僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「ほいレモンで良かった」
「……有難う御座います」
一大決心をして言葉を放とうとした葉隠であったが思いっきり噛んでしまった為に全然伝わなかったどころか、龍牙にポカンとした表情で見つめられてしまった。その事に凄まじい羞恥を感じてその場を逃げ出したくなって駆けだそうとして盛大にコケてしまった、怪我はしていなかった事に幸いだと述べた龍牙は近場にあった自販機からホットジュースを買ってそれを手渡しながら背中を木に預け隣で顔を伏せた上で顔を隠してしまった彼女を見てから再び満天の星空を見上げた。
「寒かったのはそっちだったっぽいね」
「うぅっ~……」
羞恥に染まったまま、表情を隠したまま掌に伝わってくるレモンジュースの温かみを感じつつもすさまじい気まずさを感じてしまっている。あんなに覚悟を固めていたのにいざ勇気を出そうとしたらあの様は何なのかと、もう本当に自分が嫌になってきてしまう。
「りゅ、龍牙君それで何で外にいたの!?」
何とか空気を変えたいのか大声を張り上げるように尋ねた、それに対して龍牙はブラックコーヒーを喉奥へと流し込みつつ答える。
「星を見たかった……いや何も考えずに外に出たからね、何となくかな」
「そ、そうなの?」
「ちょっと考え事してたら何時の間にか夜だったから、風呂入った後になんとなくね」
「何を、考えてたの?」
「ちょっとした事だよ、本当にね」
本当にその通りなのかとも心に淀みが生じた、リューキュウから突き付けられた言葉はずっと重く心にのしかかっている。あの時の言葉に対する返答や受け止め方を考えていたからこそ夜遅くになるまでベットの上で過ごしていたのではないかと自答する。そして思う、別の考え方を聞くのも悪い事ではないのではと。
「……いや、ね考えても浮かばない答えの質問って奴を貰ってね。その返答をずっと考えてたんだ」
「龍牙君でも分からない事ってあるんだ……凄い頭良いのに」
「戦兎兄さんに比べたら俺なんて凡才凡才」
嘗て、自分を救ってくれた言葉をくれた張本人である葉隠にその答えを求めているかのように気付けば龍牙は考えても出なかった答えを聞くかのように―――尋ねた。
「完璧で正しい行いをする事だけが良い事なのか、かぁ……なんかちょっと哲学っぽいね」
「あ~……分からなくもないかも」
リューキュウから言われた事を少しオブラートにして伝え、そこに自分が関係しているかは関係していないようにして伝えた。それに対してどんな返答が帰ってくるのかと少しだけ龍牙は身構えてしまった、そんな彼に対して葉隠は少しだけ考えてからジュースを口に運んでから言った。
「う~ん私は何とも言えないかなぁ。そこまで自己完結しちゃってる事が出来る人なんて現役張ってた頃のオールマイト位だと思うよ。それでもオールマイトでも時々失敗しちゃってたって事は聞いたし」
何もオールマイトも完全無欠な完璧超人だった訳ではない、彼にも出来ない事はあったし失敗もあった。それは現役時代にもあったがそれをオールマイトは即座にフォローして解決する事が大半だった。それこそがオールマイトたる要因とも言えるのだろう、同時に同意を浮かべつつも彼女も同じく分からないのかと八つ当たりのような溜息を浮かべようとする自分に嫌気を感じる中ででもね、と彼女は続けた。
「私は人って完璧である必要はないと思うよ」
「何で、そう思うの?」
「だって寂しいもん」
寂しい、それが葉隠の出した言葉であり答えだった。
「何でも自分で出来るって事は人と関りを持つ必要性がないって事だよね、完全に自分だけでこんな感じの丸をループさせるだけで良いんだから一人で良いって事になるんだよ」
そう言いながら両腕で丸を作って表現する彼女、完璧であったらそれには単なる孤独である。考えた事もないような答えに思わず考えさせられた。
「それに完璧だったらね」
笑みを作りながら〇を作っていた腕を崩しながら隣に立ちながら少し照れながらも少しだけ冷たくなっている龍牙の手を取って優しく握った。柔らかで暖かな感触を確かめるように少しだけ握る返すとはにかみながら頬を赤く染めながら見つめる。
「こうやって一緒に居ながら手を握り合うなんて事も出来ないんだよ」
「……フフフッそっかそりゃ確かにそうだね」
「それにお母さん言ってたよ、人は支え合ってこそなんだって。そういう風に出来てるだって」
彼女の理論で言えば確かにそうだと、理に適っていると微笑みを返す。不思議とその言葉が胸にストンと落ちた気がする。
―――誰かと一緒に居る時は一緒に戦って欲しい、貴方を支えて一緒に歩んでくれる人が必ずいるのよ。
こう言う事なのかもしれない。誰かと共に居て同じ時間を共有して手を繋いで過ごしていく、それがリューキュウの言いたい言葉の真意なのだろう。誰かと共に歩むべきだとリューキュウは示したかったのかもしれない、正しい事をするのは良いのだ、それを行いながらも誰かに支えられながらも自分も誰かを頼り支えていくべきだという事なのかもしれない。
「そっか……そういう事か、人って支えられてこそなのか……色んな人に助けて貰ってるのに気付けなかったんだな俺」
「龍牙君の場合は多分導いて貰ったって感じなんじゃない、ヒーローを目指す切っ掛けも誰かが既に前にいてその人が手を伸ばしてくれてるって感じしない?」
そう言われると確かにそんな気がする。根津然り、ギャングオルカ然り、戦兎然り、多くの人たちが既に先達として多くの経験を積んでいる人たちが多い。どちらかと言ったら導かれたと言った方が正しいのかもしれない。ある種の納得がいった時だった、手を握ってくる彼女の手がより強く握り込んできた。
「だから龍牙君、私が貴方を隣で支えちゃ、ダメ……かな」
「となり、で……?」
思わず、彼女を見た。満天の星空の下、星の輝きの下で彼女はそれ以上に輝いていたように龍牙には映っていた。高揚して赤くなっている頬、少し潤んだ瞳と震える唇、そんな彼女は空いている手を胸に抱きながら少し首を上げながら自分を真っ直ぐ見据えながら―――
「私は、貴方の事が、龍牙君の事がっ……好き、大好きなの―――龍牙君、ずっと傍に居させてください」
時が止まるような告白をした。