僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「あり、龍牙柚子なんて何に使うんだ?」
「肉団子に入れるんだ、果肉よりもビタミンが豊富だから細かく刻んで入れておくと身体に良いんだ。後そっちの生姜も取ってくれ、寒い日の鍋なんだから暖かくなれるようにたくさん入れておこう」
その日の夜、A組は総出でその日夕食の準備に取り掛かっていた。新学期のスタートになったからそれを祝いつつこれからの勢いを付ける為の盛大な鍋パーティの支度。料理が出来る龍牙が中心となって手早く食材などを刻みながら鍋の準備をしながら各自がテーブルの準備なども並行して行っていく。
「よし、下味も付けた。後はコネて形にするだけ。八百万興味あるならやってみるか」
「宜しいのですか!?どのようにすればよいのでしょうか、決まった所作など御座いますの!?」
「いや基本的にはない、掌を存分に使うようにして押しながら指で解しながら混ぜるようにすればいい。こねていけばいくほどに味は深くなっていくから存分にやってくれていい」
「お任せください龍牙さん、この八百万 百、初めてのつみれ作りですがパーフェクトに仕上げて見せますわ!何せ私はクリエティですので!!」
そう意気込みながらつみれ作りに励んでいる麗日や蛙吹らと共にボールへと手を入れて団子を作っていく―――「ひゃっ想像以上に冷たくてニチャニチャですわ!?」……どうやら完璧でエリートなお嬢様であった彼女には複数の具材が混ざっているひき肉の感触も初体験且つ興味深いらしい。驚きながらもそんな感触に目を輝かせながら楽しそうに混ぜ込んでいく姿を見て安心を得てから次の食材へと移る。
「良い鰤が師匠から頂けたからこいつをメインに据えた鍋も準備しておくか……」
「にしても龍牙、お前凄いエプロン姿が様になってんなぁ……」
「そうか?」
そうだよっと言う上鳴にその場の殆どの者は同意していた、顔の傷さえなければ完璧な専業主夫だろう。いやあったとしても怪我が原因で主夫になった元プロヒーローにしか見えないだろう。そんな龍牙はエプロンを完璧に着こなして下拵えのほぼ全権を握ってテキパキと自分の作業をしながらも分からない所を聞かればそちらに意識を向けて質問に答えながら包丁を変わらずに動かし続ける。手元を全く見ずに微塵切りや賽の目切りはお手の物。
「っつうか龍牙って並の女子よりも女子力あるんじゃねえか?」
「それは私も思うわ、だって龍牙ちゃんってお料理凄い上手だもの」
「ホントホント~この前のご飯も最高だったもんね~」
「ヒーローじゃなくても料理屋のシェフとしてやっていけると思うよウチ」
「大袈裟だな」
そう言いながら鍋の付け合わせの調理を手元を全く見ないで進めていく姿に説得力は皆無。
「龍牙、因みに得意料理は?」
「基本なんでも行ける、一番得意なのはハンバーグにシチューにオムレツ……かな」
「いやお前にあるのは女子力じゃねえよ、母性だ」
「それ絶対褒めてないよな、明らかに俺に対する嫌味的な何かだよな」
溜息混じりにフライパンに向き直りながらフランベを開始する龍牙、これでも本当に母性だと言えるのかと控えめな抗議なのだが余りにも余裕溢れる振る舞いが余計に母性認定を深めてしまった事に解せぬと本気で顔を歪める。そんな龍牙の隣に立った葉隠は苦笑いしながらドンマイとエールを送る。
「アハハッでも龍牙君本当に手馴れてるよね、私簡単な物しか出来ないから羨ましいぃ~」
「何事も積み重ねさ、最初は俺も卵一つ割るのも緊張して失敗してたからな」
「それでも凄いよ~……何時か二人っきりの時教えてね……♪」
「勿論だよ、よしこれで豆乳鍋とミルフィーユ鍋も準備OK。男子ご要望の肉中心のすき焼き風しゃぶしゃぶ鍋も出来たぞ」
『待ってましたぁ!!!』
漸く仕上がった鍋の数々、20人以上の胃袋を満足させる為に相当量の物が必要となってくる。加えてそれぞれの好みなどもあるのでそれらもしっかり考えた上で鍋の具材やベースなどを準備をした。勿論栄養バランスなども確り考慮している。そんなこんなで早速始まったインターン意見交換会兼紙業一発気合入魂鍋パだぜ!!会、肌に突き刺さるような寒さ日にしみこんでくる鍋の暖かさと美味さは正しく極上の物である。そんな暖かさを感じながら龍牙も箸を伸ばす。
「取ってあげるよ龍牙君、何が良いの?」
「豆腐と野菜中心でお願い」
「龍牙さん是非とも私が仕上げましたつみれの出来を見てくださいませ!」
「おっとそっか、それじゃあつみれも追加でお願いね葉隠さん」
「は~い」
透明な姿な彼女だが鍋から登っている湯気が僅かに彼女の輪郭を浮かび上がらせている、そこを凝視してなんとか彼女の姿を見出そうと必死になっている上鳴と峰田。が、そこに耳郎のイヤホンジャックが強襲し彼女の心音が爆音で頭の響き渡り、彼らの口からは悲鳴が溢れた。それに見ながら受け取って龍牙は早速八百万が目を輝かせて仕上げたつみれへと手を伸ばし、それをおろしポン酢で頂く。
「……うんいい味が出てる、出汁と旨味と油の甘さが良く絡んでる。それをポン酢が引き締める、うん……最後のコネ具合が甘いと味が出ないんだけど初めてでこれは上出来だよ」
「本当ですか!?嬉しいですわ、では私もいただきますわ!!」
「わ~いヤオモモ仕上げのつみれ美味しい~!」
「いえそこは龍牙さんお手製が正しいのでは……」
鍋のおいしさと温かさが身体と心を温めながらの賑やかな食卓、不意に龍牙は以前真冬の山で行われた訓練の後に食べたインスタントラーメンの事を思い出した。当時は黒炎も大して扱えずに疲労しきった身体に容赦なく寒さが襲い掛かり指先の感覚が完全になくなったようなひどい寒さだった事を覚えている。そんな訓練の終わりに身体を温める目的で食べたラーメンは極上の美味しさだった事を思い出した。
「……美味いな、やっぱり暖かいご飯ってのは最高だな」
「本当だね龍牙君」
過去の思い出に浸りながら暖かさに身体を沈めていると不意に隣に葉隠が座りこんで一瞬だけ透明化を解除して微笑んできたので笑いで応える。
「―――ねぇっ龍牙君、後でお部屋行ってもいい?ちょっとお話したいなぁって」
「良いよ、何時でもおいで」
ラーメン云々は私の実体験。真冬の山を楽しもうみたいなイベントに参加した時に雪の積もった山道を歩いて休憩でその場でインスタントラーメンを作って食べたんですがマジで旨かった。あれ以上のラーメンなんて今だに食べた事ないレベルで旨かったです。
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