僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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黒龍の問題に悩むドラグーン

「はぁっ~……やっぱり龍牙君は凄いね」

「そうね、あんな大きな相手に躊躇なく突っ込めるなんて普通は出来ない物」

 

リューキュウ事務所にて麗日と蛙吹は休憩をしながら先程の現場の振り返りをしていた。ヴェノムが遭遇したヴィラン、サンドマンは自らを砂と同化させて操る個性。それを薬物によって強化して大量の砂と融合して巨大化して暴れまわっていた。それを一人で抑え込んでいたヴェノムの元へと赴いて援護を行った、結果的にはリュウガとリューキュウが片付けてしまったような物だったが彼女らも避難誘導や飛んでくる破片処理などで活躍はしていた。

 

「でもあんな方法を良く咄嗟に思いつくよね……いや実行するのも凄いけど」

 

麗日の言葉に思わず同意の頷きをする蛙吹。巨大化したサンドマンは更に砂を集め、巨大な拳で周囲を攻撃し始めたのだがそれを龍牙は一人で突っ込んで攪乱しながら全力の黒炎でサンドマンの身体を焼き始めた。龍牙のそれは鉄さえも溶解させるほどの超高温、そんな物で炙られると砂はどうなるだろうか。砂の中にある珪砂が熔解し始めていく、そこをエレメントドラゴナックルにブリザードボトルを装填して殴り付けた事でサンドマンの全身を固めてしまった。そこをリューキュウが身体の中心部から全身の砂を操作していた本体を抉りだすように掘り出し、ヴェノムの糸で雁字搦めにして確保に成功した。

 

「でも流石に龍牙ちゃんはリューキュウに怒られちゃってたわね」

「無茶しすぎッて怒られたもんね」

 

更に身体を巨大化させながら暴れ狂うサンドマンに迷う事も恐怖する事なく、自らに攻撃を向けさせながら黒炎をあぶり続けながら絶対零度の拳を叩きこむ為に懐に飛び込んでいくのは無茶をし過ぎだとリューキュウに咎められたのだが龍牙的には確実に行けると判断した上に自分でなければ出来ない上に早急に行うべきだと思ったからこそだった。事実であるが故にリューキュウも強くは言えなかったがこれはこれで更に龍牙の問題点が浮上した結果となってしまった。

 

「林間合宿前のテストの後でも思ったけど、龍牙君って相当自分に関しては鈍いって感じするね」

「そうね、多分お師匠さんの指導影響なんだと思うわ。自分の実力を完璧に把握してるからこそとも言えるのね」

 

徹底した自身の実力の把握と過剰な自信を折り続けた結果。悪い方向には向かないように思えるが自分がいける範囲ならば躊躇もせずに実行する、問題ない範囲ならば己を犠牲にする事も躊躇しない。良いのかもしれないが、悪い事でもある―――彼は周りからどれだけ心配されているのか理解出来ていない。

 

 

「参ったわね……如何すればいいのかしら」

 

報告書を仕上げながらもこれからどのように指導していけばそれを是正してあげられるのかに悩むリューキュウ。龍牙の行為は間違っていないし実力の把握に出来ない事をしないという事ではあるのだが、同時にそれは出来る事であるならばやる事でもある。自分ならば助けられるから火事現場に飛び込んで救助作業をする、だが無理な事はしないし出来ない事に手を伸ばす事もない。確かに良い事かもしれないが―――見ている側は辛いのを分かっていない。

 

「戻ったぞ」

「おかえりなさい、リュウガは?」

「下で報告書仕上げてる」

 

戻ってきたヴェノムはドカリとソファに腰掛けながら購入したと思われる業務用のチョコを貪り始めた。それを見ながら意見を求めてみる。

 

「ヴェノム、今回のリュウガの行動はどう思うかしら」

「如何ってどういう事だよ」

「……リュウガは多分これからもずっと同じような無茶をし続けるわ。出来る範囲での無茶を」

「そこだけ聞けば聞こえはいいが……成程、見る側としてはそれが辛いってか」

 

力押しが好きだが頭も回るヴェノムは悪い事ではないだろうと思ったのだがリューキュウの表情から何を思っているかを察して言葉を変えながら考える。今の段階でストップをかけてやらなければ何れリュウガは更に向こう側へと手を伸ばしていく、たった一人で何かを背負い続けていく。無茶を重ね続けるのではと不安を思っている。

 

「あいつならそんな事はしねぇだろ、ギャングオルカにそこら辺は徹底的に仕込まれてる」

「リュウガが立っている場所はかなりギリギリよ、何かの拍子に踏み外してしまっても可笑しくは無い。それは信頼じゃなくて放置、建前だけの信頼で無意識に抱えてる問題に目を背けてる」

「そんなもんかねぇ……」

 

それはそれで今まで培ってきた経験とそこで得られた物を否定する事に繋がるのではないかと思うのだが、一理あると何も言わない。その拍子は龍牙が今までの経験を無視してしまうほどのものかもしれない、その時に成功した場合―――それも大丈夫だと認識してしまう恐れがある。それだけは防いであげなければ破滅に直結しかねない。

 

「ンだったらよ、近くで見てやればいいだろ」

「……えっ」

 

ヴェノムの言葉にリューキュウは思わず素になりながら呆気に取られたような表情を作りながら聞き直した。

 

「いやだからよ、一々考えるのは面倒くさいだろ。それだったら傍で見てやってあいつに理解させてやればいいだろ、そうすればあいつだって傍に居る奴の為に無茶なんて自重すんじゃねえの?」

「―――成程、成程!流石ねヴェノム、今度高級チョコ奢ってあげるわ」

「業務用食えなくなるから業務用で頼むわ」

「キロ単位で奢ってあげるわよ」

 

ヴェノムの言葉に答えを見出したリューキュウは即座に行動を起こす事にした、その行動とは―――

 

「という訳で龍牙、私のオフに付き合って貰えるかしら?」

「えっ何がどうしてという訳なんですか」


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