉隠家で過ごさせて貰った事を心に止めながらその日を精いっぱいに楽しみながら新年を迎える事になった。

 

「龍牙君いつでもまた遊びにおいで~もう君は息子同然だ~」

「今度はもっと長くいられるといいわね~、その時はもう家族かしらぁ~」

「お、お母さん止めてよもう恥ずかしいよぉう!?」

 

顔を真っ赤にしながら両親を口留めしようとする葉隠だが、龍牙としてはまるで本当の息子のように接してくれた二人は感謝以外の言葉など見当たらなかった。その言葉に含まれているそれには気付いているのか、それよりも嬉しさが上回っているせいか、甘く追及はせずに笑顔で

 

「また来ます、透さんと一緒に」

「ピャッ!?りゅ、龍牙君に初めて名前で呼ばれたぁ!?」

「あらあら、まあまあ……」

「うむうむ将来安泰かな」

 

と龍牙的に此処で葉隠さんと呼ぶのもあれかなと思って名前で呼んだだけなのだがそれをご両親は脈ありだなと解釈したのか、近い将来にに義息子になるのではないかという想像が頭の中を駆け巡っていく。同時に透さんこと葉隠さんは葉隠さんで顔を真っ赤にしながら如何したら良いのかと迷ってしまっている。強く否定すべきなのかそれともある種親に公認されたと歓喜すればいいのか……分からないまま慌て続けていると龍牙は少しだけ笑って頭を下げた。

 

「それではお世話になりました、これで失礼しします」

「またおいでなさいや」

「電話をくれればご馳走用意してるからね~」

 

それは終わりにすると龍牙は護衛として近くまで来ていたミッドナイトの方へと歩き出していく、そんな龍牙の後姿を見つめながらも透は慌てながらも両親へと言葉を掛ける。

 

「あ、え、え~っと……それじゃあまたねお父さんお母さん!!またメールとか電話するから!!」

「気を付けてな~」

「頑張ってヒーローになるのよ~」

 

そんなやわらかな応援を送られる彼女はそれを背中に受けながらミッドナイトに急かされるように龍牙を追いかけて行く。そんな姿を見つめながらミッドナイトはニヤニヤしながら肘で弟を小突きながら問いかける。

 

「何よ何よ龍牙ってば、もうそんな段階にまで行ってたなんて……そういう事はお姉さんに相談しないとダメじゃないの!!」

「いやその……まだ、分からないけど……」

「龍牙君待ってよぉ~!!なんか、お父さん達誤解してるっぽいからそれ解いてからしないとまずいよぉ~!?」

 

背後から迫ってくる彼女に顔を合わせる事もなく、その言葉に小さく返答する。ミッドナイトしか聞こえない程に小さい声だったがそれを聞いて彼女はまあ♪と頬に手を当てて喜びの声を上げてしまう。顔を真っ赤にした龍牙はそのまま先に行ってしまうのだが護衛としてそれは拙いと葉隠を連れて急いで追いかける。

 

「ミ、ミッドナイト先生ちょっと待ってください!?お父さんとお母さんが何か凄い勘違いを……!?」

「良いじゃないそのまま勘違いさせておいても、貴方は困らないでしょ?」

「いや困りませんけど龍牙君困っちゃいますよ!?」

「いい女は男を適度に困らせるのよ」

 

 

―――解かれなくても、良いかもしれないし……。

 

 

龍牙も随分成長している事に気付いて涙ぐんでしまうミッドナイト、きっと彼の幸せも近いのだろう。そんな事を思いながら改めて二人の護衛に専念するのであった。




葉隠さんルート、決定的かも……。

ピクシーさんすいませんが……番外編行きかも……。


あと次回は再びインターン、つまり私が大好きリューキュウさんの出番です。やったぜ。

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